お互いの宿命を乗り越え夢を掴む物語
「もう出てってくれないか。正直恥なんだよね」
「なんで私たちからこんな出来損ないが生れてきたか本当にわからないわ」
「ほんとだよねママ、僕もこんなのがお兄ちゃんなんて恥ずかしくて、お兄ちゃんがいるなんて友達にいえないよ」
(王族に生まれたほとんどの人間が勝ち組の人生を歩むことが約束さえている。
ただこの世の中には良くも悪くもイレギュラーな事がおこる。
そう、僕という存在だ)
「ごめんなさいお父様お母様。僕、もうこの家を出ていくよ今までお世話になりました。
フライドも今までごめんね」
コウトは荷物をまとめると家族に別れを告げ立派なドアから出ていった。
この家にいても居場所はない。魔法の才能がなく弟がいるこの状況ではコウトはいずれ追い出されるとわかっていた。だからこその決断だった。
(魔法の威力やマナの量で人生が左右される世界で僕はマナがあまりにも少ない。
こんなゴミみたいな僕がいたら追い出されても当然だよね)
真夜中に行く当てもなく歩き続けるとコウトの周りはいつの間にか見知らね森になっていた。
(町の近くにこんな森あったかな?)
コウトは少量の荷物を担いで寝床を探すと洞窟らしい穴を見つけ腰を下ろすことにした。
「今日はここで寝ようかな‥‥てあれ?何かいる」
独り言を言いながら洞窟に入ると弱っている生き物を見つけた。
「なんだろう?ってキツネ?」
「ぎゃん」
コウトは小さいキツネをさすると目が覚めたのか小さく鳴いた。
月明りのあたる場所までもっていくと酷くやせこけていた。
「なんでこんなに‥‥とりあえず食べるものを」
コウトはバックから少ない食料を差し出すと、弱々しくももりもりと食べた。
「そうかそんなにおいしいか、でもごめんなこれぐらいしかご飯なくて」
「ぎゅやん?」
やることもなくさみしかったコウトは自分の身の上話をしながら銀キツネをなでた。
「そういうわけで僕も一緒でもいい?」
「きゃん!」
コウトは寒い風で凍えないように銀キツネに毛布をかぶせるとその残りを足にかけ夜を越した。
「もう朝か‥‥あれ昨日のキツネがいないや」
コウトは目を覚ますと荷物をまとめて洞窟を出て、街に戻ろうとした道中に道に迷ってしまった。
「昨日どっから入ってきたんだ、ん?この声は」
コウトは聞き覚えのある声の方にいくと昨日のキツネがゴブリンに首をつかまれ襲われていた。
「僕の力じゃ勝ち目無いけど‥‥ってそんなこと言ってる場合じゃないよな。くそーその子を離せ!」
ゴブリンの腕に雷魔法で作った剣で攻撃するとつかんでいる手を離し、コウトに攻撃を仕掛けた。
「カハッ ぐふっ がああ」
「誰だ?きさま!よくも俺の食事を邪魔してくれたな。そういう無礼な奴はな、こうなるんだよ」
(ああ、もう死ぬんだな‥‥あのキツネは無事逃げられただろうか)
「コォーーーン」
けられながらそんなことを考えていると甲高い鳴き声が聴こえ、ゴブリンが氷漬けにされ粉々に粉砕した。コウトが呆然としていると人影が現れた。
「君はだれ?」
「私はあなたに助けてもらったキツネです。大丈夫ですか?ご主人様」
「え?ご主人様?」
コウトは辺りを見渡すとキツネがいなくなっているかわりに女性が手を差し伸べていた。
この世は本当にイレギュラーなことが突然起こる。
そこには銀色の美しい女性がほほ笑みながら立っていた。