表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

第2章~新年会はどうなったのか

 明日の新年会に出らるかどうかの返答を、


「分からない!」


 と、大声で抜かした現場長に、さすがに同僚(どうりょう)の皆さんも完全にドン引きでした。


 同僚の中で、自分と入社日が近い前田先輩(せんぱい)が、


「あのジジイ文句ばっかり()れやがって!」


「どうせ来たって文句しか言わねぇから欠席にしとこうぜ!」


 と、言いながら、新年会の出欠表に近付いて行きました。


 そして、何の躊躇(ためら)いもなく、現場長の出欠(らん)の欠席部分に、乱暴(らんぼう)にでっかく○印を入れました。


 その様子を、数人の同僚が見ていましたが、(みょう)に納得していました。


 同僚の皆さんも、現場長がこのまま欠席だったらいいのにな…と思ったのか、誰も突っ込みを入れませんでした。


 前田さんは、皆さんに向かって言いました。


「自己中(自己中心的)なジジイの為に、こっちがキャンセル料を(かぶ)るなんて真っ平御免(ごめん)だよ!」


「字が読めない訳じゃあるまいし、いつまでも嫌がらせに屈服(くっぷく)してたら()められるだけでしょ!」


「同じ金を払うなら、うちらだけの方が断然楽しいでしょ!」


 その主張(しゅちょう)には、誰も反論しませんでした。


 その後、しばらくして現場長が事務所に戻って来ました。


 そして、嫌がらせをしている自覚があるのか、すぐに張り紙をチェックしました。


 すると、思いもよらず欠席欄に丸印が書かれていたので、目を見張って、


「誰だー!俺の欠席欄に勝手に丸印を書いた奴はー!」


 と、怒号(どごう)を飛ばしましたが、さすがに誰も口を割りませんでした。


 自分は、明日の新年会の人数を、居酒屋の方に伝えなくてはならないので、仕方なく、


「あの~、すいません…」


「では、明日の新年会は出席って事でよろしいでしょうか?」


 と、聞くと、現場長は引っ込みがつかなくなったのか、顔を真っ赤にして怒りながらも(だま)って(うなず)きました。


 さて、新年会の当日になったものの、現場長が主張していた、


「追加分は幹事のお前が全部払えよ!」


 との発言が気になって、自分は多目に現金を持って新年会に参加しました。


 ただ、この時の新年会は、最初からボリューム感がある食べ物がバンバン出て来て、鍋の()めに残ったスープにご飯を入れて食べると、その時点で皆さんは満腹でした。


 そこで、現場長が食べられもしない追加注文をしてくるのかと思って警戒(けいかい)していると、その不安は意外にも呆気(あっけ)なく消え去りました。


 何と!2時間の新年会のうち1時間を残したところで、現場長がいきなり立ち上がると、


「宴も(たけなわ)ですが、私はこれで帰ります」


 と、言って、さっさと帰って行くではありませんか!


 現場長の姿が見えなくなると、同僚の皆さんは口々に、


「あのジジイ!いつも嫌がらせばかりしがって!」


「今回は前田さんの功績(こうせき)だな!」


「でも、根に持っているんじゃないですか~?」


「もういいじゃねぇかよ、居づらくなって勝手に出て行っただけだろ!」


「よし!この後は楽しく飲もうぜ!」


 と、ワイワイ(さわ)いでいると、急に雰囲気(ふんいき)が良くなって来ました。


 この後は、同僚の皆さんが気を(つか)ってくれたのか追加注文はなく、コース料金のみで精算出来ました。


 それにしても、最後まで現場長がいたのなら、どうなっていたことでしょう。


 新年会で一番ホッとしていたのは、副主任の寄川さんだったでしょう。


 寄川さんは追加注文に備えて、かなりお札を引き出していたようでした。


 この一件を、後に同僚の皆さんは、


「追加は幹事が払えよ事件」


 と、言うようになりました。


 しかし、今回頑張った事により、意味もなく事前に多めに会費を徴収(ちょうしゅう)するのは回避(かいひ)出来ました。


 会計係がいないというのもありますが、会社の飲み会で飲み足りなかったり満腹にならなかった場合は、個人的に満たしてくれればいいだけの事でしょう。


 それを今まで、


「足りない事は悪だ!」


 と、ばかりにやってきたのが、この事態(じたい)(まね)いたのでしょう。


 ただ、現場の飲み会はこれで終わった訳ではなく、その後も新たないざこざが起きるのです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ