第2章 2-02
千葉部長が一課に来た。
「えー、一課の皆さん。少しお時間よろしいですかな」
御代課長が部長に応対する。セレスティア女史との「調整」は、ちょうど終わったところのようだ。
「部長が直々に来られるとはめずらしいですね。何か?」
「今度、施設部で採用された新入社員を紹介したいのだが、よろしいかね」
「施設部とは珍しいですね。もちろん構いませんよ、(パンパン)(手を叩く音)はい皆さん、注目!」
千葉部長に促され、誰か、知らない女性が入って来た。それは、鈴木代理の知っている人物だった。新入社員があいさつを始めた。
「営業一課の皆さん、初めまして。この度施設部に採用されました、海野冬菜です。よろしくお願いしまッス。あ、”とうな”って名前は、鈴木代理につけてもらったっス。それと、鈴木代理には結婚を申し込む予定なんで、これもよろしくデス」
あいさつが終わると、千葉部長と海野社員は一礼して何事もなかったかのように部屋を出て行った。
その後、ちょうどその場にいたセレスティア女史も参戦して、鈴木代理が各方面から吊し上げを食らったことは言うまでもない。
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まあ、私生活ではそういった些細な?出来事はあったが、いや、思い出してみるといろいろあったが、それはそれとして、わたくしこと鈴木一郎の会社勤務は順調だったと言ってよいだろう。地球のテラフォーミング計画も最近は順調に進んでいるし…いや、すまない、本当は順調かどうかよく分からない。
順調すぎるのだ。異常である、異常な進捗である。
何と、地表で初めて降雨が観測された、とのことだった。初めて、というのは、「地球滅亡後(AF0000年以降)で、初めて」という意味である。
この異常な進捗の原因は、もちろんアリス嬢である。まあ、彼女はそのために生み出されたのだから、それで計画どおり、と言えばそうなのだが。
最近のアリスの言動、といえばいいか、あるいは性能向上というか、そういったものは、もはや設計した人類の想定を超越してしまっている。
自分で自分を際限なく改造している。これも当初の設計どおり、といえばそうなのだが、お世辞にも、人類が予想していたような緩やかな成長速度、ではなかった。
超光速移動(ワープ、彼女風に言えば「転送」)から始まって、エネルギー源の改修から、身体駆動系も根本的に変えてしまったようだ。
彼女は、もはや「電気で動く機械人形」ではない。本人の説明によれば、本体は精神体だということだ。身体は非物質的に微細力場によって構築している、ということらしい、本人の説明によれば。つまり、もはや体が原子でできていない、のだろう、多分。
うーむ、もはや神々の領域という気もするな。
出力エネルギーも途方もないことになっている。恒星(太陽)のエネルギーどころの騒ぎではなくなっている。
一度、この新たな存在となった直後、アリスが「ダメだと思うが、一応、試してみる」と言って、無数の超光速拳を放ってきた。おいおい、コロニーが壊れてしまうぞ。
仕方ないから、渋々、アリスの腕を折ることとなった、それしか威力を抑える方法がなかったので。あぶないことは本当にやめてほしいのだが、このお嬢さんときたら。
いやいや、話がいつも脱線して申し訳ない。それが本題ではなかったです。
そうでした。本題は、またも人類絶滅の危機、でしたね。
またか・・・。




