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嘘のウソは「嘘」。  作者: しゅしゅしゅ
序章 10月の半ばに、死の宣告された。
3/10

人間観察とちょこっとトラブル

……………………。


……………………。


……………………。



5分は経っただろうか……まだ呼ばれない。


血液検査で呼び出されたって事は、相当ヤバい病気なんだろうか。

死ぬのかな俺。


いやまさかな。ガキの頃から風邪もほとんどひかない、超健康優良児で通っている俺がそんなわけない。


それでも、ここに来る前から膨らみ続けていたマイナス思考は、「病院」という場所にいることでさらに増幅中。


まずいこれはまずいな……


気を紛らわせる為に顔を上げ、先ほどの3人に目線を向ける。



会話の内容は全くわからないが、母親と娘が話をしていて楽しそうしている。


気品のある笑い方。透き通る肌。30代だろうか…いや20代でも全然違和感なしな美人なママさん。お母さんじゃなくてお姉さんとかなのか?


時折、キャピキャピしている感じが可愛らしく、雰囲気からきっと旦那さんにも周りにも愛されてるんだろうなというくらい人の良さを感じる。


娘の方は……中学生? 高校生? 最近の子は年齢が分からないな。

明るい茶髪にサイドポニーがよく似合っている。見た目派手なのに、おしとやかなお嬢様な感じ。

笑顔は幼く、あどけない顔。瞳が大きくぱっちり二重。まつげも長い。

そして非常に攻撃力が高い2つの丘が……


いや待て。あれ、ステ振り切りすぎじゃねーか!? 異常なくらい可愛いぞ!! おい!!

もしあの子が黒髪パッツンメガネっ子で、ちょっとでも気がある様な態度が見えたら……


「結婚しよう。話はそれからだ」


と全資産を投じて懇願させていただきたいくらいのレベル。

まさかアイドルとかじゃねーよな?



爺さんは……しわが気になる。


以上。


男の観察ほど、つまらないものはない。つまらん。まったくつまらん。


多分、母娘とは無関係な人なんだろう。すごい不機嫌そうに足を軽くゆすってる。


はぁあ…と、爺さんからまた母娘の方に目線を動かした瞬間。



唐突に娘の方と目があった。



────。



何故かお互いに目を離せなくなっていた。




おい。マジで。マジで。可愛い……


マジで可愛いすぎて死にそうだ。


って、何をうっとりしてるんだ俺!!!!!!



これはまずい!!!!!!!


視るだけでも痴漢扱いされる昨今。

この状況は彼女に、「本当にいやらしい人なんですね!!」と誤解され、棒だか槍だかでぶっ叩かれて殺されかけてしまうシチュエーションだ。


これが運命の出逢いになる可能性なんて、神と融合して何万年も眠り続けて、ふと目覚めたら俺好みのけもみみっ娘たちがわんさかいて、いつの間にか勝ち組ハーレム無双状態になってる。っていうくらいにまずありえない。


だが、このまま目をそらしたら、やましい事がある様に思われてしまうだろう。


かと言って、このまま目を合わせ続けていたら、よりリアルさが増して、


「お母さん…あの人の舐めるような視線が超絶キモい……!!」


なんて、状況がさらに悪化してしまう可能性が高い。


まさに危機的状況だ。




だが……。


どうにかして切り抜けなくては…


考えに考え抜いて、とっさにとった行動は……。



「こんにちは」



にっこり笑って挨拶をする。


何故そんな事をしたのかは自分でもわからない。

オワタヨ、オレ。



だが、奇跡は起こる。


娘さんはかなり驚いた顔をして、目をパチクチさせながら、慌ててぺこりと頭を下げ、


「こ、こんにちは……」


と気まずそうだが、返してくれた。


ヒャッハー!!!!! マジでありがとう!! キミのおかげでなんとかこの空気から脱出できたよ!!


ようやくお互いに目線を外すことに成功した。

……が、その後の沈黙が痛々しく感じるのはもう仕方がない事。


それから俺は、病院内にも関わらずおもむろにスマホをいじりはじめる。

もう、あの母娘の方は見れない。見たいけど、いや絶対に見ない。見たら終わる。


もうさっさと俺を呼んでくれ……先生……。


自分で作り出した気まずい空気からいち早く脱出したい……という願いがグルグルと頭を回っている中……


なんの前触れもなく、すーっと目の前を一人の男が通りかかった。

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