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TS賢者の弟子転生アリエス  作者: 空也真朋
第二章 風雲竜虎! 忍び寄る宿命!!
55/58

55話 地獄の門は開かれた! 恐怖の魔人はあふれ出す!!

 聖女トゥーリは、自分のどのようなダメージも、強力な回復魔法で瞬間的に治すそうだ。

 つまり【回復魔法】は通じる。

 ならば、彼女を討つ得物は【回復魔法】と決めた。 


 彼女にしたキスは、まぁオマケだ。

 快感で動けなくなっていたが、それだけで倒せるほど甘くはない。


 本当の狙いは僕の額が押しつけた彼女の額。

 その裏には脳の新皮質【前頭葉】という部分がある。


 魔法を封じられたとはいえ、体内をめぐらす分には使える。

 なのでシンの回復でさんざん鍛えられた【内燃接触魔法】でこの部分を集中的に癒やした。

 微弱な回復魔法で体内器官にはたらきかけ、器官の機能を上げるのは僕の得意技。

 彼女の前頭葉の機能を大きく向上させた。


 脳の【前頭葉】という部分は、人間らしさのような高次判断を司る部位なのだ。

 この部分で行いの善悪の判断をしたり欲望を抑えたりする。

 いわば人間が持つ【正しい心】とは、ここから生まれるといって良い。

 そしてこの部分の機能が向上した結果、トゥーリは目をそらし続けてきた自分の”悪”の行いを強制的に考えさせられることになった。

 結果、本来は優しかった彼女の心は、罪悪感でズタズタに切り裂かれたのだ。



◇ ◇ ◇


 「わた……わたしはなにをしたの?」


 僕は子供のようにシクシク泣き続けるトゥーリを、悲しい気持ちで見下ろした。


 「小さい頃と逆だね、トゥーリ。わたくしはいつも、あなたの側で泣いてました」


 ―――?!!


 勝手に口から言葉が出た!?

 そうか、これがこの体の本当の持ち主【アリエス】か。

 彼女に代わり、元主としての言葉をかけておくか。


 「でも、手は貸しません。それはあなたの罪なのだから。それは大切な痛み。それを忘れずに生きていきなさい」


 そう言って冷たく背を向けた。

 優しくしちゃいけないって、つらいね。

 それにまだ、彼女の相手をしている暇はない。

 僕はその場にいるもうひとり。

 呆然としているクズへと向き直った。


 「ではアミヴァ卿。さんざん(なぶ)ってくれたお礼をさせてもらいます!」


 ためしに魔法で電気を出してみると、「パチパチ」と問題なく出せた。

 どうやら【魔法封じの結界】は解除されたようだ。

 これで僕ひとりでも、この坊ちゃんを捕まえることができる。


 「フッ……フハハハ。アリエス嬢、たしかに貴様を甘く見ていた。だが! トゥーリ殿がいなかろうと、凡人がわたしに勝てるかぁ!!」


 「たしかに策でハメる手腕は大したものですね。だから何もさせません。問答無用の速攻で倒させてもらいます!!」


 「それが遅いというのだ! そんな言葉をかける前に、かかってくれば良いものを。魔人ども、みんな出ろ! 下の奴らを皆殺しにしろぉ!!」


 「な、なに!?」


 ドォォン


 轟音に下を見ると、四方の門が勢いよく開け放たれた!!

 そしてそこから異形の魔人どもが一斉にあふれ出し、みんなに襲いかかる光景が見えた。

 その数は百体を軽く越え、広い闘技場はたちまち魔人に埋め尽くされる。


 「アミヴァ卿………こ、このっ!!」


 「ウワッハハハハ! 憎しみに歪んだ美貌もまたいい。どうだね、仲間が喰われていく様を仲良く観覧するというのは」


 「ま、魔人どもをとめろ! でなければ本当に殺す!!」


 「フフフ無駄だ。あの魔人どもは、解放命令を出した瞬間、殺戮獣へと変わる。もはや誰の命令もきかず、欲望のままに、生命が尽き果てるまで暴れ続けるのだ。ウワーッハハハハハハハハハ!!」


 「み、みんな………」


 計都五拳のみんなは、ヴィジャスを中心に円陣を組んで必死に抵抗をしている。

 魔法が使えるようになって元の戦闘力を取り戻したとはいえ、あの数。

 加えて魔人は脅威の再生力をもっており、殺しきることはできない。

 いったいどれくらい保つのだろう?


 「そして! 貴様もこのわたしには勝てん。わたしは天才だ~~!! 泥人形(ドドル)どもを使って究明された悪魔細胞の成果は、すでに我が肉体にも宿しておるわ! みろっ!!」


 「な、なにっ!?」


 いきなりアミヴァ卿の肉体が不自然に膨らんだ。

 それは正に、悪魔細胞を植えつけ魔人と化した者の特徴!


 モコモコモコ


 「ウハハハ!! アミヴァ流騎士鍛錬法によって鍛え抜かれたわたしは、魔人になったことでさらに強靱になった! この肉体の能力は、ニャギのものとほぼ同じなのだぁ!!」


 な、なんっだってー!?


 「そして! この天才の目をもってすれば、貴様の弱点を知ることなど容易い。不死身の魔人を倒し、トゥーリ殿をも戦闘不能に追い込んだ貴様の技だが、接近し接触しなければ発動しないと見た」


 鋭い! 本当に天才だ!!


 「つまり体に触れさせず切り刻めば良いだけのこと。フフフ、この肉体なら簡単すぎる作業だ」


 アミヴァ卿は、剣をヒュンヒュンと(うな)らせ、その怪力をみせつける。

 くそっ。ニャギと同格の相手を、僕一人でどうにかしなきゃなんないのか。

 下では刻一刻と、みんなが魔人に潰されそうになっているし。


 さて、どうしよう?

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