変態医師 イケダメ登場
白衣が似合っている長身細身。ワカメみたいにモハモハしている髪。
男のクセに肌が綺麗で、目は切れ長。鼻筋も通っていて、全体的に整った顔立ち。整いすぎてるからか年齢不詳。
テニスラケットをもたせたら、「キャーぁぁぁぁ!! プリンスーぅぅぅぅ!! 」とか言われてそうなイケメン。
例えが下手なので、もうシンプルに言おう。
ムカつくくらいイイ男だ。
そんなイイ男が、曲げた指を口元に当てながら、何やらブツブツ言いながら歩いている。
まるで黒魔術の呪文を唱えているように。
おかげで、その容姿から放たれるはずのイケメンオーラは、異質でドス黒い負のオーラへ変質しており、さらには歩く度にワカメ髪がモフモフと揺れる。
もはやイケメンなのか、闇属性なのか、ワカメなのかよく分からない、カオスな生き物で間違いないようだ。
とりあえず、この不審者にしか見えない残念なイケメンドクターを、『イケダークワカメ』と名付けてみた。
自分のネーミングセンスのなさに絶望しつつ、そんなイケダークワカメ。略して「イケダメ」が、自分の前を通り過ぎるのをぼーっと見ていると…
イケダメは急に「!!」という吹き出しが出たかの様に立ち止まり、俺の目の前の診察室のドアをバン!と勢いよく開け、カツカツと中に入り、ドン!とドアを締めた。
突然かつスピーディーな出来事に、「えっ?」と思わず目を見開く。
そして、何であんたらは動じない!!??
診察室の前のソファーに座っている母娘と爺さんは、そんな状況が起きたのにもかかわらず、全く何も気にせず普通にしている。
俺がおかしいのか!? いちいち驚いている俺の頭がおかしいのか!?
あのワカメは俺にしか見えていないからとかなのか!?
え~~あいつが俺に結果を教えてくれる医者って事なのか……。
率直に「不安」しかない。
診察室のドアのすぐ横にある、診察担当のネームプレートを見る。
名前は「伊月」
伊月先生か。
もうイケダメでいいんじゃないか?
第一印象があれじゃ先生って呼べない。
あれ? 伊月ってここの病院のなま……
そう思った瞬間。
「松田さん。松田ヒロさん。3番にお入りください」
かなりかわいい声。天使の囀りが院内に鳴り響く。
ようやくか…。あれ、俺が先に呼ばれちゃったけどいいのかな?
立ち上がって、なんとなく3人の前でわからないくらいの軽いおじきをして、診察室のドアを開く。
さて……観念してイケダメに会いに行こう。