58話 第二章完!!
どうすればみんなを助けられる化考えたとき、ここに来たそもそもの目的が、ヴィジャスの封印をとくことを思い出した。
そこでトゥーリに頼んでそれをしてもらったのだが、その前に自力でで飛んできた……のだが、シンとフェイルーは残ってしまった。
そこで封印をといたヴィジャスと僕は、彼らを助けにおりてきた。
僕まで来たのは、倒れたフェイルーを診察するためだ。
「い、いったいどういうことだ!? どうして、敵のボスだった女がおれ達の味方を!?」
「あ、それは俺ちゃんもききたい。どうやって、こんな短時間でトゥーリの心を変えることができたんだ?」
「できちゃったんだから、しょうがないって。よし、フェイルーの応急処置はできた」
フェイルーの方が終わってシンの体を見ると、やはり彼の方も重傷だ。
とにかく出血だけでも止めないと。
「シン、君の方も応急手当だ。いま回復魔法で癒やすから」
「お、おう! ははっ」
と、そこにトゥーリが割って入った。
「レベル1でどうにかなる傷ではないでしょう。私には完全回復があります。まかせてください、アリエス様」
「えっ? あ、いや待て! おれはアリエスに癒やされたい!」
「あら、そうだったんですか? でも、すみません。もう治してしまいました。アリエス様、そっちの娘もこちらに」
「なぁ!? ホ、ホントに全快している!?」
凄い!! あの重傷が一瞬で回復した!
もう僕の異世界ドクターは廃業だ!!
そんなわけでフェイルーの方も、さっきの処置がまるで無駄になるくらい完璧に治してしまった。
「ヴィジャス、アリエス様達を連れて上から脱出しなさい。ここは私の役目です。彼らをこんな姿にした責任として、私が彼らすべてを終わらせます。それとこれを」
トゥーリは何やら小さな棒のようなものをヴィジャスに渡した。
「魔法鍵です。それで最上階にある私の部屋の資料を入手できます。それで、この企てに協力した貴族の証拠も手に入るでしょう」
「……ありがと。一つだけ教えてくれ。君はラドウのためにこんなことをしたって言ったね。いったい今ラドウはどんな状態になっているんだ」
「……それも資料で知ってください。私の口から言うのは……つらいです」
「悪かった。じゃ、俺ちゃん達はもう行くよ」
「ええ。ここでお別れです」
トゥーリはそう言って僕らに背を向けた。
そして魔人の群れに手をかざした。
「ふふっ醜いですね。まるで私の心のよう。私が道を誤ったのは、兄ラドウのことだけではないのでしょう。強力すぎる”生命を操る力”で、命の重さを忘れてしまったようです」
ドッゴオオオン ドッゴオオオオン
トゥーリは魔人を一体ずつ白い爆裂魔法で破壊していく。
ヴィジャスは大きな風魔法で僕らを浮き上がらせながら言った。
「行こう。ここの仕事はトゥーリのものだ。俺ちゃん達には生きてやらなきゃならないことがある」
みるみる下に遠ざかっていくトゥーリ。
観覧所に僕らが着いたとき。
トゥーリは、深い淑女の会釈で僕を見送った。
自然と、体はそれに応えるように淑女の会釈をしていた。
トゥーリの部屋からの資料は何やらもの凄い衝撃的なものだったよう。
ヴィジャスが僕らに見せてくれなかったから、どう衝撃的なのかわからないんだけどね。
まぁ、その持ち出し、研究所を出たときだ。
道中にお揃いのつばの長い帽子とマントを羽織った一段が待っていた。
「ちっ、こいつらか。そういや、いたな」
それはアミヴァ卿が連れていた家臣団。
研究所の中にはいなかったけど、こんな所で待ち伏せていたのか。
一戦はじまるかと、皆、戦闘態勢をとるが。
「おおっ、レオニスター伯爵の方々ですな。皆様方、若はどうなったかご存知でしょうか?」
「はぁ?」
なぜかフレンドリーに話しかけてきたので、みんな思わず顔を見合わせる。
「『こういった侵入捜査は素人がいては邪魔になる』とおっしゃってな。我らにここから逃げる者共の捕獲をお命じになったので、待機しているのだがな。いくら何でも遅すぎる」
「若も待機していただけばよいものを。若さゆえ、ご自分は飛び込んでしまわれたのだ」
「若は正義感のお強いお方だからな。それ故のはやりも考えられる」
「であれば! 手遅れになる前に、我らも加勢に行くべきでは!?」
………………何言ってんだコイツら。
と、しばらく頭の中が白くなったが。
しばらくして、やっと状況がわかった。
アミヴァ卿は、家臣には自分がここの研究所に関わっていることを知らせてないのだ。
それにしても、どれだけ表裏が激しい奴だったんだよ!!
「……ああ、アミヴァ卿は残って戦っているよ。敵が思わぬ強さだったんでな。こちらは負傷が相次ぎ、撤退してんだが、アミヴァ卿は殿を引き受けてくださった」
え? リューヤ、何言ってんの?
「な、なにぃ!? 糞っ、やはり無理にでも同行すべきだった! 皆の者、急ぐぞ!!」
「応ッ! 若をやらせるな! アミヴァ侯に顔向けできんぞ!!」
そう言って、アミヴァ卿の家臣団は研究所へ突入していった。
もう、とっくに、色々な意味で誰にも顔向けできなくなってんだけどねぇ……。
「……いいのかなぁ」
その大事な若様は、僕がヤッテしまいました。
僕はあの人達が哀れだったが、みんなはあっけらかんとしたもの。
「あの人達も、主の正体を知るのは後のほうが良いでしょう」
「それにおれ達に説明してやる義理はないしな。さんざん騙された身だしな」
「それじゃ、レオニスター領へ帰るよ。帰ってからもやることが山ほどあるだろうしね」
出てきた資料からは、この研究所の研究には、この国の主要な貴族が多数加担していることがわかったらしい。
これを国王に見せた場合、どのくらいの混乱が起こるかわからない、とのことだ。
「ヴィジャス、これからどうなるんだ?」
「さあね。でも、君も覚悟した方が良いよ。資料にはホクトゥシン家を実質支配している女傑の名前もあったし。場合によっては君も公爵家当主にされるかもしれない」
「そ、それはカンベンして欲しい!」
様々な不安はあっても、立ち止まることはできない。
ともかく、誰も欠けずに帰れるんだ。
僕らはレオニスター伯爵領への道を急ぐのだった。
本作品はここで一旦、完結します。
理由はこの作品で敵キャラに聖女を出したのですが、それ以来聖女が好きになって、聖女をヒロインにした新作を書きたくなってしまったからです。
なので新作。
”聖女様がついてくる~貴女は田舎冒険者の俺には重すぎます~”
もよろしくお願いします。
聖女熱が冷めたら、続きの完結編を書きたいと思います。




