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3 魔法


 死の恐怖なんてものは転生してからも感じないのだと、この瞬間になって気付いた。

 車に轢かれて死んだ時と同様、俺にとって死という物はどうでもいい事らしい。


 「御坊ちゃま逃げましょう。 相手は武器を持ってる。 手ぶらな俺達じゃどうしようも――」

 

 ゴブリンが現れてから微動だにしなくなった御坊ちゃまの肩を掴んで逃げようとした時、集団の中の一匹が放ったのが見えた。

 狙われたのは(まと)の大きい御坊ちゃまだ。

 奥にいたせいか弓を持つゴブリンは視野に入っていなかった為、反応が遅れた。

 このままでは御坊ちゃまの胸に矢が突き刺さる。

 そう思っていた。


 ガキィン~~~~・・・


 一瞬の高音と共に流れる静寂。

 何が起こったのかゴブリン達は理解できなず、襲い掛かろうとした武器を手に持つゴブリン達の足が止まった。


 「・・・ブヒ、ブヒヒ、ブヒヒヒヒヒッ!!」


 すると突然、先ほどまでピクリとも動かなかった御坊ちゃまが高らかに笑う。


 「よかった! やはりボクの予想が当たっていたようだぞ無能!!」

 「予想?」

 「そうだッ! このダンジョンの魔物は()()()()()()()という予想だッ!!」


 すると御坊ちゃまは手を上に挙げて叫ぶ。



 「【 ここにあるのは原石の源! 我が手に担うは創作の魂 】!!」



 この異世界には魔法と呼ばれる概念が存在している。

 それはこの世界にとっての科学のような物。

 この概念は動力が必要であり、技術が必要であり、そして知識が必要とされる物。

 漫画やアニメのように魔力があれば誰でも扱う事が出来る物ではなく、才能があって初めて扱う事の出来る奇跡の力。

 つまり、魔法を扱う事が出来れば天才と呼ばれる世界なのだ。

 それぐらい、魔法を扱う人間は貴重な存在。

 そんな人間が実は、俺の目の前にもいる。

 

 御坊ちゃまの足元から数個の魔法陣のような物が浮かび上がると、青く光る粒子が集まっていくのが見える。


 「行くぞ雑兵どもッ!! ボクがこのダンジョンに来た事がチミ達にとって最大の不幸として嘆き消え去るがいいッ!!」


 そして、御坊ちゃまは上に挙げていた腕を地面にまで振り下ろす。


 「錬金魔法ッ! 【 カウントレス・ソード(無数の剣) 】ッ!!」


 すると、魔法陣から無数の武器が飛び出してきた。


 「よしッ!」

 

 御坊ちゃまは拳を握り絞め、目の前の敵を睨みつける。


 「行くぞ無能ッ!!」

 「・・・ん? 行く?」


 御坊ちゃまは魔法陣から出てきた剣を持つと、何故か剣術の構えではなく、まるで槍投げのように持ち構えた。


 「あの、何してるんすか?」

 「見て分からないのかッ! これで奴らを倒すのだ!!」

 「うん・・うん? それは分かるけど、なんで両手にそんなデカい剣持つの?」

 「本当に無能だなチミはッ!! 理由はただ1つ!!」


 カッと目を見開きながら、御坊ちゃまは両手に持つ武器を勢いよくゴブリンに向けて投げる。

 

 「とりあえずこの大量に作り上げた武器をゴブリンに投げつけろぉぉぉおおおおおおッ!!!」

 

 魔法を扱える人間は天才と呼ばれる世界。

 魔力のない俺では無能として扱われるが、夢にまで見た異世界の魔法に感情のない俺が感動しそうだったのに・・


 「魔法って、こんな古典的だっけ?」


 武器が無くなるとまた御坊ちゃまが魔法で作り上げ、武器がなると作り上げを繰り返して、結果的にはゴブリンの集団を一掃する事は出来た。

 

 異世界転生して初めての戦闘は少し思っていたのと違ったが、やり遂げる事に成功した。

 

 

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