デイスリー 2
未完成です、現段階で纏まっている感じですが。
読まない方がいいかもしれません。
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完成しました、また修正が入るかもしれないですが、お待たせして申し訳ありませんでした。
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「お父さんが森に行ったまま帰ってこないの」
森というのは、俺がいつもラビキオを狩っているあそこの事だろうか?
「森ってこの町から東に行った所の?」
「分からない、ヒック、お父さん森に行ってくるって、言って、ヒック、家出て行っちゃったから、」
少女の嗚咽混じりの説明ではあまり要領を得ない。
「お母さんは知ってるの?」
「ううん、お母さん、、いない」
少女はかぶりを振ると、より一層泣きそうな顔になるのを必死に我慢しているようで、顔が赤くなり、スカートをギュッと掴んで震えていた。
「この子の母親は去年亡くなってるのよね」
女将さんが俺の後から小声で声をかけてきた。
「女将さんこの子と知り合いなんですか?」
「この子の父親はこの町でも有名な木工ギルドのギルドマスターなんだ、良く隣の食堂に一緒に食べにくるよ。」
この宿屋は、隣に食堂も併設していて、この宿屋のご主人は、そこでオーナー兼料理人もやっている。
料金は庶民的な値段なのに、味は結構いける。
俺もエゼルに奢ってもらって食べたが、あの焼肉丼みたいなやつは、ガーリックに似たスパイスがよく効いていて、絶品だった。
金に余裕が出来たらあの店の違う料理をエゼルと一緒に食べてみたい、次は俺の奢りで。
「何か心当たりはないんですか?」
「心当たりかい?」
「はい、この町の周りは森だらけなので、ただ森だけじゃこの子の父親がどこに行ったのかが絞り切れないんです。」
「そうだね、恐らく、東の森だと思うよ、ギルドで扱っている生木に問題が起きたらしくてね、ギルド総出で調査に行くって言ってたから。」
よし、それなら、初見じゃないから、それなりに捜索も出来そうだ、といっても、それに該当する範囲は森の浅い位置に限られる。
ラビキオの生息地より先に俺は足を踏み入れた事が無い。
あそこら辺で見つかればいいが、、、恐らく森の深い所まで行かなければいけないだろうと俺の直感が告げていた。
でも、昨日依頼を見に行った時は、木工ギルドからの護衛依頼なんて無かったはず。
近場過ぎて油断したんだろうか。
どちらにせよ、当たりは付いた。
「お父さんを見つけて欲しいでいいのかな君のお願いは」
俺が腰を落とし少女と目を合わせてそういうと少女はコクっと頷いて俺の手を取をとった。
その手は泣いているからなのか、体温が上がってほんわり温かい。
「あたしが言うのもなんだけど、あんた一人で大丈夫なのかい?
エゼルの嬢ちゃんを待った方がいいんじゃないのかい?」
「そうしたいのは山々ですが、本当に一刻を争うかもしれません、少しでも早く捜索を開始しないと。
エゼルが帰ってきたら、この事を伝えて下さい。
俺も命は惜しいので無理はしないつもりです。
あとこの子の事も宜しくお願いします。」
「ああ、任しときな。」
「君はここで待っててくれるかい。」
正直、エゼルを待っていたいし、ギルド迄呼びに行きたい気持ちもある、、。
でも、、人捜しだけなら俺一人で何とかなるかも知れないというちょっとした過信が俺の中にあった。
危なそうなら、向こうでエゼルが合流するのを待てばいいんだし、、。
俺は少女の頭に手を乗せポンポンと軽く撫でた。
「じゃあ、いい子で待っててね」
「・・・うん」
「気をつけるんだよ、あそこら辺は、ここ最近モンスターが活発になってるって話だから」
・・・・・・え?
あの聞いてないんですけど。
「・・・じゃあ・・・」
カッコよくポーズを決めた手前、、行かなきゃね。
右手を上げ挨拶をすると宿屋の軒先に足を掛ける。
その時不意に声をかけられた。
「あの〜?」
「おわっ」
突然の事で声が上がってしまった。
「すいません、驚かしてしまって」
声のした方を見ると自分の背丈もある木の杖を持った少女が立っていた。
俺の身長では少女を見下ろしてしまうようになってしまっているので、3歩程後ろに下がった。
少女は白色に赤い綺麗な刺繍が入った高そうなマントを羽織り、その頭には目深にフードを被っていた。
そのせいで顔はハッキリと確認出来ないが、そこから覗く薄緑色をした綺麗な髪の毛はエゼルの物とは違いちゃんと手入れされているようだ。
いい所のお嬢さん?
第一印象はそんな感じだ。
「いえ、何かご用でしょうか、俺今急いでいて、もし用があるなら、また後日この宿屋を尋ねて下さい。」
「違います、私、その、、今」
人見知りなんだろうか、どんどん声が小さく聞き取り辛くなっていく。
震えているのだろうか?
先が丸くクネっとなっているザ、魔法の杖といった木の杖がブルブルと小刻みに揺れていた。
「・・・」
本気で俺に用があるんだろう。
足を上げたよーいドン状態から、俺は少女の方に向き直す。
「今は何も出来ませんが、お話を聞かせてください、でも手短にお願いします。」
フードがグッと動いた。
俯いていた頭が上がったんだろうか?
「私も一緒に行かせてください」
「え?」
「立ち聞きするつもりはなかったんですが、お話が聞こえてしまって。」
「あの、、。」
「これでも私冒険者なんです」
見ればわかるよ!
そんな格好をいや、、そもそもそんなでかい杖、普通の人は持ち歩きません。
「いや、別に報酬が出るって話じゃ無いし、何の得もありませんよ?」
「・・・本当なら、あの子がギルドで心許なさそうにしている時に声をかけるべきだったんです。」
「話が見えないんですが」
「私、こんな性格で、あんなに人がいる所で、目立つ行為をする事が出来なくて、泣きながら彼女がギルドを出て行くまで、、、見守る事しかできなくて。」
そういえば、この時間のギルドは、依頼を受ける冒険者でごった返してるってエゼルが言ってたっけ。
「それであの子に声をかけようと追ってきたらこの宿屋に入って行ったという事ですか?」
「なかなか声をかけられなくて、、はい、その通りです」
そんなシャイな人が良く俺に声をかけたもんだ。
「お話はわかりましたけど、、。
本当に報酬もないし、第一に危険なんですよ」
「冒険者になった時に、いえ、その前から、覚悟は出来ています。」
「覚悟って、、、そんな大層な、俺も無理はしないつもりですけど。」
シャイなのになんでこんなにグイグイくる?
圧が凄いって。
「お願いします!」
90度、嫌、それ以上に曲げられた腰に覚悟を感じる。
断った所でついてきそうな勢いだ。
だったら、問答する必要も時間も無い
「俺も一人で行くより心強いです、是非お願いします」
」
「ありがとうございます!!」
顔を上げた彼女の頭からフードが取れ顔が露になる。
その、髪の手入れの仕方からもある程度予想出来たが、丸い眼鏡を掛けたその顔はキリッと大人の雰囲気を感じさせるが、少し残ったソバカスが少女のあどけなさを感じさせる、エゼルとは違った可愛さを感じさせる美人さんだった。
こちらに来て、エゼルといい、この人といい、美人さんに縁があるもんだ。
眼福で御座います。
「俺、トーヤって言います。職業は見習い戦士です。」
「エミです、職業は神官見習いです」
神官って事は、魔法使い、ヒーラーなんだ、心強い。
「方針については、道中決めましょう、幸い、備品等は二人分で2日位持つ量がこの中に入ってますので、このまま町から出れます」
「私も手持ちがあるので、私の分は大丈夫です」
そう言いながら、バックパックを見せ合う。
「よし、じゃあ出発しましょう」
「はい」
俺達は東門へ向かって歩き出した。
森の木々に光を遮られ、辺りは夕暮れ時の様に暗かった。
たまに降り注ぐ光も、俺を今正に殺そうと迫り来る敵の全貌を明らかにする事は無かった。
「はぁ、、はぁ、、」
俺の粗い呼吸音に混じり、異音が辺りに響く。
ブン!ブン!!
音と共に空気が切り裂かれる。
俺はその凶刃の圧力に圧倒され更に二歩散歩と後退する。
今俺の目には、迫る刃の現在と、2秒後がダブって見えている、それが2回、三回と繰り返される事で、物凄い情報量が俺の頭に流れ込んできて、吐き気に似た感覚を覚えた。
駄目だ、解除しないと。
「ぐぎ、、うううおおおりゃーー」
噛み締められた歯と顎がギリギリと悲鳴を上げる。
俺は振り下ろされた斬撃を短剣で受け止め、そのまま肩を入れ、身体強化を発動し相手を後方の木に目掛けて突き飛ばした。
「グッギギギ」
木に叩きつけられて、脳震盪でも起こしているのか、腰を落とし、頭を抱えて、左右に振っている。
これで意識でもかれていれば良かったんだが、、。
「はぁ、、はぁ」
身体能力が上がっているとはいえ、死に直面した際の消耗は激しい様で、額から汗が滝の様に流れてきた。
これが獣型とヒト型の違い、単純では無く、コイツもまた生きる為に、考え、行動してるんだ。
俺の目の前にいる、薄い緑色の肌を泥で汚し、汚らしい腰布を巻いた、ヒト型のモンスター。
頭髪は無く、ヌルッとした頭から、豚にも似た様な耳が垂れ下がっている。
目は黒目のみで、鼻は低く、口にはギザギザの歯が並んでいた。
体型は痩せ型だが、腹は膨れ、昔見た妖怪の餓鬼の絵によく似ていた。
手には、俺の持つ短剣より、刃渡りの長い剣を持っていた。
『ゴブリン』
エゼルから聞いていた、ここら辺に生息して居るヒト型のモンスターの代表格であると教わっている。
俺のレベルじゃ良くて引き分け、悪くて死ぬから見かけたら逃げろとか言われてたっけ?
絶賛戦闘中なんだけど、、。
「トーヤさん、回復します」
「大丈夫、エミさんは下がって、周りを警戒してください、仲間から聞いたけど、コイツらは群で行動するから、1匹いたら絶対2匹、4匹は必ずいるから気をつけろって」
ゴキブリかよ。
んで、獲物が弱ってきたら、集団で襲ってくるだっけ?
最低だな、胸糞悪。
ヒト型では最弱だが、その分、生存本能が他の種族よりもシタタカで厄介だとかも言ってたな。
「ゴブリンの武器は毒を塗ってある可能性が高いんです、そうでなくてもあんなに錆びていたら、破傷風になる可能性があります」
そういうと、俺の傷付いた箇所を確認し、持っていた杖に祈りを込めて、呪文を唱える。
ちょっと前のエミさんとは全く別人の様だ。
戦闘をきっかけに仕事スイッチが入って脳がギアチェンジでもしたんだろうか?
「キュア」
そんな事を考えていると、詠唱が終了したのか俺の傷付いた箇所が暖かい光で照らされその光が傷口に定着する。
すげーこれが魔法か。
ヒリヒリと熱の伴った痛みがあったが嘘の様に消えた
傷口は消えて無いので、回復ではなく、恐らく消毒や毒消の様な効果の魔法なんだろう。
俺がそれに見惚れていると。
「きます!!」
エミさんの声が俺を現実に連れ戻した、木に叩きつけられたゴブリンは、立ち上がり、俺に向かって剣を振りかざして突っ込んできた。
だが、俺は冷静にゴブリンと向き合うと、強化された脚力でグッと地面を踏み込み加速した。
「そんな大振り、行動予測でなんとでもなる」
俺の短剣はするりと、ゴブリンの心臓に突き刺さった。
まるで予めゴブリンがそこに来るのをわかっていたかの様に。
「ガ、、、ゴギャウ」
ゴブリンは剣を手からするりと落とし、必死な形相で胸に突き刺さった短剣を押し戻す様にジタバタともがいていたが次第に大人しくなった。
幸い手甲のおかげで、ゴブリンの汚らしく伸びた爪で引っ掻かれる事は無かった。
手甲って、こんな用途で使われてたのかもしれないな。
俺は光を失っていくゴブリンの目を見ながらそんな事を思い浮かべる。
「トーヤ、腐っても、ゴブリンやオークはあたしらと同じヒト型、そいつらを殺すのは獣を殺るのとは違って、覚悟がいる。
げんに、それが出来なくて、冒険者になるのを諦めたやつがいるくらいだ」
ってエゼルが言ってたっけ?
俺は大丈夫そうだ。