時の変わり
時は流れ、数年の歳月がたった。
あれからグレン達は成長し、今では5歳になっていた。
5歳になると家庭教師を呼び、7歳までは家で勉強を教えていくのが一般的らしい。
グレン達は、いざ魔法の勉強!剣の稽古!!と意気込んでいたのだが…それはまだダメだと言われてしまった。
「グレン様ルイン様。今日は読み書きを行いますよ」
2人に話しかけてきたのは、この家の執事をしているノイシュ。
教師としての免許も持っており、家庭教師を呼ぶのではなく、直接勉強を教えてもらう事になっていた。
ノイシュは、称号[導く者]という、人に何かを教える立場の人達にとって、とても欲しい称号を持っているエリートさんだったりする。
「いやだ。俺は剣の稽古がしたい」
「おれは魔法が使えるようになりたい!」
「…それは出来ません。剣術や魔法の訓練は6歳の洗礼の日を過ぎてからではないと教える事は出来ないと何度も仰っているではありませんか。それに「俺」なんて…何処から覚えて来たんですか…」
同年代の子達が庭で駆け回ったりしている中…グレン達は訓練所に行くか庭の木の下に座り、2人で何かを話している事ばかりだ。
使用人やメイド達に何か聞いているといえば、剣術を教えてほしい、魔法が使いたいと何度も頼んでいる姿だった。
(…グレン様やルイン様は、訓練所に入る許可が出た途端に、剣術や魔法を使いたいと言い出しましたし…本当に一体何処でその様な事を覚えて来たのか)
「魔法、少しだけでもダメいけないの?」
「今はまだいけません」
「…剣の稽古」
「今のお年では、剣は持てませんよ?」
「「けち」」
「……………では、訓練所に行きますか?見るだけならいいですよ」
「本当か!?」
「グレン!早く行こう!!」
(…やれやれ…どうもお2人には、私も甘くなってしまう)
「はぁ…。グレン様!ルイン様!お待ち下さい!走っては行けませんよ!」
旦那様に双子達を任されている以上、半端な事はしたくない。
だが、読み書きなどはやる気を示さず、剣術、魔法と興味はそちらに注がれるばかり。
今日もノイシュは自身の持つスケジュール帳を片手に、双子の教育時間に悩みながら調整していくのだった。
========================
【あの時のルインは】
目が覚めると、隣に黒髪で金色の瞳の赤ちゃんがいた。
『ルインには双子のお兄ちゃんがいるのよ。もうすぐ会えるわ』
リラって呼ばれていた新しい母さんが、よくおれに言っていた。
多分…この子が、おれの兄ちゃんになる人だ。
双子って事は、おれはこの子に似てるのかな…
(…ずっと見てくる)
自分の髪は白い…爺さんみたい。
瞳の色は、この兄ちゃんと同じだって。
…何だろ……何だか、この子、れんに似てるな…。
――ブスり。
(…えっ?いきなり何?おれもやる!)
――ブスり。
(お?やんのかー?おらぁあぁ!!)
――ずばばばばばばっ!!
(はぁはぁ……中々やるな…この兄ちゃん)
あ、向こう向いた。
黒髪の兄ちゃん、こっち向かない…
…そういえば、れんはどうしてるかな〜。
おれが赤ちゃんになってるって知ったら笑うかな…
れんの事だから、また、不機嫌そうな顔してそう。
――「あぶぁ…(るい)」
(え……?今のは…)
「ぶあぁ…?(れん?)」
声が……黒髪の兄ちゃん…が、れん?!
(「………はあああああぁぁあぁ!?!?!」)