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それ借りてもいいですか?  作者: レイフォン
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でいワン

もう何度この光景を見ただろうか?

視界に入る物といえばコマ割りされたキャラクターの湾曲した姿、日本語で書かれたセリフ。

その字自体もねじり曲がり、原型を留めず読むのにも一苦労しそうである。

それらが物語の筋に関係無く不規則に俺の正面から後方へと次々に流れていく。

物語からは音は聞こえない。

聞こえるのは俺の咀嚼音だけ。

俺は口の中にある物を飲み込むと、一息大きく腹に空気を取り込み、深く息を吐く。

腹に微かに暖かさを感じると俺は一歩前に足を進めた。



少し時間を戻す。

朝、俺はいつも通り通勤の為、片道30分の道のりをママチャリをさっきよったコンビニで買った朝飯の肉まんを頬張りつつ漕いでいた。

寒空にいつも通りの光景が広がる中、俺はそれに遭遇してしまった。

不自然に蛇行を繰り返す黒色の乗用車、最悪な事にその車は歩道に乗り上げてもスピードは緩めず直進を続ける。

その少し先には集団登校をしている黄色い帽子をかぶった小学生の列が見える。

俺は持っていた肉まんを口に頬張ると、肩掛けの鞄から一冊の本を取り出した。


『ハンドレッド ヒーロー 10』


読みふるされたであろうその本は小口が黄ばんでおり、表紙には折れが目立ち、切れている部分はテープで補強されている。

俺の愛読書、俺が小学生の頃、少年誌でヒットしたヒーロー漫画だ。


この状況で何故漫画本、しかも10巻!

と思うかもしれないが、それにはちゃんとした理由がある。


それは、俺がスキルホルダーだから!


説明しよう!!


スキルホルダーとは、いわゆる、能力者の事である、能力は様々、空を自由に飛ぶもの、銅を金に変えるもの、光の速さで移動するもの、怪力で岩をも砕くもの、人を意のままに操るもの。

確認されている能力だけでも何千種類も及ぶ。


そう、この世界にヒーローは存在するのである。


まぁ、その中でも俺の能力はピンからキリの更に使えない、特殊能力に分類されている訳ありの能力。


『ブックマン』


本に書かれている、もしくは描かれているキャラクターの能力を使う事が出来る。

制限は無し。


この説明だけなら、凄く魅力的な能力だが、やはり強力な力にはそれなりの致命的な欠点があった。


但し、対話し説得するか対戦して屈服させるか。


要は、スキルを使用したけりゃ、相手に認めさせろという事である。


その条件のおかげで、俺はまだ俺の能力を完全に使いこなした事が無い。

一番まともな異能力でも手から火が出たくらいの物である。


だが今は本当に秒で事態が変化するような文字通り刻一刻を争う状況である。


俺はページを捲り、ドッグイヤーの折り目のついたお目当てのページにたどり着く。


ヒーロー図鑑


そう、記念すべき10巻目という事で、この巻には、今まで出て来たヒーローや、これから出てくるヒーローやヴィランの予告が設定資料として巻末についているのである。


俺はそこから一人のヒーローを選ぶ。


「ダイブ」


その呟きと共に視界を光が包みこんだ。






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