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脱引きこもりにはハードすぎる

お待たせしました。

引き続きどうぞよろしくお願いします。


今日はルトアと、第三王子であるヴィンセントが屋敷に来る日。

そろそろお昼時といった時間帯に、馬車に乗ったルトア達が屋敷に到着した。


リラや使用人達と一緒に、グレン達も玄関先で出迎え、屋敷内へと移動する。

サロンへと着くとリラは「後は4人でごゆっくり」とだけ言って、何処かへ行ってしまった。


とりあえずソファーに座ると、メイド達が飲み物やお菓子を持ってきてくれた。


「グレン、ルイン久しぶりだね。元気にしてたかい?」

「はい。ルー兄様もお元気そうで何よりです」


「久しぶりだなぁ、グレン、ルイン」

「お久しぶりです。ヴィンセント殿下」


少し見ないうちに2人は随分と背が伸び、体格や外見も大人っぽくなっていた。

ついでに顔面偏差値もかなり高くなった。


「…何だ、随分と堅っ苦しいじゃないか」

「いえ、そんな事は…」


チラリと辺りを見れば、4人の他にヴィンセントの護衛やメイド達が控えている。

その為下手な事は口には出来ないので、いまいち言葉使いに困るのだ。


グレン達の視線に気がついたのか、ヴィンセントは苦笑いをした。


「あー…なるほど護衛か。気にしなくていいぞ、友人なんだからな。………な?お前達も気にしないだろ?」


不意に話を振られた護衛の人達も、苦笑いをしながら頷く。

どうやらいつもの事のようだ。


「………はぁ。ここだけだからな」

「おう、グレンは相変わらずだなぁ!」

「……それよりもルー兄様「無視!?」……達はどうしてこちらに?」


言葉や態度が問題ないなら気にする必要はない。

ルインはちょっと落ち込むヴィンセントに、そっとお菓子を渡す。


「ん?遊びに来ただけだよ?」

「遊び?」

「そう、遊び。たまには息抜きも必要だし、僕もヴィンスも可愛い弟達に会いたかったし」


ルトアはお菓子のクッキーを一つ摘んで、グレンに向ける。


「……えっと、これは?」

「はい、あーん」


当たり前かの様に、クッキーを食べさせようとしてくる。


流石に「あーん」などされたく無いので、差し出されたクッキーを手に取り、自分で食べる。


「……残念」

「ルー兄様…流石にそこまで幼く無いです」

「えー?いいじゃないか。……ルイン、はい、あーん」


ルインは何の迷いもなく、差し出されたクッキーをそのままパクリの食べた。

それを見たヴィンセントも、面白がってルインにお菓子の食べさせる。


「ルイン…お前なぁ。ルー兄様達も程々に…そろそろ昼食の時間でしょう」

「あ、そうだった。2人とも、これから外に行ってお昼を食べに行かない?」

「「外に…??」」


突然な事に、グレン達は首を傾げる。


「…2人は1年ちょっとの間、この家…屋敷の敷地内から外に出た事はあったかい?」

「…出てない、です」


ぎくりとした。

学園から屋敷に戻って以来、実は敷地内から出たことが無い。

使い魔になった白虎達や自身のステータスの事もあって、人を避ける余り、何処かに遊びに出かける事をしてこなかった。


「貴族とは言え、流石に街に出かけたりくらいはするよ?ヴィンスでさえ護衛の目を盗んだりして城から抜け出しているのに…」

「ちょっ!!それを今言う必要はないだろ!?」


ヴィンセントの後ろに控えている護衛の1人が、黒いオーラを出してにこりと笑う。…常習犯のようだ。


「……だからさ。グレン達もたまには外に出て遊んだら?って事で、これから街に行ってご飯を食べに行こう」


そう言ってルトアは立ち上がる。

どうやら拒否権はないようで、グレン達は急遽外食をする事になったのだった。



……

……



グレン達が馬車に乗ってから数十分。

屋敷から少し離れた場所にある下町の一角に馬車を止める。

一応お忍びというやつなので、護衛の人も少し距離を置いてもらっている。

ルトア自体が護衛の1人かつ、領主の息子だしって事で問題ないのだろう。


『……こんな場所だったか?』

『おれにふっても意味ないって』


綺麗に統一された街並みは、王都と引けを取らない程。

当たり前だがルトア達は見慣れた光景でも、グレン達は違った。

例えここが自身の領地でも…馬車から数十分で着いたとしても…実は町に来るのがこれが2回目なんて。


…半引きこもり状態だったために!


殆ど覚えてなく、グレン達は若干顔を引きつらせた。


「よし。じゃあ適当に歩いて、食べたい物が見つかったらその都度買っていこうか」


ルトア達と各々食べたい物を見つけて買っていく。

若干挙動不審になりながらも、グレン達も肉の焼ける匂いに誘われて一つの店へと向かった。


「おじさん。それ、2本ください!」

「うおっ、金目!!…っと…すみません。貴族の方ですか?……えっと、串肉2本で銅貨6枚です」

「はい」

「まいどっ!……じゃなかった、ありがとうございます」


お金を渡して串肉を受け取る。

次に目に止まったのは、見た目が赤いスープ。


「おばs…お姉さん。そのスープを2つ」

「…ん?今なんか……おや、金の目。貴族様…えっと、大丈夫ですか?これ少しばかり辛いですよ?」

「問題ない。値段は?」

「あ、はい。一つ銅貨4枚なので、銅貨8枚です」

「ん。ありがとう」

「あ、ありがとうございました」


同じようにお金を渡してスープを受け取る。


やたら目の色に反応する人が多い。

……いや、学園もこんなもんだったか。


まぁそんな事よりも、受け取ったスープの中を少し揺らしてみれば、刻んだ野菜や鶏肉らしき物が見える。

香りも柔らかく、そこまで刺激的な匂いがするわけではないので、辛いと言ってもわずかだろうと思う。


スープを買った場所から近い広場にグレン達は向かう。

既にルトア達もいて、各々買ってきた物を食べ始めた。


串肉は焼いて塩をまぶしてと、いたってシンプルな物だが、一本といっても物自体は大きめ。

分厚い肉でも噛めば簡単に噛み切れ、口の中に旨味が詰まった肉汁がじゅわりと広がる。

スープの方は、口に含んだ瞬間は野菜の優しい甘み、そこからほんのり辛い旨味が合わさる。好みの味だった。


「どう?久しぶりの外は?」

「こんな美味しい物があるなんて知らなかったです」

「ははっ、それはよかったね」


ちらりとルインをみれば、ヴィンス先輩からも別に肉を貰ったのか、ばくばくと買った物を食べている。

まぁ肉さえ有れば何でも美味しいと言いそうだ。


「ルー兄様。この後はすぐに家に戻るのですか?」

「僕達はちょっと寄るとこがあるから、グレン達は何処か気になったお店に寄ってみるといいよ。お金はまだあるよね?」

「はい。十分すぎるくらい貰ってます」


「グレン!お前はもっと食え〜大きくなれないぞー?」

「……ヴィンス先輩は黙ってて下さい。あんたは食べすぎ」

「ん?そうか?まだ入るが…」


最初は5人前くらいの肉などがあったのに、見ればぺろりとたいらげていた。

と言うか、ヴィンス先輩は王子だよな?何平然と市民の料理を毒味無しで食べているのか。護衛役の人をちらりと見てみるが、特に気にした様子はない。

まぁ考えてみれば、ここの領地自体が自分達の領地の中なので、信頼されていると思ってもいいのだろうか。

……いや、それでも王子なんだから毒味役くらいは当たり前だと思うのだが。


とにかく、下手に相手にするのも面倒なので早々に切り上げ、この広場で落ち合う約束をして、決めた時間までは別行動をする事になった。



「グレン、これからどうする?」

「んー…、白虎達の土産でも見て回るか?」

「いいね!」


今日の白虎達は家で留守番。

白虎は良くてもハクは隠れる事が出来ないので仕方ない。

不貞腐れてはいたが、魔力を渡したら直ぐに機嫌が良くなった。ちょろい。


「……土産って言っても何がいいんだ?」

「ん〜…、無難に食べ物?おれ達が買っても変じゃない物とかにすればいいと思う」

「それもそうか」


そうと決まればと、持ち帰れそうな食べ物を探す。

途中気になった物を買ってはつまみながら、適当にぶらつく。

そこでふと、肉屋の前でルインの足が止まった。


「…肉屋。干し肉とかどうだろう!」

「今更だがあいつらって肉食べるのか…?」

「魔物?の部類だろうし平気じゃん?」


カランと音をたてて扉を開ける。

店の中に入れば、デパートなどでよく見かける様な、硝子越しに肉が並ぶ。思っていたよりも設備がしっかりしている店だった。


この世界には雷魔法はあっても、電気と呼べるエネルギーはない。

正確にはあったとしても、今の段階ではそれが使われることはない。

代わりに魔石と呼ばれる魔力の塊を主に使っているからだ。

魔石は宝石の様な見た目の石。

その魔石を使う事によって様々な属性で魔法を使ったり、魔道具を動かしたりする事ができる物だ。


この店の肉を冷やしているのも、魔石で氷魔法を使って冷やしているのだと思う。


「いらっしゃい。………なんだ坊主…貴族様??」


見た目ごっついおっさんが、グレン達をみて眉を潜める。

服装自体は質は良いが、お貴族様と言われるような格好はしていない。

だが、やはり目の色で貴族だと判断される。

流石に何度も似たような反応をされると面倒なのだが。


「干し肉はあるだろか」

「……え、ああ、ありますが」

「いくらだ?」

「えっと…何の干し肉がよろしいので?」

「何の……?」


そう言われてよくみれば、干し肉にも種類があった。

正直見たところで何が良いかなんてわからない。


「…一番美味いやつを」

「どれくらいの量でしょう?袋で決めても良い…小、中、大のどれかで値段は変わる、ります」

「小で。それと敬語はいらない」

「そ、そうか?助かる…えっと今あるので美味いやつならミノタウロスの肉だな。小の袋なら銀貨7枚だ。値段は張るが…問題ないか?」

「ああ。それでいい」

「わかった。少し待ってろ」


そう言うと、おっさんは店の奥へと引っ込んでいった。


まさか種類や量なんて聞かれると思ってなかったので、グレンは内心落ち着かなかったり。


「干し肉で銀貨7枚って、安いのか高いのかわかりづらいな」

「銀貨1枚千円だから…小の袋で七千円って考えると高い?」


こっちのお金は、主に銅貨、銀貨、金貨、大金貨が主の通貨だ。

大体銅貨1枚で百円、10枚で銀貨1枚、千円。金貨1枚一万円、大金貨は1枚十万円。それ以上になると家とか土地とか買ったりする時くらいに使う白金貨。国単位の取引の大白金貨なんてのもある。ちなみに五百円玉とかの中間の金額はない。


「待たせたな!ほれ、ミノタウロスの干し肉だ。珍しく手に入ったやつだから次はいつ手に入るかわからん。運が良かったな!!」

「そうなのか。…ん、銀貨7枚だ」

「まいどっ!ミノタウロスの肉を出せるかはわからんが、次もよろしくな!」


ミノタウロスと言うからには魔物だろう。

どんな味がするのか気になりはするが、白虎達の土産なので、つまみ食いはしない。

ルインが欲しそうに視線を向けるが無視だ。


いい笑顔のおっさんに手を振られつつ、グレン達は店を出た。


「そろそろ戻るか」

「ルー兄様達は戻ってきてるかな?」

「さぁ?決めた時間にはまだ早い方だから…どうだろうな」


歩きながら辺りを見れば、昼間よりさらに人が多くなってきている。

広場に戻る道を歩いていると、前の方が何やら騒がしい。


「……何だ、喧嘩か?」


様子を伺いつつそのまま近くと、歩いていた前方の人混みが、悲鳴と共に両サイドに分かれた。

すぐにグレンはルインの腕を掴んで引き寄せる。

そしてそのまま周りと同じように道を開ける為に端に寄った。


「どけえええええぇえっっ!!」


分かれたその人混みから、頭に血でも昇っているのか顔を真っ赤にさせた男が、ガラついた声で奇声を上げ、剣を無造作に振り回しながら走って来た。その片手には小さな女の子を抱えている。


「ッ!?助けなきゃ!」

「…!!馬鹿やめろ!!」


それを見たルインが、男を止めようと魔法を放とうとしたので、咄嗟に手首を掴んで止めた。


「何で!!」


男を止めたいのは山々だが、元々街の中での魔法の使用は原則禁止されている。

禁止と言っても、生活する上での魔法の使用は問題ない。

人に怪我をさせたり、建物など破壊したり等の魔法を使う行為が禁止されているというものだ。

もちろん例外はある。犯罪行為を止める為、自衛の為などありはするが、そもそも一般市民は魔法自体を多く使えない人が多い。そこから犯罪を止める為の加減を考えつつ、魔法を使うなんて難しい。

もし出来たとしても、確実ではない限りは周りに被害が増えるだけだ。


それに、目立つ行為を避けたいのもあるが、そもそも男がどう言った理由で女の子を抱えているのかもわからない。

誘拐か、人質か、ただの人助けか。……あの様子では最後の選択はまずないだろうが。


「下手に刺激するな!今頃はルー兄様も騒ぎに気がついているだろうし、警備隊を待つのが先決だ」


その間に、男は女の子を抱えたままグレン達の横を通り過ぎて行く。

初めの騒ぎの場所からは、女性の泣く声や、女の子らしき名前、まだかまだかと警備隊を呼ぶ声が混じり合う。


「でもグレン!!」

「……わかってる」


いくら俺達が直接領地の運営に関与していないとしても、立場上は動ける。それに知ってしまった以上今ここで見捨てるなんてルインには出来ないだろう。

だが、今は俺達に護衛の人はついていないから向かわせる事も出来ない。

手元に剣なんてないし、何かするなら魔法を使うしかない――


「……………チッ、追うぞ!」


……せめて、ルー兄様達や警備隊の人達が来るまでは、男を見失わないようにするしかない。




……

………




一定距離を保ちつつ、グレン達は男を追いかける。


逃げた場所から離れれば、男は建物の細道に入ったりなどして、少しでもと追って来た人達を撒いていった。

男は時折後ろを気にしながら逃げているが、グレン達は男に認識されていない。


……何故なら、グレン達は()()()()を走って男を追いかけていたからだ。


『なぁ、なんかおかしくないか?』


出来る限りバレる要素を下げる為、ルインと念話で話しつつ、コクリとグレンもそれに頷く。


『……あぁ。あれだけ騒いだはずなのに、逃げた先にすら警備隊の人達が見当たらない。流石に門にはいるとは思うがこれは………っ、ルイン、止まれ』


足を止め、出来るだけ見つからないように姿勢を低くする。


止まった視線の先。追手はもういないと判断したのか、男が一つの建物の中へと入っていった。


「……どうする?」


ルインに問われるが、自身も悩む。

何が良いかなんてわからない。今更すぎるが、建物の中に潜伏された場合なんてもっとわからない。

ドラマとかアニメとかを思い出して侵入する!なんてそれっぽい行動は取れるかもしれないが…。


「下手な事は出来ないな」

「グレンの感知スキルは?」

「反応はある………建物の中には5人」

「女の子を入れて5人って事は…あの男含めて4人か…」


人質を取られている状況で、こちらは2人しかいないのに対して、相手は4人。全員大人、男性と考えた方がいいだろう。

まぁあの男が1人で、残りが人質とも考えられなくもないが。


「…広場に戻ってルー兄様達を探すしかないな」

「なっ!せっかくここまで来たのに見捨てるのか!?」

「落ち着け。誰も見捨てるなんて言ってないだろ」


こちらの状況も、相手の状況も、建物の内部の構造自体も、未だどれも把握しきれていない。

早く助けてやりたいのは分かるが、ルー兄様達の状況だけでも先に把握する必要がある。


「ルインがルー兄様達の所へ行って来い。俺が此処で見張っている。[感知]スキルがあるから少しでも動きがあれば分かる。それに俺達には[共有]もある。何かあれば俺の目でも、ルインの目でも見れるだろ」

「…わ、わかった!!」

「此処から上の情報は出来る限り伝える。ルー兄様達を見つけたら、人が拐われた、俺が今男達を見張ってると言えば良い。ほら、さっさと行け!」


グレンの声に、ルインはすぐに来た道を戻る。


『…っ、おい!戻るなら屋根から降りろ馬鹿!』


分かれて早々念話が飛んできたと思って後ろを振り向けば、グレンが下の道を指差しながら怒っている。

……確かに、このまま屋根上を走って戻るのは怪しいなと、素直に屋根から降りてまた走り出す。


[共有]の視覚をONにして、グレンと繋げる。

同じようにグレンも繋げてきたので、どちらの視界も見れるから本当に便利だと思う。


そこで、ハっとルインは気付く。


……広場に戻る道が、わからない。


いや、何となくはわかる。わかるけど…正確じゃない。

だって此処に来たの2回目じゃん!!!わかるわけないだろ!!


『……グレン』

『ん?どうした、立ち止まって』




『……上から道案内して…』




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