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TS賢者の弟子転生アリエス  作者: 空也真朋
第二章 風雲竜虎! 忍び寄る宿命!!
56/58

56話 賢者の弟子必殺の暗殺拳! 外道貴族よ・きさまの処刑はすでに完了だ!!  

高位貴族とはいえ、悪には報いを与えるのが賢者のさだめ。 

卑劣なアミヴァ卿に、ついにアリエスの怒りが爆発する!


CV・千葉繁

 

 「フフフわたしは選ばれし血統の者。きさまは、貴族の圧倒的パワーで蹂躙される愚劣な庶民の悲哀をとくと味わうがよい」


 ゴキッ ゴキュッ


 アミヴァ卿は悪魔細胞で巨大化した肉体をみせつけるように、関節を鳴らす。

 さながらその様は、大型肉食獣が小動物をいたぶるかのよう。

  

 されど『黙ってやられる』なんて選択はない。

 頭のツボを突いて高速思考モード発動。

 まずは初撃をかわす!

 ニャギとの戦いの経験を生かせ。

 奴の戦いのクセをつかむんだ!!


 「フハハハハ、いくぞお。なぶり殺しだ!!」


 来た!!………………あれ?


 ドゴオオオオオン


 アミヴァ卿は猛ダッシュして剣を振り下ろす。

 その剣撃は地面を大きくえぐった。

 でも?


 「フハハ、逃げるのはさすがに上手だな。さぁ、ドンドンいくぞぉ!」


 アミヴァ卿は破壊力のある剣撃を次々とくり出す。

 僕はそれを(だま)って(かわ)し続ける。

 やがて観覧所の端に追い詰められた形になった。

 この後ろは、千メートルもの奈落。

 さらにその直下は魔人どもに埋め尽くされている。


 「フハハハハ、さぁもう逃げ場はなくなった! この剣にかかるか、その後ろの地獄へおちるか。好きな方を選べ!」


 「そうですね……では、剣の方でお願いします。介錯いただけますか?」


 「フン、もっと怯えた声をだせんのか。だが『一撃で終わらす』などと慈悲を与えるつもりはない。切り刻んで、なぶり殺しといこう!」


 ブゥゥゥン


 アミヴァ卿が無防備に近づき、横凪ぎに浅く剣を走らせる。

 僕はそれを大きくジャンプしてかわす。

 頭上をすれ違いざま、アミヴァ卿の両耳を叩いて飛び越した。


 「クゥッ、こしゃくな! いつまで悪あがきをするつもりだ!!」


 「……アミヴァ卿」


 「ん~~? なんだ、命乞いか。だったら、そこで這いつくばって……」


 「遅いよ」


 僕はこの戦闘が始まって以来、感じていたことを口にした。


 「な、なに? アミヴァ流騎士剣術を会得したわたしを遅いというか!」


 「剣術? そんなものは武術の動きじゃないよ。上半身と下半身の軸がバラバラ。ひとつの動きが終わったら、次の動きにつなげることも出来ていない」


 リューヤとの修行で、僕がこんな動きをしたら思いっきり蹴飛ばされる。

 ニャギと同様の激闘を予想して迎撃態勢をとっていたのに、遅すぎて思いっきりズッコケたよ。


 油断させて『そんな眠っちまいそうなスローな動きで倒せるかぁ!』と雑に攻撃させて、『かかったなマヌケめ!【稲妻空裂刃サンダースプリットアタック】!!』

 みたいな策を警戒してたけど、あれが本当に本気の動きみたいだ。


 「バカな! あらゆる敵を蹂躙するアミヴァ流に、このパワーが合わされば無敵のはず! それが……それが!!」


 ああ。【アミヴァ流剣術】とやらは、据え物を壊すだけの、貴族様お遊びの剣なのか。


 「まぁ【アミヴァ流】とやらはともかく、その体で動いたのは多分初めてなんだね。パワーに振り回されて、まともに動くこともできていないよ。とても命乞いしたくなる気分にはなれないな」


 戦闘(バトル)でグチャグチャになった髪に櫛をいれながら言う。

 そんな僕の舐めた態度にアミヴァ卿は激昂した。


 「おのれ! もはやなぶり殺しはヤメだ!! この体の能力(ちから)はパワーだけではない。魔力も極大にあがっているのだ! みろぉ!!」


 ブオォォォォ


 アミヴァ卿の周囲に、ものすごい圧の魔力が生まれた。


 「『深淵にて燃ゆる亡者灼く紅蓮なるもの、漆黒たるもの。這い出て空を焼け、地を舐めろ。あまねく全てを地の底に引きずり込めぇ! 【煉獄召喚呪文コーリング・インフェルノ】!!』 ふはは、どうだレベル5の極大魔法。悪魔細胞の力は人間最高位の魔法士にもなれるのだぁぁ」


 アミヴァ卿の頭上に掲げた両手から、極大の”炎”の魔力が生まれる。

 その熱気は、さながら太陽のよう。


 「すごい………すでに終わらせておいて良かった」


 「……なに? うぐっ!」


 僕もさんざん学習した。

 こんな油断ならない奴に、次の行動を許すべきじゃない。

 さっきも、少年マンガみたいな『勝負』という形にこだわらずにさっさと倒しにいってれば、みんなを危機におとすこともなかったかもしれないのに。

 いまイキったことを言ったのは、外道貴族の処刑は完了しているからだ。


 「あ……あっ!? わたしは立っているのか倒れているのか? 貴様、いったいなにをしたぁ!?」


 アミヴァ卿の足がプルプル震えだした。


 「さっき耳を叩いたろう? あのとき内耳(ないじ)の【前庭器(ぜんていき)】という器官をマヒさせた」


 「な、なんだそれは!」


 「前庭器(ぜんていき)は体の平衡感覚をつかさどる器官。ここが()かなくなると、人間は立っていることができなくなるんだ。でも、そこで倒れたら大変だね」


 『後ろをみろ』とばかりに指をさす。


 「まっさかさまだよ」


 「うわぁ!! さ、ささえてくれ足を! ささえてくれぇ!!」


 足はすでにガクガクガク。

 体が傾いていく。


 「おいおい、魔法がおろそかになっているよ。そんな大呪文を暴発させたら大変だ。しっかり制御しないと君は」


 手を握って開く。


 「ボン! だ」


 「ひょえぇ~~!!」


 魔力の圧が、アミヴァ卿を押し潰さんばかりに膨らんでゆく。、

 臨海は近い。

 ”魔法”という形をとらずに集中された魔力は、そのまま術者の体内で暴発するだろう。


 「ひええ~っ! い、いやだ、たすけてくれえ!! 天才のわたしが何故こんな目にぃ! あひゃぁぁぁ! お、おちるぅぅぅ!!」



 ズルッ



 ついに落ちた。


 「うわらばはぁぁ!!!」


 ドッゴオオオオオオオオン


 アミヴァ卿は魔人の坩堝に叩きつけられた瞬間に大爆発。

 周囲の魔人どもをまとめて吹き飛ばした。

 その場にできた空白地帯に、リューヤたちみんなが駆け込んでくるのが見えた。


 「あの外道貴族も、最期に少しだけ役にたったね」


 さぁ、みんなをどう助けよう?




 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 49話より、 > 壁の一画の上。僕らの背7、8倍くらいの高さの場所に広い観覧所があり、そこに立派な身なりをした公子アミヴァ卿がいた。 と、初出の描写で「僕らの背7、8倍くらいの高さ…
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