第4章~通常の食べ放題に戻ったら
ここでやっと通常の食べ飲み放題に戻ると、数分後に店員さんが重そうに、
「ご注文の餃子、大変お待たせしました~」
と、言って、山盛りになった餃子を、2皿に分けてテーブルに持って来ました。
「何だぁ、この量は…」
現場長は、呆れながらたじろぎました。
1皿にどれだけの量があったのかというと、1番下の段が18個(6個×3列)で、それが4段(18個×4段=72個)ありました。
それが2皿(72個×2皿)で144個…。
現場長は、山盛りの餃子を前にして、
「村岡~!お前、最初に頼んだ3皿(54個)をキャンセルしないで5皿(90個)頼んだな!」
「ここにある8皿(144個)を、6人で割ると1人24個(通常の4人前)だ!」
「お前ら全部食えるのか?」
と、声を荒げて言いました。
既に皆さんは、1人前の餃子(6個)を食べていましたが、更に4人前の餃子(24個)を食べると、つごう最低5人前(30個)は食べなければなりませんでした。
ごっそりと積まれた2山の餃子を、現場長が力強く指差して、
「お前らチマチマ食うなよ!」
「餃子は3個ずつ取って勢い良く食えよ!」
と、叫びました。
すると、現場長の気迫に押されたのか、皆さんはもの凄いスピードで餃子を3個ずつ頬張りました。
山盛りの餃子は、1個ずつ箸で取るより3個ずつ取った方が、何故かパカッと剝がれました。
初めのうちは、餃子のタレを付けながら食べていましたが、量が嵩んでくると苦しくなるので、最後の方はそのまま口に押し込みました。
「よし、あと6個だ!」
「一気に食えー!」
皆さんでワイワイ言って完食すると、ここで拍手が沸き起こりました。
「いや~、お前ら、ヤレば出来るじゃないか!」
現場長は、ご満悦で労いの言葉を掛けました。
元はといえば、現場長が村岡さんに散々餃子の追加を急かしたのが原因でしたが、元も充分取れたしこれで帰れると思っていました。
しかし、完食してからだいたい5分後に、
「はい、お待ち~!餃子3皿(54個)」
と、言って、店員さんがごっそりと積まれた餃子を運んできました。
前の皿と同様に、1段目が18個でそれが3段ありました。
「ま、まさかお前…、餃子を催促しに行った時に、尚も3皿(54個)頼んだのか~!」
自分は、その時の事を思い返しました。
村岡さんが、最初に3皿(54個)頼んで、追加で間違って5皿(90個)頼んだから、3皿キャンセルして5皿にするか、5皿を2皿(36個)に変更してと言ったのに、そのまま3皿+5皿=8皿(144個)来てからこの3皿は…?
「あっ!あの時に立てていた3本の指は、8皿頼んだ上で更に3皿追加したって事か!」
「これじゃ1人平均39個も食べるって事じゃないか!39個っていったら6人前半だぞ!」
「クソっ!店員さんもおかしいと思ったら確認してくれれば…」
事の真相が判明したものの、もう後の祭りでした。
皆さんは、さっきまでハイペースで餃子を食べていたので、もうお腹に入る余地は殆どありませんでした。
村岡さんは、餃子の山を見ただけで気持ち悪くなったのか、
「うっ…」
と、言った後に、大きなゲップをしました。
それを聞いた店員さんは、
「残したら罰金になりますんでよろしく~」
と、言ってきました。
54個ある餃子のうち、苦しみながら何とか皆さんで34個は食べましたが、残り20個になったところで全員の箸がパッタリと止まりました。
すると、現場長は体重が105kg以上ある寄川さんに向かって、
「おい!寄川、お前は図体だけはあるんだから、全部食ってくれよ」
と、脂ぎった顔をして言うと、
「もう俺も食えない、お腹いっぱいだよ…」
と、苦しそうに答えました。
それを聞いた現場長は、興奮しながら、
「何だお前!現場では畳一面食い物を並べて、すげぇ食ってんじゃねぇかよ!」
「ここでしか使えないのに、ここでも使えなかった!」
と、吐き捨てるように言いました。
その状況を見て、堪り兼ねた中津川さんは言いました。
「誰かビニール袋を持っている人はいませんか?」
皆さんは、各々カバンの中を探しました。
「あった、あった!1枚だけあった!」
前田さんが嬉しげに差し出すと、中津川さんは店員さんがいないのを確認してから、余った餃子をその袋に手早く詰め込んだのです。
「お前が頼んだんだから、責任持って持ち帰れよ!」
「但し、店の真ん前には捨てるなよ!そんな事をしたらすぐバレるからな!」
そう言って、現場長が村岡さんに餃子入りの袋を押し付けると、そこでやっとお開きになりました。
暑気払いは、張り紙の通り現地での精算でした。
皆さんは、2625円という半端な会費を、きっかり持って来てくれたのかな?
と、心配していると、次々と2700円を出してきて、
「少ないけどお釣りは幹事の手間賃な!」
と、言って下さいました。
ただ、現場長だけは、
「えーと、2千…、6百、ん~、20、と…、はい、5円で丁度な!」
と、言いながら、封筒に入れられた会費を、数えながらきっかりと払ったのです。
「皆さんは少し色を付けてくれたのに、現場長だけはきっかりかよ…」
とは、思いましたが、妙に納得しました。
暑気払いから14日後にフジテレビの朝の番組で、我々が暑気払いしていた日のインタビューを放送していました。
インタビューをした3組のうち放送されたのは、隣のテーブルで大人しく飲み会をしていたグループの方でした。
眼鏡を掛けたおじさんが、淡々とインタビューに答えているところが、数秒間TVに映っていました。
そりゃあ、あんなふざけた集団をTVで放映する訳はありませんが、自分はあの時に初めてTVのインタビューを受けたのでした。
後に、現場の皆さんはこの1件を、
「悪夢の餃子食べ放題事件」
と、呼ぶようになりました。
それと、現場長が言った、
「ここでしか使えないのに、ここでも使えなかった!」
というのが、名言となったのです。
餃子食べ放題に行った翌日、皆さんはニンニク臭くて仕方がありませんでした。
狭い事務所に皆でいると、数分後には強烈なニンニクの匂いがしました。
とりあえず、その日の午前中は事務所内でゲップをするは禁止になり、いちいち廊下か機械室迄行っていました。
最後に、餃子の食べ過ぎには気を付けたいですね。
思っている以上にカロリーもありますので…。