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選ばれたのは【2】

【1】〜の続き


落ち着きを取り戻した教師は、赤く腫れた目のまま授業を再開した。

当然Aクラスの生徒はBクラスよりも人数が少ないので、サクサクと召喚魔法が行われ、進んでいく。


「……ハッ!ようやく俺様の番になったか」


そして、残るは三馬鹿のホッズ達と、グレン、ルイン、アウグリッドの、いつもの3人が残った。

先に魔法陣に向かったのはホッズ達。


3人はそれぞれ魔導書を持って魔法陣の上に立った。


「【来なさい、私の宝石達】」

「【来い来い来いっ!】」

「【さぁ来い!俺様の元に来る事を許してやる!】」


カッ!と魔導書が輝く。

だが、取り巻き2人のバーンとドルトの前には、使い魔はいなかった。

ガクリと肩を落として落ち込む2人を他所に、ホッズの高笑いが室内に響き渡った。


「ハッ、ははっ!はははははははっ!!!見ろ!この使い魔は俺様に相応しい姿をしている!!!!」


ホッズの目の前に現れたその姿は、鋭い爪持ち、四つ足の真っ赤な身体に、刺々しい鱗を纏う。

蜥蜴や(わに)のように地面を這い、シュルシュルと音を立てる細長い舌は、まるで蛇のよう。

キュッと縦に瞳孔が締まり、ぎょろりと動かすその瞳は、目が合った瞬間には、その場に身体が縫い付けられた錯覚を起こしてしまうかのように凶悪だ。


「これ、は…火属性の、サラマンダーか!?凄い…、ランクA相当の使い魔が出たのは、最近だと第二王子以来じゃ無いか!?トネル君のトレジャーモンキーは希少ではあるがランクで言えばC相当。サラマンダーはそれをゆうに超えるランクA!!素晴らしい!!これは快挙だ!!!ホッズ君!是非君も後で研究室に!!!」


興奮が再び再燃した教師は、やれここはやれ質は…など、研究魂華々しく、メモを片手にサラマンダーの周りをうろうろと周り出す。


それを見ていたホッズは鼻高々に他の生徒達を見下ろした。


「やはり俺様は選ばれた人間なのだ。ランクC如きの使い魔より、俺様の方が圧倒的だ。おい、お前。サラマンダーと言ったか。俺様に仕えることを許してやろう」

「ギャウ、ギャウ!」

「何?魔力が欲しい?…ハッ!そんなものいくらでもくれてやる」

「ギュア!ギュア!」

「あぁ、契約成立だ」


サラマンダーは魔力を貰うと、トネルの使い魔のように、ぼふんっと煙を立てて居なくなった。

目の前で消えたサラマンダーに、教師は「あぁ…」と、悲しい声を出した。


「くくくっ、さぁ!最後はお前達の番だ!まぁ?俺様を超える使い魔を召喚するなど、出来はしないだろうがな!!」


魔導書がグレンの前に投げ捨てられる。

その行動に教師は注意するが、ホッズは既に何処吹く風だ。


グレンは特に何か騒ぐ事もなく、素直に魔導書を拾って、軽く埃を手で払う。

ルインとアウグリッドも、魔導書を待って魔法陣の上に移動した。


「…よし。男子はお前達で最後だ。先はサラマンダーなんてとんでもない使い魔が出たが…召喚魔法は本来時の運でもあるので、気負う必要はない。さぁ、各々始めなさい」


教師に合図に、グレン達は魔力を流した。

アウグリッドは、「ふぅ…」と息を吐き、肩の力を抜く。


「【お願いします!来てください!】」


アウグリッドの持つ魔導書が、淡く魔力を纏う。

そして、カッ!と輝くが…、使い魔は現れなかった。


「あはは、残念。僕に使い魔は来なかったよ」


恥ずかしそうに指で頬をかくアウグリッドは、そう言いながらグレン達の方を向いた。

見てみるとグレン達の前にも使い魔はいない。


「あれ、グレン達も使い魔は来なかったの?」

「………いや、」

「………えっと」


何処か困惑している2人に、首を傾げる。


「どうしたの?」

「この…魔導書?に、そもそも魔力が入らなくて」

「同じく」

「え?」


どう言うこと?と、答えを求めて教師を見つめた。


「変だな?そんな事例は、今までないのだが…。ちょっと女子を担当する先生に聞いてみよう。少し待っていなさい」


そう言って、教師は女子担当の教師の元へと向かった。


「何でだろうね?」


魔導書をひっくり返したり、開いたりしてみるが、何処も変な所は見当たらず。

まぁ悩んでも解決する訳ではないので、素直に教師が戻るのを待っていると、案の定ホッズが突っかかって来た。


「ははははっ!!!まさかまさかと思っていれば!希代のSクラス様は召喚魔法すら使えなかった何て驚きだ!!」

「…………」

「侯爵の名が廃るなぁ?お前達の親も、こんな無能な奴を見たら何と言うだろうか?あぁ…親が親なら子も子という事だろうか?はは、無様にも程があるだろう。同じ侯爵を持つ者として俺様は恥ずかしくて仕方がない」

「…………」

「何だ?図星で何も言えないか?負け犬は負け犬らしくキャンキャンと吠えるがいいさ!!」


執拗に罵倒を繰り返すホッズに、ルインが掴みかかりそうになるが、そうなる前にグレンが念話で止める。

ルインの背中を、ポンポンと軽く叩いたグレンは、静かにホッズの前に立った。


「………それで?」

「…は?」

「だから、その続きは?」

「続き、だと?」

「分からない…のか?」

「ッ!だから、何なんだッ!!」


結論を述べないグレンに、ホッズは怒りで顔を真っ赤に染めていく。

その姿を見て、小さくクスりと笑う。


「何が可笑しい!!」

「これは失礼。この状況で笑うのは、馬鹿にされたと勘違いしてしまうのも無理はないでしょう。ですが安心して下さい、決して、馬鹿にした訳じゃないですよ?」


両手を軽く上げて、ひらひらと振る。

そして、いつもならこの時点で適当に流すが、今日は違った。


「その態度が!俺様を馬鹿にしている以外に何がある!!」

「ははは。嫌だなぁ何も無いですよ?……あぁ、それと。その続きと言うのは、貴方が言った、“キャンキャンと吠えるがいいさ"の続きの言葉です」


怪訝そうな顔をするホッズに、グレンは珍しく、ぼそりと囁いた。




「まるで、今のお前のように」




ホッズの目が大きく見開く。

最小限に小さくした声は、2人以外には聞こえない。


「……てめぇ、もう一回言ってみろッ!!!」

「……ん?【負け犬らしく()()()()()()()()()()()()()()の続きの言葉です】?」


グレンは初めて、明確にホッズに噛み付いた。

今までどれほど罵倒されようが眉一つ動かさず、平然としてかわして来たが…今回は、あからさまに答える。


「ふざけんじゃねぇぞ!テメェ!!!!」

「はは、可笑しいなぁ?言われた通りにしただけなのに」

「ぶっ殺す!!!」


言葉の意味を理解したホッズは、怒りが頂点に達したのか、今度はグレンに掴み掛かろうとして、焦りながら戻って来た教師が寸前で、手首を掴んで止めた。


「何をしているんだ!君は!!」

「離せ!クソが!!!」

「離すわけないだろう!少しは落ち着きなさい!!」

「うるせぇ!!雑魚が!邪魔すんじゃねぇよ!!」


尚も暴れるホッズに、教師はため息を吐く。


「仕方ない。ウンディーネ、彼を拘束しなさい」

「〜〜♪」


教師の言葉に、突如として現れた水の精霊は、ホッズの体に水を纏い拘束した。


「クソッ!ここから出せ!!」

「貴方が落ち着いて話せるようになったら考えましょう。それまで大人しくそこで授業が終わるまで静かにしていなさい」


首から下が水で覆われたホッズは、バタバタと手足を動かし、拘束から逃れようとするが、まるでスライムに覆われたように形を変えるだけで、軽く宙に浮いた状態のホッズに、なす術はなかった。



……

……



「全く。少し目を離した隙に………君達もだ!」


何があったか話せと担当する教師が言うので、丁度教師が離れた後から、戻ってくるまでの間の出来事を嘘偽りなく話した。


話をするたびにホッズがギャンギャンと叫んだが、今では大人しくグレン達を睨むだけだ。

流石に、謹慎になる可能性があると言われたら黙るしか無いようだ。

もちろん、ホッズにだけ聞こえるように言った言葉は話してはいない。鬼のような顔で睨まれたが。


「……はぁ。大体はわかった」

「大体じゃなくて全てですよ?」

「……そのようだな。周りの証言も一致している」

「事実ですから」


グレンが微笑むと、教師は諦めた様にため息を吐いた。


「ホッズ君。他の生徒達の証言も合わせると、今回ばかりは擁護できそうも無い」

「ふざけるな!あいつが、アイツが!!!」

「グレン君に何か?彼がホッズ君に何かしたわけじゃないだろう。どうもホッズ君が一方的に罵倒していたそうじゃ無いか」

「そ、れは…」

「むしろホッズ君は、グレン君達に謝るべきじゃ無いのか?子供の喧嘩だと大目に見てはいたが…それに、君は普段から何かと他の生徒達にも似たような事をしていたそうじゃないか、違うか?」

「…ッ!グズにグズと言って何が悪い!!!無能な奴らは俺様の踏み台になっているのが一番だ!それに今回俺様はAランクのサラマンダーを使い魔にした!だが、アイツらはどうだ!呼び出すどころか召喚魔法すら発動しない!!これが無能以外の、グズ以外に何があるって言うんだ!!」


「……はぁ。ホッズ君。君とは少し、親御さんを交えて話し合いをしたほうが良さそうだ」

「…は?何、を言って」


言葉が理解できないのか、ホッズはポカンと口を開けた。


「イル先生。授業を任せても?」


教師は、騒ぎに駆けつけた女子担当の教師に話しかける。


「はい。生徒も残り少ないですし。後は私が受け持ちますよ」

「助かる。皆、申し訳無いが、後の授業は女子達を担当していたイル先生に任せるので、彼女の指示に従う事。……ウンディーネ、彼を移動させます。では、よろしくお願いします」


相変わらず騒ぐホッズを無視し、教師は軽く一礼すると、ホッズと共に室内から出て行った。



一体グレンは何に怒ったのか。

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