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TS賢者の弟子転生アリエス  作者: 空也真朋
第一章 舞い降りた賢者の弟子
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06話 神か悪魔か!? 路地裏にあらわれた謎の拳法使い

 空からものすごいバック転をして一人の男が舞い降りた。

 黒髪でがっしりと鍛えた体格。

 顔はというと、なかなかのイケメン。でもヒヤリとするような冷酷な目をしている。

 チラリ、と僕を見ると言った。


 「フッいい娘だ。ゴミ共にくれてやるのは惜しい」


 ヤバイやつにターゲットにされた!?

 そして今度はチンピラどもに向き言う。


 「おまえら、この娘は俺がいただく。のびてるボスを連れて消えろ」


 いきなり現れて何をいっているんだ、こ奴は。

 お前にいただかれるつもりなんて、まったくないんだけど!


 「ふざけんじゃねぇ! ガキ共を逃がしちまったんだ。そいつを売って金を手に入れなきゃ、俺たちが【組】に殺されちまうんだよ! てめぇこそいきなり出て来てぬかしてんじゃねぇ!」


 うわぁ。ヤクザの下っぱも厳しいんだな。

 後がない連中なら、簡単には引きさがってくれそうもないな。


 「そうか。ならば俺に痛めつけられてから、ゆっくり殺されろ。貴様らはゴミであろうと領民。俺が殺してやるわけにはいかんのでな」


 イケメンはそう言った瞬間、瞬間移動したようにチンピラどもの懐にいた。


 「ヒョォォォ、ハイィッ!」


 謎のかけ声から繰り出される拳や蹴りはまったく目で見えない。

 

 「ギャッ!」「うげッ!」「ぐわぁぁぁぁ!!」


 イケメンは素手でありながら回転し踊るような動きでチンピラどもの凶器をかわし、それぞれをほぼ一撃で沈めていく。

 それにしても、この動き。あれは………


 「ち、中国拳法!?」


 異世界なのに、その男の動きはカンフー映画で見た拳法にそっくりなのだ。

 なんとなく街並みや人種は産業革命時代のヨーロッパっぽいが、もしかして中国みたいな国もあるのか?

 やがて残り二名になったとき、チンピラは凶器を投げ出して片膝をついた。


 「ハァッ、ハァッ、わかった。女は諦めるから勘弁してくれ! こんなところで全員寝かされたら、身ぐるみ剥がされちまう」


 「ほう、勝手なものだな。さんざん多人数で俺を狙っておきながら、それが通るとでも?」


 「わかっている。だが、俺たちみてぇなクズは、そうやって生きていくしかないんだ! 頼むからゆるして………」


 パンッパンッ


 イケメンは片膝ついて頭を下げる二人を蹴った! なんて奴だ!?

 蹴られた二人は、他の奴らと同様に気を失った。


 「許すわけなかろう。身ぐるみ剥がされ無一文からはじめるんだな。ククク………さて娘」


 ビクッ


 「そのマント。どこで手に入れた?」


 「マント? これが何か?」


 ヴィジャスが身元を表すものだからつけていけと言っていたものだが。


 「それは行方知れずの賢者ヴィジャス卿の紋章だ。そのマントをつけた女がいると情報がきたのでな。そこでわざわざ出張ってきたというわけだ」


 「しかし、ここで僕を見つけたとは思えない。つけていたのか?」


 「ほう、わかるか。お前は治安の悪い裏路地などにはいって行った。誘い込んでいるのかと思ったが、突然ヤクザ紐付きのチンピラなどにケンカを売った。ワケがわからんし、面倒なので直接聞いてみることにした。何のためにこんな場所へきた?」


 「自分をさがしていたのさ。どこかへ落としたんでね!」


 そう言うと、踵をかえしてダッシュ!


 この男。敵か味方かわからないが、さっきのチンピラの扱いから見ると、大悪党に思える。

 それに僕はイケメンは嫌いだ。

 高校時代、クラスのアイドル的存在で僕も密かに好きだった子を、イケメンのチャラ男が彼女にして、教室でイチャコラしているのを見せつけられる日々を送ってからは憎悪すら抱くようになった。

 

 ゆえに逃げた。

 さっき使った風魔法と時空魔法を組み合わせた俊足だ!


 「フッ速さで俺に挑むとはな。もっとも勘違いをするだけの速さはあるか」


 「なっ!?」


 なんと、悪党イケメンは軽々ついてきた!

 しかもこっちは全速力なのに、奴はまだまだ余裕がありそうだ!


 「くそっ! だったら上だ!」


 そこらのガラクタや建物の窓枠をピョンピョン駆け上がって、家の屋根をかける。

 平衡感覚も強化してあるので、こういったこともできるのだ。


 「意外に身体能力は高いな。その程度の風しかあつかえないのに”空中歩行”か」


 なにぃ! まだついて来る!?

 奴のまわりには常に強い風がまとわりつくように吹いており、それが奴の移動を助けている。


 この悪党イケメン、風魔法使いか!

 風魔法の使い手は、雷魔法の使い手とならんでとんでもない俊足だと、ヴィジャスから聞いた。

 となると、単純な足の速さでは勝負なはならない。

 ならば!


 「あまり、つき合うわけにはいかない。ここらで…………っち!」


 スタッ

 僕は屋根を走るのをやめて、地面におりて再びかける。

 当然、悪党イケメンも地面へと飛び降りる。


 「いまだ!」


 ボコリッ

 僕は悪党イケメンの着地場所を狙い、土魔法で小さな穴をあけた。


 「なんだと、土魔法まで!?」


 悪党イケメンは穴を避けることもできず、足をとられてハデに転んだ。

 よしっ、これで逃げられる!

 ダッシュで大きく距離をあけようとしたが…………


 「空圧烈波!」


 ドコンッ


 「あうっ!?」


 悪党イケメンが必殺技っぽい叫びをすると、いきなり背中にはげしい衝撃を感じた。

 と同時、体が動かなくなり、地面が近づいてくるのを見た。


 ドサッ


 「やれやれ、戦闘武技まで使わせるとはな。いったいどれだけの魔法系統を扱えるんだ、お前は」


 動けなくなった僕は荷物みたいに抱えられ、何故か元のチンピラ共が倒れている場所までもどされた。




 そして元の場所で、僕はまだよく動かない体で座らされた。

 目の前に悪党イケメンは仁王立ち。


 「手間どらせたな娘。では話をきかせてもらおうか」


 「その前にアンタはなんでヴィジャスの行方をさがす?」


 「逃げた以上、貴様の質問にこたえる義理はない。あまり趣味ではないが、女向けの尋問でもしてやろうか?」


 女向けの尋問? それってエロスなやつ?

 イケメンでも男はいやあぁぁぁぁぁ!


 「やめろリューヤ」


 その時、別方向から凜とした女の子の声がした。

 見ると、13,4くらいの女の子がそこにいた。

 普通の町娘な恰好はしているものの、顔はかなりの美人でしかも気品がある。

 どこかしら高貴そうな家の娘みたいだ。


 「リューヤ。貴様のセリフ、いちいち婦女子をかどわかさんとする悪漢のような言葉だぞ。大事な手がかりに何をしているのだ、そなたは」


 「ちょ!? 出ないでくださいと言ったでしょう!」


 なぜかこの傍若無人な悪党イケメンは、その女の子には丁寧な言葉で話し、焦ったような素振りをした。


 「退屈でたまらぬ。それにお前に女子をまかせては、不埒な行いにおよびそうだ。故にその娘に話をきく役目は、わたし自らおこなう」


 その子は悪党イケメンを押しのけ僕の前に堂々と立った。


 「さて娘。わたしはこの領をあずかるフリハスト・エルディナン・レオニスター卿第一の公女、ビアンナ・エメ・レオニスターだ。そなたに聞きたいことがある」


 えええっ!? この子は領主の娘!?

 つまり、お姫様!?


 「ああっ名乗りまで! お忍びできているのに、誰かもわからないこの子に正体明かしてどうすんですか!?」


 「気にするな。この娘は良いやつだ。なにしろあの奉公人の子供達を体をはって守ったのだからな。お前は見捨てよう、などと言ったのにな」


 「当たり前です。姫様を密かに連れている最中に荒事なんかできません。少しはヤバいことやっている自覚を持ってください」


 このお姫さま、レオニスター伯爵とやらの娘なのか。

 だったら安心してヴィジャスの話ができるな。


 「ええっと、それでお姫様。僕にききたいことというのは?」


 「うむ。それはな、そなたのつけているマントについてだ」


 「マント? ああ、さっき彼が言っていたヴィジャスの紋章ですか」


 「そうだ、賢者ヴィジャス卿。かのお方は、意識不明になった弟子アリエスを目覚めさせる方法を探しに行くと言って旅立ったきりなのだ。そなた、そのマントを羽織っているということは、何かしらヴィジャス卿にゆかりある者ではないのか?」


 うん? 妙だな。

 ヴィジャスが行方不明になったのは封印されたからだ。

 その旅の最中に封印されたとしても、ヴィジャスからそんな話は聞いていない。


 「ビアンナ姫、ヴィジャス卿が旅に出たという話はどこから?」


 「おい娘。貴人の質問に質問でかえすのは無礼だ。それに貴様には、まだこちらの情報をあたえるわけにはいかない」


 「だが気になる。そなた、いったい何故そのような質問をする?」


 「ヴィジャスがそんな言葉を残せるはずがないんですよ。彼の行方がわからないのは、封印されたためなんですから」


 「なっ、なんじゃとッ!」

 「なにぃ!?」


 「封印されてはいますが、『声』だけは届けられるようになりました。そこでレオニスター伯爵かセイリューさんを連れてきてくるよう頼まれたのです」


 「父上をか! ならば早速屋敷に戻って…………」


 「ダメです。さすがに彼女の言葉だけで伯爵は動かせません。親父に出てもらいましょう」


 親父? そういえばセイリューという人は【武闘家】だと言っていたな。

 このイケメンはセイリューさんの息子か。


 「しかしヴィジャス卿が旅立ったという話が嘘言なら、まずいぞ! その話をしたのは、たしか…………」


 だがその先は、悪党イケメンがビアンナ姫の口を手でふさいで言わせなかった。


 「その件は俺が引き受けます。さて娘。俺らは急いで帰らなきゃならなくなった。明日朝、中央広場で落ち合おう。親父のセイリューも連れていく」


 「ああ。ヴィジャスの元へ案内する」


 「最後に自己紹介でもしておくか。俺は武闘家セイリュー・タオロンの息子リューヤ・タオロンだ。お前は?」


 何と名乗るか少し迷ったが、結局ヴィジャスのくれた身分を使うことにした。


 「賢者ヴィジャス弟子のアリエス」




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[良い点] 大変面白く読ませていただいています! 第6話文末の次回に繋がせる「わくわく感」いいですよね。 これからも楽しみにしております。 内容への感想はもう少し展開が進んだら改めて書かせて頂きます…
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