第0章 0-02
しかしまあ、自分が生きている間に、パンデミックが発生するとは思わなかった。
「はい?」
「いいえ。はい、ではないわ」
「何がです?」
「だから、不可能、の話よ」
「はい、そうです」
「・・・どうも、会話がかみ合ってないわね」
暴走超特急気味の課長が、やっと、こちら側の世界に戻ってきたようだ。
「では、少し戻りましょう。我々にはミッションを達成できる案、つまり、不可能を可能にする案、は出せなかった、OK?」
「はい」
「では、どうするか。不可能を可能にする案を出せる者を連れてくる、それしかないわよね」
「えーと。不可能、なのですから、仮に、誰を連れて来たとしても、不可能なのでは?」
「しかし、ここで私たちが不可能、と言っているとき、それは、私たちのポンコツな頭脳で考えた結果、不可能だと思えるから不可能だと言っている、よろしいかしら?」
「はい」
「もし、私たちに、無制限な納期と、無制限の資金と、無制限の資機材や技術があれば?」
「それは可能でしょう。それこそ40億年でも何でもがんばれば。ただし、無制限と言っても、無限、ではないでしょうけれど」
「そう、もし必要なものが無限ならば、それは本当の意味での不可能でしょう。そうだとしても諦めるつもりはありませんけれどね。ですから、今回のミッションは、本当は、”不可能”ではないのです。時間や、資金や、技術的問題が足りてないだけなのです」
「それはそうですが、普通一般には、それを不可能と言いませんか?」
「そうかも知れませんが、では、この辺で言葉遊びはやめにして、プロジェクトを提案するわ」
「はい」
課長が共用ディスプレイに電子ペンで何かを書き込んだ。そして画面を叩く。
「(バンバン)これです!」
そこには、人造人間プロジェクト、と書かれていた。
「質問は?」
さてさて、またどこからツッコミを入れればいいのだろう。
だが、とにかく今回は、これだけは絶対に確認が必要だ。
「課長、人造人間、ですね? 新造、ではありませんね?」