1、暗闇に浮かぶ少女
ある一軒家に少女が一人ディスプレイに向かっていた。
その姿はまるで暗闇の中に浮かぶ亡霊のようだった。よくよく見ればそこは中々に広い部屋の中であり、青白いディスプレイの淡い光だけが彼女を照らしていた。
その部屋は朝だというのにカーテンは閉め切られ、明かりも付いていなかった。部屋にはまとめられたゴミ袋が散乱し、二階へと続く階段は埋まり上がれそうもないほどだった。
彼女はネットサーフィンをしていた。様々な検索エンジンを巡り、日々新たな刺激を求めネットの海を泳いでいた。
「退屈だなぁ…そろそろ記事漁りも飽きてきたし、なにか大きな事件とか起きてないの?」
不満げな顔を見せる彼女は非常に特徴的な容姿をしていた。
髪はディスプレイの光に照らされて銀色に輝き、金色でキラキラとした猫を彷彿とさせるような大きく開かれた眼を持ち、真っ白で白磁のような肌をしていた。彼女はいわゆるアルビノと呼ばれる体質であった。
朝だというのにカーテンを閉め切っていたのも日光に弱いためである。
彼女は非常に整った容姿をしていたが、今はろくに手入れもしていないため美しい銀髪はハネ放題になっており、白い肌は不健康な生活を送っているためか、白というよりも青白く見えた。
「ふ〜ん最近物価が上がってるんだ。全然気にしたことなかった。今度このゲームの新作出るんだ。やった事ないし今度始めてみようかな」
う〜んと伸びをした彼女がすぐそばに置いてあるペットボトルを手に取るとひとつ口をつけた時キュルルルルと可愛らしいお腹の音が鳴った。
「あれ?お腹鳴った?ということは今は7時ちょうどか。夜ご飯食べよ」
「あれ?昨日届いた箱買いしたカップラーメンとカロリーメ◯トどこに置いたかな?あー探すのも面倒だしまだ残ってる奴を適当に食べるか〜」
「カップラーメンを作るのもめんどくさいし、お湯も重いから今日はカロリーメ◯トにしよっと。4箱あればちょっとは持つでしょ」
朝に食べる夜ご飯を終えた完全に昼夜逆転している彼女はまたディスプレイに向き直り、とろとろとネットサーフィンを始めた。