お互いの宿命を乗り越え夢を掴む物語
「この路地をたどれば‥‥あった緑色のぼろい一件家」
「こんなところに本当に迷い込んだんでしょうか?娘ちゃん」
「確かに。でもおじいさんここで目撃したのが最後って言ってたし」
コウトたちは昨日のおじいさんがもっている情報を頼りに人気の少ない場所に来ていた。
「すみません。ここに赤いリボンをつけた女の子を見かけませんでしたか?」
「赤いリボンの女の子‥‥ああ確か向こうの方で見かけたような」
男性が指をさすとコウトたちはその方向に足を運んだ。
奥に進むにつれ更に不気味になっていく街並みに不安を抱きながら歩いていると女性の会話が聞こえてきた。
「あの子大丈夫かしら。やっぱり通報した方が‥‥」
「ダメよ、変なのに関わることになりかねないわ」
「すみませんその話詳しく聞かせてもらえませんか」
「それがね‥‥」
コウトが年老いた女性に近づくと眉をひそめながら話し始めた。
「実はさっき小さい女の子が男たちに抱えられて連れていかれてるところをみて」
「その男たちはどこに」
「あの倉庫みたいな建物があるでしょう。あそこに消えていったわ」
「あそのにいるのか。なら早く助けにいかないと。お二人ともありがとうございました」
コウトは頭を下げるとセリシアとともに古びた倉庫に急いで向かった。
「何か話声が聞こえるね」
「そうみたいですね、しばらく様子をみましょう」
セリシアは倉庫にたどり着くと中に入ろうとしたコウトを止め、目的を探るべく裏にまわり隙間から様子をみることにした。
「今回も大量に稼ぎましたねマシマさん」
「俺たちにかかればあの程度の魔物はどうってことないわ」
「さすがマシマさん。それにこの娘も拾いましたし」
騒がしい男たちの間には縄で縛られて泣いている赤いリボンの女の子が見えた。
「いた!赤いリボンの女の子」
「あの子がおじいさんの娘さんですね」
「どうしようかセリシア」
コウトが助けるための相談をしていると男たちは話がさらに聞こえてきた。
「この娘どうします?」
「どうするもなにもこんなひ弱そうな娘闇市場に売る以外にあるか」
「ひゃ~マシマさん容赦ないっすね、パないっす」
助ける算段をたてている間に聞こえてきた話にセリシアは顔をこわばらせ嫌悪感をあらわにした。
「なにがパないっすよ、これだから人間は信用できない」
「確かに外道の王道みたいな奴らだね。これならなおさら早く助け出さないと」
「そうですね、まずは前と同じ作戦でご主人様は陽動をお願いします。そのすきに指一本触れる前に片付けますから」
「わかった。頼んだよ」
「はい」
コウトは正面のドアにセリシアはそのまま裏で待機をして様子をうかがった。
「今の話は全て聞かせてもらったぞ悪党ども」
「あ?誰だお前」
「なんだ坊主ここはお前のような子供がくる場所じゃないぞ」
「俺は小僧じゃないしその子の捜索を依頼された者だ」
「依頼?そうかギルドか‥‥にしてもお前ひとりか?仲間は‥‥」
「ここにいますよ」
真正面のコウトに注意をとられている間にセリシアが一瞬にして敵の大半を氷漬けにした。
「後ろか!あの女なんてマナだ。あいつを袋叩きにしてやれ」
「いやぁほーーー」
「うるさい」
大人数でセリシアに襲い掛かるも次々となぎ倒され、その圧倒的な差にコウトの存在はとうに忘れ去られていた。
そのすきに女の子を助けようとしたときマシマが自分のところに引き寄せた。
「そこまでだ!!調子に乗るなよ」
「うぅぅぅ」
「しまった」
「いいかそれ以上動くな、もし動けばこいつの命はないぜ」
不敵に笑いながら壊れた裏口の方に逃げ込もうとしていた。
「ハハハそれでいい」
「どこまでも醜くく卑劣なやつ」
「その表情たまらないな。さっきのすました顔はどうしたのかな」
「セリシア!」
「じゃあなお二人さん‥‥グヒャッ」
裏口から出ていく寸前で黄緑色の猫がのどを掻切っると、素早い動きで外に逃げていった。
「ががあがぅ」
「何が起きたんだ‥‥今」
「とりあえず助かったみたいですね‥‥ふん」
「ぐしゃ」
セリシアは女の子を抱きかかえるとマシマの後頭部を踏みつけとどめを刺した。
「そこまでしなくても」
「こんな奴はこれぐらいしないといけませんよ。それよりギルドに戻って早くおじいさんの元に返しに行きましょう」
「そうだね」
コウトたちは倉庫を離れるとギルドに向かった。