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黒い水

「さて、フェオドラちゃん、私はヤーラ。で、そっちにいる赤髪がタマーラでその隣がソフィーヤ」

「赤髪って、毛先はちょっとだけ桃色なんですけど」

「ふふ、タマーラ、思い込みだけは自由だけど嘘はダメよ。それよりもフェオドラちゃんはお水大丈夫かしら?」


 スラッと背が高く筋肉質な紺色の短髪の女性――ヤーラはフェオドラに自己紹介すると、一緒に来た他の二人の女性も紹介する。ヤーラと同じくらいの背丈で赤髪ウルフヘアのタマーラにハチミツ色の髪を持ち、騎士と言う言葉が似合わないほんわりとした雰囲気を持つソフィーヤ。フェオドラはヤーラの言葉を聞き、他の二人の言葉にも耳を向ける。


「お水、へいき」

「あら、そう、よかったわ。じゃあ、まずは服を脱ぎ脱ぎしましょうね」

「ん」

「代わりの服は私たちのシャツとかで大丈夫か」

「あー、もー、夜じゃなかったら買いに走れたのにぃ」


 ソフィーヤがフェオドラの服を脱がしている後ろではフェオドラの服をどうするかなどヤーラとタマーラが話し合っていた。そんな中、エプロンドレスのポケットからコロコロと木の実が転がり落ちる。


「あらあら、なにかしら」

「あ、ごはん」


 答えとも言えるフェオドラの言葉に三人がピシリと固まる。


「え、ごはん、あれ、食べれるっけ」

「食べれるには食べれたはずだが、普通は食べない」

「とりあえず、これはお姉さんが預かっておくわね」


 報告案件ねと自分のポケットに仕舞う。そうして、木の実事件があったもののフェオドラの服を脱がし終えたが、今度はフェオドラの体を見て、絶句。ドロワーズだけのフェオドラの体には無数のやけどや青痣、打撲痕に擦り傷切り傷。そして、極めつけは見える範囲の手足からもなんとなくは把握できていたがフェオドラの細さだった。下手な衝撃などあればぽきりと行ってしまうのではないかと思えるほどのガリガリ具合で、これでよく歩くことが、生きることが出来ていたなと驚くほどのものだった。


「……さて、フェオドラちゃん、お姉さんたちもちょっとお洋服脱ぐから、残りのドロワーズは自分で脱げるかしら」

「ん、らいようふ」


 んしょと座り込んでドロワーズを脱ぐフェオドラを一度は目に入れ、ソフィーヤたちも服を脱ぐ。本来、フェオドラを洗うだけならばそこまでする必要はないのだが、彼女たちは巡回、担務上がり。そのため、お風呂に入るのは決定事項だったこともあり、それならばとフェオドラをお風呂に入れる役割に手を挙げたのだ。


「あったかお水、いっぱい、のんれい?」

「おっと、飲むのはダメだぞ。これは浸かるものだからな」

「そーそー、あとすぐに入るのもダメだよー」

「さ、こっちにいらっしゃい。まずは体の汚れから落としちゃいましょう」


 いらっしゃいと手招きされ、フェオドラは恐る恐るソフィーヤの許に行く。タマーラは桶に湯を掬い、ソフィーヤに渡す。任せて大丈夫と彼女に問えば、ええと頷いたため、なんかあったら呼んでと言ってからタマーラとヤーラはまずは自身の体を清めることにした。


「髪、水メッ」

「あら、でも、それだと綺麗にはできないわ」

「ママ、言ってた。髪、見つかったらメッて」

「そう。でも、ほら思い出してみて、フェオドラちゃんが引っ付いてたお兄さん、私たちの事、なんて言ってたかしら」

「……てきらない」

「そう、敵じゃないわ。それにね、きちんと髪まで綺麗にした方がお兄さん、喜ぶと思うんだけど、どうかしら」


 水に濡れないように髪を掴み、髪を洗うことだけは拒むフェオドラにソフィーヤは穏やかに微笑みながら、アルトゥールの事を引き合いに出す。使えるものは適度に使うのがいい。今のフェオドラにとって、アルトゥールは重要なポジションにいるのだろうことは今までのやり取りで把握済みだ。そのため、アルトゥールを使い、フェオドラの反応を見る。そっと髪の毛を下ろしたフェオドラにソフィーヤは内心よしっとガッツポーズをするも表ではイイ子ねフェオドラを褒める。


「じゃあ、まず、軽く体から洗い流しちゃいましょうね。ちょっと、沁みるかもしれないけど、我慢よ」

「ん」


 フェオドラが頷いたのを確認して足先からゆっくりとお湯をかけていく。所々でお湯が沁みたのだろうひぅっと小さな悲鳴が上がる。とはいえ、お湯をかけただけにも関わらず、フェオドラの周りの水は黒くなっていた。


「沼地や湿地帯に行った時並みだな」

「それね。にしても、フェオドラちゃん、肌白すぎて傷が痛々しい」


 床の黒い水を追い水で流してやりながら、フェオドラを観察していた二人。まだ新しい傷もあるから、風呂上がりに治癒室から傷薬などをもらってくるかと計画を立てていた。

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