第2章~ハイペースで飲み続けた忘年会
忘年会の当日になると、自分は現場長から呼ばれました。
何事かと思って聞いていると、
「今日は必ず領収書をもらえよ!」
「会社に半額請求するんだからな!」
と、言われました。
その為には、あまりべろべろになるまで飲んではいけないなと思いましたが、保険を掛けて先輩にも領収書の事を気にしてもらうように頼みました。
そして、いざ忘年会がスタートして飲み始めると、飲み放題のお酒は矢継ぎ早に来るのですが、なかなか料理が来ないのです。
仕方がないので、皆さんで30分は空酒を飲み続けました。
乾杯をしてから、勢いで何杯か飲んだものの、胃がキューっとくる感じでした。
自分は、新人だったのもあって、やたらと空酒を飲まされました。
いい年をした先輩もいましたが、体育会系のノリでガンガン飲んでいたので、最初の30分で皆さんはかなり出来上がっていました。
自分は会計も兼ねていたので、完全に意識が飛ばないようにしていると、そこでやっと少しずつ料理が出て来たので、食べる方向に移る事が出来ました。
忘年会が始まって1時間以上経つと、現場長は店員の方に、
「ここって飲み放題にボトルも含まれているの?」
と、尋ねました。
店員の方はメニュー表を指差しながら、
「はい、ここの右側に書いてある2種類のみボトルでお出し出来ます」
「但し、ボトルキープは出来ませんのであしからず」
と、早口で答えました。
それを聞いて、現場長は透かざずに、
「じゃあ、このボトル持って来て」
と言うと、店員さんは、
「了解です、すぐにお持ちしますね」
「あ、グラスは全員分お出ししますね」
と言って、慌ただしく調理場の方に戻って行きました。
その数分後に、人数分のグラスと焼酎のボトルが運ばれて来ました。
「はい、お待ちどうさま~、この焼酎は飲み口がいいですよ」
と言って、店員さんが戻ろうとすると、現場長が引き止めて質問しました。
「ねえ、このボトルなんだけどさぁ~、ボトルキープ出来ないんだったら、余ったら持って帰ってもいいかな?」
赤ら顔でそう言うと、店員さんは、
「いやいや、なるべく店内で飲んでいって下さいよ~」
とは言いましたが、店内の他のお客さんとの対応で忙しくしていたので、他の宴席の注文聞きにそそくさと戻って行きました。
自分と先輩の藤井さんが焼酎を8人分注いでいくと、ボトルの中身は半分以上無くなりました。
ボトルの量は、どうやらグラス11~12杯といったところでしょう。
店員さんが言っていた通り、飲み口のいい焼酎だったので、すぐに同じボトルを追加注文しました。
コース料理を一通り平らげ、飲み放題では焼酎のボトルを中心にハイペースで飲んでいると、皆さんは大層満腹になったので先輩の小野さんが、
「もうボトルはこの辺にしましょうよ!明日勤務の方もいるんですし…」
と言うと、現場長が、
「バカ言うな!こんな飲み口のいい焼酎が飲み放題なんだぞ!」
「あれこれ言わずにガンガン飲めよ!」
「帰るのがダルいなら、オーナー側に見付からないように現場に戻って、機械室の隅にでも寝とけよ!明日俺が起こしてやるからよ!」
と、声を荒げて言いました。
現場長の無思慮な発言があったので、それから30分位は皆さんでボトルの焼酎を飲み続けました。
しかし、さすがにもう飲めないというタイミングで、現場長が注文したボトルの焼酎がテーブルに置かれました。
その焼酎を、現場長が皆さんのグラスに注ごうとしましたが、全員が断ったので、
「何だよ~、お前らは~」
「じゃあ、このボトルは俺が持って帰るから~」
と言って、ボトルを鞄に押し込みました。
皆さんはやっとお酒から解放され、やれやれ…と思っていると、そこで忘年会の時間が終了になりました。
無事に忘年会が終了した時、飲み放題の中に含まれていたボトルの焼酎ばかりを飲んでいたので、コース料金しか掛かりませんでした。
会社の半額支給は24000円、現場の皆さんは20100円で合計44100円でした。
ただ、1人3300円徴収してしまったので、差額の800円を皆さんに返金しないといけなくなりました。(現場長の返金額は700円)
(20100円-現場長負担金100円=20000円)
(20000円÷8人=2500円→実際の1人分金額)
(1人分徴収額3300円-実際の1人分金額2500円=皆さんの返金額800円)
(1人分徴収額3300円-実際の1人分金額2500円=800円-現場長負担金100円→現場長の返金額700円)
要は、会社の半額支給は置いといて、皆さんから26400円徴収したものの、実際は20100円しか掛からなかったので、上記の金額をそれぞれ返金しないとなりませんでした。
忘年会幹事の役目は済んだものの、後日会計の仕事もあるので正直面倒でした。
返金と同時に、現場の皆さんに会計報告もしないといけなかったからでした。




