デイつー 2
完成です419
ちょっとだけ加筆4191330
目を開けるとそこは病室・・・だったら俺の気も楽になるのに。
初期ハンドレッドヒーローの中でも俺が嫌いなワードが幾つも出てくる胸糞の悪いエピソードの一つ。
「人造」
小学生の時初めてここに来て以来、俺の胸はいつもギュッと締め付けられる。
漫画の設定ではここは実験動物を育成する飼育部屋、スキルを持たずに生まれた人間を拐い後天的に能力を付与し、洗脳を施しスキルホルダーの軍団を作ろうとした悪の組織の一角にある部屋。
幾人もの犠牲を出して初めて成功した実験体。
しかし、その姿はもう人間と呼ぶには相応しくない形をしていた。
管のついた機械に拘束されその子達は俺を見るや否や
「十哉、、十哉だ!!」
目を輝かせ横になっていた身体を起こした。
「おす!」
俺は感情とは少し違う笑顔で子供達に挨拶する。
異形であるこの子達は俺にとってマックススピードや他の登場人物達と変わらず大切な存在だ。
「元気にしてたか皆んな?」
「これが元気に見えるの?」
腕から無数にはえる管をこれ見よがしに見せながら小学生だった頃の俺と同じ位の年頃の少年が俺にブーたれる。
「相変わらずよ」
心無しかおれに対して最近よそよそしくなった少女がボソボソと呟く。
「今日も異世界のお話してくれる?」
さっき俺を見つけて声を上げたここでは最年少の少年が催促するように俺に声をかける。
「ああ、そうしたいのは山々なんだけどちょっと今モンスターと戦闘中でさ」
「おおお!!!せんとーーー!!」
「おいいっ!
落ち着けって、ユー」
「だって戦闘でしょドラゴンとか魔王とか凄いんでしょ」
「お前、あんま暴れんな!それ抜けちまうぞ!」
「大丈夫だよこれグーって引っ張っても抜けないもん」
「いやいや、抜けないって分かっててもこっちは気が気じゃないんだってっ!」
「はぁ、、。
あんたも大変よね、一人で大人になったと思ったらまたそんなに若返って、顔だってちょっとイケメンになってるし」
「ごめん、ニーなんか言った?聞こえなかったんだけど」
「言ってないわよ!!」
心なしか顔を赤らめて俺を見ようとしまいと首を横に振る少女をよそにユーの猛攻を掻い潜る俺、、。
唯一、ここではまともであろうエーを見ると、、、大口開けて欠伸をしてやがります。
ここはカオスか、、。
「だーーーーから」
「遊びに来たんじゃ無いんでしょ」
「エー、お前分かってるんだから協力してくれよ」
「やだよめんどくさい」
このクール系を装ってるこの子の能力が今回の目的だ。
「なぁエー、お前の能力・・」
「だから僕の力、行動予測を借りたいんだったら、僕をジャンケンで負かしてって言ってるよね前から」
「いや、だから前から言ってるよね、2秒先の特定の相手の行動を予測、、、っていうかもう予知の域だよなお前のそれ百発百中じゃん」
「まぁ、間違った事は無いよね。」
「そんなお前にジャンケンで勝つなんて無理ゲーじゃん、俺多分、このダイブ解除したら、殺されるよ!
それも自分よりちっさい兎に!」
「兎さん、、、なの?」
「ぷっ兎に殺されるっって、、、、、ださw」
さっきまで輝いていたユーの目の輝きが薄らいでのを感じる、ニーに至っては草生やしてるし!!
あーーーーくそ!!!
まぁ、怪我の功名、ユーが大人しくなってくれた。
「もっとちが
「違う事にしたら、トーヤは絶対に僕を負かせられないと思う」
「という事は、俺には勝つ余地があるって事だよな?」
「・・・・ノーコメント」
ノーコメント?
実際エーの能力を借りたいと申し出たのは両手の指程度、以前の世界で、エーの能力が必要になる場面は無かったからネタとして勝負を挑んでみたが、どれも惨敗、結局エーに勝てた事は一度も無かった。
「僕はエーに勝った事あるよ」
「え?」
「おい、ユー!」
「私も」
「ニー、お前まで」
「ヒントよヒント、だってあなたの能力を借りないとコイツ死んじゃうんでしょ、、。
そんなの嫌だもの。」
「エー意地悪、トーヤが本気で借りたいって言ってるのに貸してあげないの!」
「・・・僕一人悪者かよ!」
「おいおい喧嘩すんなって!
ゴメン俺が悪い、エーに認めて貰いたいのは俺なんだ、ユーもニーもありがとう、こっからは俺が考えるから」
「悪いエー、嫌な思いさせちゃって」
「別にいいけど、チャンスはダイブ一回につき一回だけだからそこは譲歩しないよ」
「ああ、分かってる」
「僕たちに与えられた能力は、以前、それを保有していた人間の劣化版だって事、それを理解出来れば、僕に勝つのは難しくないよ。」
「エーだって優しいじゃない」
「ユー何か言った?」
「僕の火も烈火バーン!」
「つまんなっユーあんたは黙ってなさい」
ユーの掌で炎が弾ける。
ちょっと、思いついた事があったが、この課題をクリアしない事にはそれは実行出来ないだろうな。
ユーとニーはエーに勝った事がある。
エーの行動予測の特性、。
2秒先の特定の相手の行動、、。
なるほど、そういう事か。
でも、それじゃ、エーに勝ったことに、、、。
あ。
「なぁエー」
「何?」
「このジャンケン、此処にいる皆んなでやるってのはありか?」
「ぷっあはははは」
ここにきてエーがこんなに声を上げて笑うのを初めて見たかもしれない。
「いいけど、僕が最初に勝ったら意味無いからね」
「ああ、これ命懸けの運ゲーだなマジで」
笑い泣きする程可笑しかったのか、エーが服の裾で目を拭った。
エーは初めて勝負を挑んだ時から自分に勝てなんて言ってなかった。
はぁ、、。
あん時は色々余裕がなかったとはいえ今頃気付くなんて。
でもおかげであの超早いだけの兎に勝てる見込みが出来た。
日も暮れ、辺りが暗くなり始めていた、町が近いから野営する程のことじゃ無い、朝から晩まで兎追いするのもアホらしいし、そもそもあいつら、夜は寝ちまってるのか巣から出てこない。
腹も減ったし、また明日だな。
それにしてもトーヤの奴、死んで無いにしても、骨位折ってるかもな。
あのレベルでラビギオを狩るなんて、無理。
と言ってやりたがったが、世間知らずのあいつにはいい薬になっただろう。
「あいつには、危機感ってやつが足りないんだ」
冒険者の先達としてあいつを導いてやらないといけない、あたしが姐さんにそうしてもらったみたいに。
茂みをかき分け先に進むと、ぼんやりと明かりが灯っていた。
「焚き火か?」
確かあの辺りにはあたしらの荷物が、、。
クソっ野盗か、トーヤの奴無事なのか?
あたしの頭の中に最悪の事態がよぎる。
ミスったやっぱ一人にするんじゃ無かった。
あたしは慎重に音を立てることなく灯りに近付く。
賊は、、、一人。
焚き火の明かりが逆に相手の姿を消しちまって、確認しづらい。
だが、賊一人なら問題ない。
あたし一人でなんとでもなる。
あいつを倒して周囲を確認、仲間がいないか・・・
その時不意に鼻に香ばしい匂いが漂ってきた。
「え?」
その声と同時に
ぐううう〜
あたしのお腹が鳴ってしまった。
「クソ!!」
気付かれた!
あたしは一気に賊との距離を詰める。
「うおわっ!!」
え?
トーヤ?
「きゃっっふ!!」
あたしの口からも情けない声が出る
「エゼルか、、、おお、おおお、脅かすなよ!!!」
「あんたこそ何やってるのよ!!」
「何やってるって、エゼルを待ってたんだろ」
「あ、、、、そか。」
「あ、、そかってお前なぁ」
「それよりトーヤそれって」
焚き火の前に串に刺されたラビキオの物だろう肉が刺さって旨そうな具合に焼かれていた。
「ラビギオの肉だけど、コイツの肉、ラビキオのと違ってよく油が乗ってて旨そうだったからさ、ちょっと串焼きに。」
奇跡的に無事だったであろうトーヤが肉を前に嬉しそうに語っている。
あたしは確かにトーヤにモンスターの皮の剥ぎ方は教えてやったが、火の起こし方や、料理の仕方なんて教えた覚えはない。
ましてや、ラビギオの肉って、、、。
上位モンスターを駆け出しが狩るだなんて、あたしの常識ではありえない。
「やれば出来る子なんだなお前は。」
あたしはそういうとトーヤの肩に手をポンと置いた。
「子って、失礼な」
「とにかく、今日は野営なんてしないから早く食っちまいな、しかし羨ましい奴だぜ、ラビギオの肉って。
でも駆け出しのうちからその肉の味を覚えちまったら、他の肉が食えなくなるかもしれないな」
「何言ってんの?」
「あ?」
「ほれ、エゼルの分」
「は?」
そういうと、トーヤは今にも肉汁が滴り落ちそうな串焼きをあたしに差し出した。
「バカ!レアモンスターの報酬所持権は止めをさした人間のって決まりが」
「だから、エゼルにもお裾分けだって
いらないの?」
「バカ!
いらないわけあるか!!」
あたしは差し出された串をやる必要もないくらい強引に奪い取ると、一気にほうばった。
「はふふっうんまっ」
トーヤはそんなあたしを見つめながら嬉しそうにニカっと笑い自分も串を手に取り口に運んだ。
「はふふっうんまっ」
あたしたちはどちらからでもなく笑い合う。
全く変な奴だ。
行動がまるで読めない。
だけど今回はトーヤをあん時拾って正解だったと初めて思ったかも知れない。
でも報酬の値段が10倍ってのが、今食べてるこの肉だってのが分かったらあいつどんな顔するだろうなぁ。
今から楽しみだ。