ASSの事をまとめてみよう
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とまぁ、そんなこんなであれから1週間。
当たり前だが、シノちゃんからの連絡は当然こない。
つーか俺から出来るわけねーよ!!
あの後、家に帰ったその日は、さすがにショックだったが、普通に生活出来る以上、とりあえず身の回りを整理しないとな。
月曜に会社にいって、上司に事情を話してその日で退職したいと伝えた。
上司はかなりびっくりしていたし、急すぎるのでいろいろと疑われたが、診断書を見せたら何故か涙を流してくれた。
短い間だったけど、すごい親身になっていろいろ教えてくれてたもんな。ありがたいこった。
退職の手続きもスムーズに進み、さらに事情が事情なだけにたった3年間の勤務だったのに、退職金を出してくれるという話でまとまった。
ああ…人って最後になるとこんなにも優しくなるものなんだな。
そして受け入れられたのか、それともまだ受け入れられていないからなのか、すごく冷静で客観的になっている自分にふと気がつく。
自分が死ぬって言われてるのに、こんなに淡々と物事を進めてるって……やっぱおかしいよな普通。
家に帰ってからなんとなくASSについてノートにまとめてみた。
あまりにも自分が冷静になりすぎてるので、自分がかかった病気の事を、もう一度ちゃんと理解をしようと思ったんだと思う。多分。
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後天性突発死亡症候群(ASS)について
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1、この病気は、なんらかの原因で体内に未知のウィルスに感染してかかる。感染ルートは不明。
2、潜伏中のウィルスは、血液中のヘモグロビンに擬態をする為、発見が非常に困難。
3、運良く(?)ウィルスを発見出来た場合、余命が分かる。
4、過去の例から余命期間はほぼ100%的中し、誤差24時間以内に確実に死ぬ。
5、終末期を迎えると、「ナニカ」(聞いたのに忘れた…)が、ものすごいスピードであらゆる細胞と結合し続けて、生命活動を維持出来なくなってしまう。結合を止める術はない。
6、終末期を迎えるまで、健常者と何ら変わらない生活が出来る。つまり普通に生きられる。
7、今までの罹患者の傾向から、苦しむ様子はなく眠る様に逝くと予想される。
8、この病気にかかる確率は、人が交通事故に遭って不遇の死を遂げる確率もさらに低い。
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改めてまとめると、非現実的な病気だ。
余命期間が100%的中するってすごすぎでしょ。
そもそも、血液検査で分かるなら、全国民に毎年血液検査を義務付ければいいじゃないかと思ったのだが、前提として突然死する人数よりも罹患数が少ない事、罹患していると分かっても治療・対処が出来ない事から、実現する事はほぼ不可能だろう。
義務化する事で発生する血液検査にかかる費用、人件費、設備の準備の手間を考えると、ASSを『発覚させる』メリットがないと判断されるんだろうな。きっと。
その事を考えると、ある意味俺は運がよかったのかもしれない。
近々、100%死ぬけど、だからこそ自分の人生をより濃密に出来る可能性が高くなったのだから。