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TS賢者の弟子転生アリエス  作者: 空也真朋
第一章 舞い降りた賢者の弟子
19/58

19話 魔人プードル! それは悪夢の顕現!!

 完全に実体化し、そこに立った魔人。

 それはからくも人型だが、成人男性の三倍もの体長をしている。

 だがその巨大な体躯は異常に筋肉が盛り上がっており、皮膚は鱗のようなもの、棘のようなものが一面に生えている。

 そして顔は目二つ、鼻、口などは人間と同じものではあるが、醜悪であり、恐るべき形相をしている。

 そうして顕現したその怪物は…………


 「ア、アァ、アニギィィィィィィィィ!!!」


 ――――――――?!!


 そう叫んでいきなり大泣きした。


 グワシィッ

 その怪物に構えていたリューヤだったが、予想に反し、怪物はジャギルを掴んだ。


 「どどど、どうじでオレをアイヅに売っだぁぁぁぁ?! 信じていたのにぃぃぃぃ!!!」


 「すまなかった弟よ。だが仕方がなかったんだ! あの方がどぉしても、おまえの強靱な体を所望してなぁ。団のためにも断りきれなかったんだ!」


 「ウ、ウ、ウワアァァァァ!!!」


 メギメギメギィィィィ

 プードルはジャギルを握り潰さんと握力をこめる。


 「グ……グウゥ………だ、だが弟よ。おまえのことは一日たりとも忘れたことはなかった! おまえのいない日々はまるで地獄のようだったぞ!」


 「ウ………エ……そうなのか?」


「ああ。だからおまえを助けるためにあらゆる事をした! あのお方の犬となり、絶望的な仕事にもすすんで志願し、駆けずり回った! ただ、おまえを助けんがために!」


 「オ、オオゥ!」


 「そうして働きが認められ、ようやくおまえを解放することができた! ふたたび日の光を見せてやることができたのだ! もう思い残すことはない。ひと思いにやってくれぇ!」


 「ウ………ウゥあにぎ、そんなにもおれのことを?」


 「ああ、愛してるぞ弟よ。プ-ドルよぉ!」 


 「ウオオオオオオ、あにぎぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」


 「プードル! 許してくれるのか!? おまえを闇の世界に閉じ込めたおれを。絶望の底につき落としたこのおれをぉぉぉ!」


 「うんっ、うんっ。あにき、ありがとぉぉぉ!」


 「いいいんだ。泣くなプードルよ。これからはまた兄弟仲良く盗賊稼業をやっていこう」




◇◇◇

 ――――――いったい俺は何を見せられているんだ?


 リューヤは、ジャギルと怪物の一連の三文芝居を唖然呆然として見ていた。

 思えばこの間に姫を連れて逃げるなり、何か仕掛けるなりすべきだった。

 だがあの極悪面の巨大な怪物がいきなり号泣したり、強面ジャギルが『愛してるぞ弟よ!』とか行ってまた泣き出したりと、怪物の出現よりよっぽど信じられないものを見てしまった。

 そのせいですっかりそんな常識がどこかへと行ってしまったのだ。

 だが、そんな三文芝居でも見料はしっかりとるのはさすが盗賊。


 「さあ、あの男を殺せ! あいつこそ、おまえを再び闇の世界に閉じ込めんとする悪漢! おまえの真の自由のためにも、完全に潰すのだ!」


 「くそっ。前置きがやけに長かったが、結局やるのかよ!」


 その言葉にはじかれ、すぐさま戦闘の構えをとるリューヤ。

 格上の相手に後手にまわることは死を意味する。

 故に相手の体勢の整わぬうちにすぐさま攻撃をしかける。


 「ほあああああ!」


 渾身の風圧連弾正拳。大斬撃。目、咽、金的などの集中撃。

 もちろん、きっちりジャギルへの攻撃も忘れない。


 「くそっ、やはりダメか!」


 されどやはりというか、リューヤの与えたダメージは瞬時に回復されてしまう。

 そして圧倒的な腕力は巨大な質量の腕や足を高速で動かしてリューヤを脅かす。

 この怪物の前にメギオと戦っていてよかった。

 でなければここまでの不死身は予想できず、この圧倒的な力につかまってしまったろう。

 やがてプードルは一旦攻撃をやめた。 


 「素早いな。アニキ、ちょっとさがっててくれ」


 「ああ、たのんだぜプードル」


 地面にそっとおろされたジャギルは素早くプードルから離れた。


 「ムハハハハ風使い。テメェはもうお終いだぁ! さっきまでのプードルは、おれを抱えていたために大技は出せずにいた。が、おれを離したことによりその枷は外れた! その意味をジックリ知るがいい!」


 「クッ盗賊風情が!」


 リューヤもそのあたりは計算して戦っていた。

 あえてジャギルを攻撃することにより、怪物の動きを鈍らせたのだ。

 だが、怪物にはあまりに自分の攻撃がきかなすぎる!

 それでも、攻めの姿勢は崩すわけにはいかない。

 ここで負けることは死を意味し、そしてビアンナ姫を連れ去られることを意味するのだ。


 「うおおおおおおっ!」


 最大の超加速。その道中で跳躍し、八方を飛び回り敵に的を絞らせない。

 そして首の鋼線を巻きつけ、渾身の力で引き抜き断絶をはかる。

 だが…………


 「ぶわーーーーか」


 ドッゴオオオオオオオオ!!!


 その言葉とともにリューヤはあっさり吹き飛ばされた。

 いかに超スピードで自分の姿を消そうと、すべて無意味。

 プードルはリューヤの気配でだいたいの位置を予想したのなら、圧倒的な魔力の衝撃波を放つだけでよかったのだ。

 いかに人間が技を研鑽しようと、圧倒的な力の前には無意味。

 それが魔人。


 「うわぁっはははは、よくやったプードル! さぁビアンナ姫をいただくぜぇ!」


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― 新着の感想 ―
[一言] >姫をいただくぜぇ ところがここには女が3人いて・・・
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