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仕事と勉強

 別邸に移動した翌日からフェオドラは言葉と文字の勉強が始まった。


「これはなんでしょう?」

「にぇこ」

「はい、そうです、猫ですね。ちなみに文字はこのように書きます」


 教師役は執事であるマルクとドナート、別邸の家政婦長リンマがそれぞれ交代で担当する。

 イラストを指し示し、何であるかと尋ねればフェオドラはしっかりと答える。何度か知らぬだろうと尋ねても用途とモノは知っているようだった。ただ、発音が上手くそれに追いついていない、そんな風に思われた。文字も誰に習ったのか簡単なものは読むことができていた。


「フェオドラ様は覚えるのが早いですね」


 素晴らしいですね、よくできましたと褒められるのはアルトゥールや詰所の人達以外では母以来のことだった。嬉しいと調子に乗って頑張れば、無理は良くないと止められてしまった。むぅとむくれれば諭すように無理は体を壊してしまう、ゆっくりでいいのだとそう告げられる。


「さ、今日のお勉強はここまでにしましょう」

「お外!」

「はい、そうです。お外でお手伝いをしましょう」


 パンと今日の担当であったドナートが手を叩き、そういうとフェオドラはパッと顔を明るくさせた。その様子に微笑ましいとばかりにドナートにも笑みが浮かぶ。これから、庭でお手伝いをするのだ。フェオドラは貰えた仕事にいつも張り切っていた。

 そもそも、そんなお仕事という名のお手伝いを貰うきっかけはフェオドラの不安からだった。





 勉強に、美味しいたっぷりの食事、たっぷりの睡眠、毎日会えるアルトゥールと沢山貰って過ごしていたフェオドラはある時、こんなに幸せでいいのだろうか。自分は仕事をしてないのにそんな資格があるのだろうかと不安に苛まれた。そのため、いつも何があったこうであったと夜に話を聞いてくれるアルトゥールにおずおずと相談した。勿論、アルトゥールは今は新しくできることを増やしている最中だからといったが、フェオドラ自身はフルフルと顔を振って、納得することはできなかった。


「そうだな、それでは、簡単なお手伝いでもするか」

「おてつらい?」

「そうだ、荷物を運んだり、収穫したりのお手伝いだ」


 別邸や本邸から少し離れたところにいつでも新鮮な野菜や果物をという料理人たちの熱情を買って先々代位の公爵が作った菜園がある。そこでお手伝いをして、収穫したものは厨房へと運ぶ。散歩以外の運動を考えていたアルトゥールにヴィークトルが提案したことだったが、目をキラキラ輝かせているフェオドラを見るとその提案を受けていて正解だったなと思った。


「で、どうしたい?」

「やる! テオ、やりたい」

「そうか、なら、それで話は通しておこう」

「トゥーラ様、ありがとう」


 ふわりと笑ったフェオドラにアルトゥールはあぁと返事をしながらその目を細めた。唯一フェオドラから呼ばれる「トゥーラ」という愛称に心が満たされるように暖かくなっていた。とはいえ、菜園に行くことになるのはそれから数日後のことである。





「トゥーラ様のために、がんばるぞー」


 言葉もしっかりと発音できるようになったフェオドラは汚れてもいい格好に着替え、菜園の前でそういって拳を突き上げる。今日の教師役のドナートも同じ様に作業着に着替えて、彼女に付き合う。


「さて、フェオドラ様、今日収穫するものはなんでしょうか」

「えっとねー」


 ポケットの中からメモ帳を取り出し、必要なものを読み上げる。これは聞き取りと書き取りの勉強も合わせたものだった。


「はい、それでは収穫していきましょう」


 収穫予定の野菜の場所には事前に菜園の管理者が道具を準備している。その中から、使う道具、必要な道具を自分で選び、収穫する。最初はやはりどうしたらいいのかわからないだろうからと使い方の教科書や植物のイラストが描かれた本なども一緒に用意してある。初めて来た時にはその日の教師役であったマルクがさてとどれでしたかなと植物の本を開き、これこれと今度は道具の教科書を開いて、成程と頷いて実践していた。それを見ていたフェオドラも見様見真似でメモに取った植物を本から探し、植物の形を知った。そして、続いて道具の教科書を読み、マルクの様子を見て使い方を学ぶ。最後にそれを実践してというのを繰り返した。


「フェオドラ様、随分と上手になりましたね」

「ホント!? ありがとう」


 手際よく、収穫し、必要な分をドナートと合わせて箱に詰め込む。それをドナートが褒めれば、頬に手を当ててえへらも笑う。ただ、汚れた手で頬を触ってしまったため、泥がついてしまった。


「可愛らしいお顔が泥だらけになってしまいましたね。厨房に届けたら、一度体を拭いてもらってください」

「はーい」


 元気よく返事したフェオドラに笑顔で頷くと、フェオドラには少し野菜の入った小さな箱を渡し、ドナートはその残りの入った木箱を厨房へと届けた。


「ドナート、今日はジナイーダ様来るかな」

「恐らく来られるのではないでしょうか。お菓子と紅茶、用意しておきますね」

「うん」

ここまで、読んでいただきありがとうございます。

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