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TS賢者の弟子転生アリエス  作者: 空也真朋
第一章 舞い降りた賢者の弟子
18/58

18話 計都風刃拳! 俺の拳は地獄へ最速直行!!

 魔法使いの話を書こうと思って書き始めたのに、途中で【北斗の拳】にハマって拳法使いの話になってしまって。もうなにがなにやら。

 ◇◇◇

 リューヤは貧民街のあちこちにいるモンスターが一斉にこの場に集ってきているのを見た。

 そして、その中心には人間の盗賊団の生き残りがいる。

 そしてそこには、わざわざ戻ってくるはずのないあの男がいた。


 「ちいっ、狂犬どもが。いいだろう。そんなに俺に殺されたいなら、一人残らず地獄へ送ってやる」


 リューヤはこの家の者らしき小僧をチラリと見る。

 迫り来るモンスターの大群を前に、震えながらも小剣(ショートソード)をしっかり構えている。

 こいつ、どうやら俺が来るまでアリエスと一緒に戦っていたらしい。

 なら、少しは使えるか。


 「おい、小僧」


 「えっ、えっ、おいら?」


 「この家に入る者あらば、体を張って一瞬でもとめろ。そうすれば俺がしとめてやる」 


 「え、ええー! 逃げないのかよ!? あんなのどうしようもないじゃんかよ!」


 小僧はなにかわめいたが、リューヤはかまわず首をコキコキ鳴らして表へ出た。

 すでにモンスターはこの家を前にずらり居並び、その中心には人間の集団。

 そしてその大将格の者こそ、あの最凶悪党の髭面。


「【凶月の黒犬団】首領ジャギル。きさま、なぜここに?」


 「グフフ……それなりに逃げる奴は見慣れているんでね。おれらにビビッて逃げるのか、それとも大事なお宝が心配で逃げるのか。テメェは明らかに後者だ。そのボロ家にいるんだろう? 次期領主のビアンナ・エメ姫が!」


 ジャギルの的確な指摘に、リューヤは顔をしかめた。


 「フン、『黒犬』を名乗るだけあって鼻はきくようだな。まんまと付つけられたことも、少し傷ついた。だが、それが命取りだ。きさまらは死ぬためにここへ来たのだ」


 そのリューヤの言葉に、ジャギルのまわりの手下は「ウプッ」「ククク……」と失笑をもらし、それは大爆笑となった。


 「うあっはは、バカめー! これだけの数のモンスターを相手に、一人でどう戦うというのだ。死ぬのはテメエのほうだ!」

 「これだけのモンスターになぶられたら、骨も肉も食われて跡形も残らんなぁ~。残念だぜ。死体を芸術的に飾り立ててさらしてやれんのはなぁ~」


 ジャギルは大物ぶって鷹揚に命令を出した。


、「いけ、モンスターども! その男を徹底的につぶせ! 手下どもはビアンナ姫を引きずり出せー!」


 手下たちはリューヤをあざ笑いながらその脇を駆け抜ける。


 「ヒャハハハ思い知ったか! ジャギル様はテメェなんぞと頭のできがちがうのよ!」


 「おまえらは頭自体ないがな」


 「ふへっ?」


 ――――ズルーゥ………


 手下たちのその頭はいつの間にか全員きれいに切られ、ずり落ちて地面におちた。


 「な、なに! いつ切られた!?」


 「俺の拳は人間ではとらえることはできん。ジャギルよ。きさまに計都風刃拳の神髄を教えてやろう。醜い兵隊とともに地獄へ行け!」


 「くっ、まずは奴を殺せ! モンスターども、やれッ!」


 一斉にモンスターがリューヤを目がけて押し寄せる。

 リューヤはそのモンスターの大群へと躍りかかった。


 「計都風刃(けいとふうじん)走虎疾風(そうこしっぷう)!」


 ゴブリンの群れは、駆け抜けたリューヤにバラバラに切り裂かれた。


 「計都風刃(けいとふうじん)飛鳥扇風(ひちょうせんぷう)!」


 空から飛来する鳥形モンスター共は宙に舞ったリューヤにまたしてもバラバラになった。


 「計都風刃(けいとふうじん)大峰強風斧(たいほうきょうふうふ)!」


 リザードマンの群れはリューヤの手刀で硬いうろこを砕かれ斃れていく。



 モンスターの大群は、リューヤの人間離れした戦闘力を前に次々数を減らしていった。

 その鬼神のような戦いぶりを見て【凶月の黒犬団】の生き残りは唖然とした。


 「な、なんだあの男! どうしてここまで強い!?」


 「フフ………どうやら拳法使いという人種は人間ではないようだ。こうなれば最後の手段だ。弟【プードル】を解き放つとしよう」


 ビクリッ

 手下たちは思わず顔を見合わせた。


 「しょ………正気ですかいジャギル。やつを出したら、どういうことになるか」


 「腹をくくれ。このまま奴と戦っても死ぬ。いちかばちかやらなきゃならねぇんだ」


 「し、しかし真っ先に殺されるのはジャギル、アンタだぞ! プードルは、自分をあのお方の実験台に売ったアンタをうらんでいる!」


 「そうだ。そうして弟は悪魔の能力を身につけ魔人と化した。が、なーに。おれはプードルの性格は熟知している。魔人になろうと、奴を手なずける方法はある」


 手下どもはふたたび顔を見合わせうなずき合う。

 そして恐慌にかられたようにジャギルに飛びかかる。


 「や、やめろー! おれたちは、もうあいつににあいたくねぇー! あんな奴、飼いならせるわけがねぇ~!」


 「うるせえ!」


 その手下どもをジャギルは無慈悲に大ナタで斬り殺していく。

 悪党どもの仲間割れが終わりジャギルがその暴で制圧した頃、リューヤはあらかたのモンスターを片付け、その場にあらわれた。

 リューヤはジャギルが粛正した手下どもを興味深げにながめた。


 「仲間割れか? 悪党の末路にふさわしいなジャギルよ」


 「なぁーに、ちょっとした教育さ。テメェの相手をするにゃなんの問題もねぇ」


 「ほう。この後におよんで何を教える? 『処刑台では処刑人の言うことをよくきいて、速やかに処刑されましょう』か?」


 「さあーて。処刑台の作法なんざとんと知らねぇな。なにせ行ったことがないもんでね」


 リューヤは追い詰めたはずのジャギルが、いまだ余裕なのを不思議に思った。

 なので会話をしながらその場を注意深く観察する。


 「ジャギル、きさまを地獄へ送る前に答えてもらおう。きさまがこれだけの魔物を操る力を得たのは、背後に魔法師がいるな。そいつはどこの誰だ?」


 「へっへっへ。そいつはいえねぇな」


 「フン…………では生け捕りにして拷問でもするか。面倒なことだ。ではついでにもう一つ。【凶月の黒犬団】にはもう一人、有名な奴がいたな。きさまこと【知のジャギル】に並び、その弟【暴のプードル】。そいつはどうした? なぜ今になっても出てこない」


 ジャギルの実の弟であり団の戦闘隊長を務めているはずのプードル。

 その並外れた暴力は有名であり、平民は百五十人以上も殺し、その捕縛にあたった騎士、衛兵等はみな叩き潰されたという。


 「グフフ……知りたいか?」


 「いや、聞くまでもないことだったな。今になっても出てこないということは、そういうことだろう。大方、きさまの手に余って消したといったところか」


 「へっへっへ。まぁそう言わず最後まできいていけ。『手に余った』ってところまではその通りだ。が、弟は死んでいねぇ」


 「なに?」


 リューヤは追い詰めているはずのジャギルに不穏なものを見た。

 そして何気なくしたこの質問が、なにかの核心をついたものだとも感じた。


 ――――――――ボゴンッ


 「うっ!?」


 突然に、何もない場所から巨大な影のようなものが現れた。

 それはだんだんに存在を明確にし、次第次第に実体へと変わっていく。


 「なんだこれは? ジャギル、きさまの切り札か!」


 「グフッ、グフフ……弟プードルだ。亜空間に閉じ込めておいたのを、今、解放してやった」


 「亜空間? なんだそれは………いや、きいたことがある。たしか賢者ヴィジャスが閉じ込められているという謎空間か! だが、この巨大で醜悪な姿は何だ? 人間とは思えんぞ!」


 「弟の暴力は強力無比ではあったがな。あまりに部下を殺しすぎるんで手に余ったのよ。で、”あのお方”の魔人化の実験にくれてやった。魔人になったのを封印されたまま返していただいたんで、切り札にしたってわけだ」


 「魔人だと? ハッまさか!? メギオがなったアレか!」


 「メギオにはいちおうの完成品を渡してやった。10日ほどで人間の意識はなくなり、完全なバケモノになっちまうシロモノだったがなぁ」


 「なに? やはり相当の術師がいるのか。どうしても、そいつの名を聞きださねばならんな」


 「フフフできるかな? プードルはあのお方の実験により、悪魔の力を極限までに人間の体に宿すことに成功した! その力は、たとえ一国の軍隊であろうと斃すことは不可能!」


 ――――――――ウウウウウウウウォオオオオオゥ…………


 巨大なその影は唸り、まがまがしい鼓動が周囲に不気味にひびく。


 「いけーーハハハハハハ! 今こそよみがえれ、魔人となった弟プードルよ。悪魔(デビル)の化身よー!!!」

 


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