でいワン 3
「はい、ではその様に処理します。
ええ、その場合の判断は彼自身に決定してもらうつもりです。」
話し声?
俺は助かったのか?
覚醒し、意識がはっきりしてくると、20代後半から30代前半の男が現代に似つかわしく無い、黒電話の受話器を持ち誰かと会話している。
「それに関しても、今までの案件同様、問題ないでしょう。
ああ、彼が目覚めた様なので。
ええ、では、それはまた機会があれば宜しくお願い致します。」
男は手に持った受話器を本体にガチャリと置いた。
「ああ、そのまま楽にしていてくれて結構ですよ」
今俺はベットに寝かされている。
一通り周りを見回してみたが、ここは病室というより病的といってもいい位整理整頓された事務室と言ったほうが良さそうな部屋だった。
机越しに見える男も白衣ではなくビシッとした高そうなスーツを着ている。
寧ろこの部屋に俺みたいなボロボロのスーツ姿の人間が寝ている事の方が異様さを醸し出している。
俺は今この部屋の異物だ。
しかし、マックススピードの能力は凄まじかった、とても普通の人間が扱っていいものじゃない。
あの一瞬だけでもこんなにボロボロになって、、、。
今こうして俺が生きているのも、身体に異常や痛みが無いのも奇跡と言えるだろう。
俺がそんな事を考えていると男は立ち上がり、ネクタイをキュッと締め直し、様々なファイルが収められている棚に移動する。
その動きも嫌味ったらしい位洗練されていた。
これが男も惚れる出来る男というやつなんだろうか?。
男は棚から一冊ファイルを取り出すと、ぺらっとページをめくり俺を見つめた。
「八黒 十哉さんで間違いありませんよね?」
「はい、やつぐろとおやは私です、よく読めましたね、初対面の方には良く読み方を聞かれるんですが。」
救急で運ばれて、ポケットに入っていた俺の名刺か何かで確認したのだろうか?
だとすると、ここは病院の事務室?
「どちらも違いますよ、まぁ、前提からして間違っていますけどね。」
「前提というと?」
「八黒さんは死亡しています、先程の事故を未然に防いだ事によって、正確には、マックススピード氏の能力を使用した事による急性心不全によって」
「・・やはり・・・そうなんですね」
「冷静ですね、もう少し、戸惑われるかと思ってたんですが。」
「まぁ彼にも言われてましたし、、、死ぬって
それに、あれだけのことをやって、身体が無事な訳無いんですよ、、、。
ふぅ〜、、これで合点が行きました。」
「それは何よりです、説明が省けた分、こちらも楽ができるというものです。」
そういうと男は机に戻り椅子に腰掛けた。
「申し遅れました、私、ネロと申します。
さて、今からお話する事は」
そこから語られる話は俺にとって救いだったのか、それとも・・・




