スキル
【8月31日・ご報告】現在、自身の忙しさの余り更新が停止しておりました。近々再開したいと思っております。今しばらくお待ち下さい。
白虎がルインの事を名前で呼ぶようになってから、早数ヶ月。
時が流れるのは早いもので、あれからもうすぐ一年が経とうとしていた。
「………お、上がってる。これで、後一つだ」
「え!本当!?やったじゃん!」
隠蔽スキルをlv5まで上げるのを目標に、グレン達は毎日欠かさず鍛錬を行い、勉学もきちんとこなした。
当時はlv2から始まり、3ヶ月が過ぎた所で一つ上がった。
それから半年近く経った今日、久しぶりにレベルが上がりlv4になったのだ。
最近は自室でステータスを見せ合うのが、習慣になりつつある。
「他は何か上がった?」
「……ん…と、…鑑定が上がってる。これでlv3だ」
「おれは相変わらず、属性は上がんないなぁ」
「何言ってんだ…元々が高いんだから早々上がんないだろ。ルインがこの一年で上がってんなら、俺もとっくに上がってるっての」
「それもそっか……」
それでも、やはりレベルが上がらないのは辛い。
属性とは別に、ルインにはスキルを上げられる要素自体が少ないので、強くなっているという実感が中々掴めないでいた。
「……………鑑定」
グレンは、ルインの持つ〈創造魔法〉を鑑定した。
ルインのスキルレベルは上がっていなくても、鑑定のレベルは上がっているので、初めて見た時より細かな詳細が見れると思ったのだ。
【創造魔法lv1:自身の考える、新しいスキルを作る事ができる。既存も可能。レベルによって精度が変化する。1日の使用回数一回】
「…まじか」
「え?何が?」
「ルイン喜べ。創造魔法が使えるようになってる」
「まじか!!!」
まさかの〈創造魔法〉が使えるようになっていた。
ルインは、いつもスキルの詳細を見てはいなかったので、使用可能かは見ていなかった。
思いがけない進展に、ルインは目を丸くする。
…まぁ、そうと分かればやる事は一つ。
「どうするグレン!!何作ればいい!?」
「って言われてもな…ルインの欲しいスキルとか?」
「欲しいスキル………隠蔽?」
「あー…確かにあったら便利だが…今は別のにした方がいいな」
「どうして?」
「ルインが隠蔽スキルを覚えたとして…そのレベルは?今の俺達にはlv5が無いといけない。残りの1年で隠蔽をlv5には出来ないだろ?」
「あ……」
「後、1日の使用回数が一回になってる」
「え、じゃあいっぱい作れないのか…」
「毎日作ればいいだろ」
「……そっか!!!」
そして何だかんだ悩んだ結果、〈魔力回復〉と言うスキルを作ることにした。
初めてだし、無難且つ魔法重視のルインにはぴったりだと思ったのだ。
「じゃあいくぞ……〈創造魔法:【魔力回復】〉!!」
とりあえず頭の中で〈魔力回復〉の効果を思い浮かべつつ、右手を握って自身の前に突き出すように唱えてみた。
同時に、全身から魔力がごっそりと抜け落ちる。
「う"っ………」
途端に視界がぐらりと揺れ、食べ物が逆流するような気持ち悪さが込み上げる。
ここ最近は起こらなかった魔力切れ寸前の症状が、ルインを襲った。
「ルイン!?」
「だ…大丈、夫」
抜け落ちた魔力がルインの手の中に集まる。
やがて、荒れ狂う魔力は次第に収まり、ピカッと小さく輝くとルインの中へと戻って行った。
「ス…ステータス、オープン」
ルインは自分のステータスを表示させる。
その画面には、
【〈魔力回復lv1〉:魔力が回復する。上限2000、使用回数5回、スキル習得まで???】
と、書かれていた。
「使用…回数?」
「…ルイン、今はとにかく一回使っとけ。魔力切れだろ?」
「わかった…〈魔力回復〉」
スキルを唱えると、体から気持ち悪さが無くなった。
「……ふぅ。全快じゃ無いけど楽になった…」
スキル自体は発動出来たようで、ルインはもう一度ステータス画面を見る。
すると、さっきまで使用回数が5回だったのが4回に減っていた。
「やっぱり使える回数があるんだ…」
チート級のスキルだとは思ってはいたが、漫画やアニメの様に、ぽんぽんとスキルが獲得出来るなんて事は無かったようだ。
「…せっかくスキルが手に入ると思ったのになぁ…」
「いや、スキル自体はちゃんと作れてる。それに今は使用回数はあるが、[習得まで???]って書いてあるんだ。いずれは手に入るって事だろ」
「なるほど…」
「今日は初めてだったし、これから色々と試していけばいいだろ?」
……
……
新しいスキルが使えるようになってからと言うもの、グレン達は毎日の鍛錬や勉学とは別に、〈創造魔法〉の検証をするのが日課になった。
1日一回、ルインは〈創造魔法〉を使う度に激しい目眩と猛烈な吐き気を繰り返し、それに耐えながらもスキルの検証を続けた。
そして、毎日の努力の甲斐もあってか〈創造魔法〉のレベルはlv2に上がっていた。
努力と根性の結果、レベルが上がった事によりわかったのは、
〈創造魔法lv2〉で1日に使える回数が2回に増え、作ったスキルは、〈創造魔法〉のレベルに連動。
今のレベルは2なので、全てlv2になった。
作ったスキルは最大3つまでストック可能で、それより多く持つ事は出来ず、押し出し式で古いものから消えてしまった。
連続で同じスキルを作ると上書きされ、使用回数も上書きされた。
そして、中には作る事が出来ないスキルもあった。
これは、魔力が足りないのかレベルが足りないのか…何が原因で作る事が出来ないのかはわかっていない。
予想としては、どれだけ明確に想像出来るか。と言うのが鍵になるのだと考えた。
例えば、かすり傷を治すのは傷薬を塗るか、初級魔法である"ヒール"を使えば治る。
風邪をひいた時は、風邪薬を飲むか、"クリア"と言う魔法を使えば治る。
…では、人が死んでしまった時に蘇る方法は?と問われたら、そんな薬や魔法は存在しない。
"どうすれば人が蘇るのか"…その明確なモノが想像出来なければ、蘇る薬や魔法…言い換えれば、〈スキル〉と言うものは作る事が出来ないのだろうと思った。
……………
…………
………
……
…
時は更に進み、検証を始めてからそろそろ5ヶ月が経とうとしていた。
「あ〜…流石に挫けそう…」
毎日のように鍛錬や勉学に励み、検証という名のスキル作りに没頭していたグレン達だったのだが…
結局〈創造魔法〉のレベルはそれから上がる事はなく、スキルの習得も出来ずじまい。
「……グレン〜鑑定のレベル上げて〜…」
「そんな事言われてもな…あれから結構スキルを使ってはいるが、レベルは上がってない…」
「「………うーん…」」
詰んでしまっていた。まさにどん詰まりである。
「当分は地道にやっていくしかなさそうだなぁ…」
「制限つきだがチート級なのは変わりない…。"普通なら使えないスキルが使える"ってだけでも破格物なんだろうな」
休校期間終了まで残り少ない。
学園が始まってしまっては、毎日のように検証出来る事は減ってしまう。
焦る気持ちはあるが、こればかりはどうしようもないので、様子見するしか無いようだ。
―――コンコン。
「うーん…」と自室で唸っていた2人に、突然ドアからノック音が響いた。
「白虎!ハク!隠れろ!」
『はいよー』「きゅいっ!」
「わー!!鳴いちゃダメだって!」
「グレン様、ルイン様…レーナです。入っても?」
「「ど、どうぞ!!」」
一瞬にして白虎は腕輪に変化し、ハクはベッド下に隠れた。
ちなみに普段の白虎とハクの寝床は、完全な死角になっているベッド下でいつも寝ている。
「…失礼いたします………何かありましたか?」
しゅばっ!っと立ち上がり、ルインは万歳の状態、グレンはルインの頬を両手で摘んで固まった。
部屋に入ってきたメイドであるレーナは、そんな2人の行動に、怪訝そうな眼差しをグレン達に向けた。
「何も無い、遊んでたんだ!」
「…………あぁ、遊んでた」
じっとりと刺さる視線に、背中から汗が吹き出る。
だが、特に何か言われる事もなく…グレン達はホッと胸を撫で下ろした。
「と、ところでレーナ。何かおれ達に用事?」
「お2人宛にお手紙が。…早めに目を通された方がよろしいかと思いましたので…これがその手紙です」
レーナから受け取った手紙は3通ほどあった。
一つは学園で友達になったアーリーから。
せっかく友達になれたのに、休校になってしまっていたため会う事は出来ず、手紙のやり取りをしている。
二つ目はメイ姉様から。
本来グレン達同様、メイラも屋敷に戻るはずだったのだが、同級生の友達が第二学園へと行く事になり、それについて行く事になったので今は屋敷にいない。
最後はルー兄様から。
こちらもメイラと似たようなもので、ヴィンセントの友人兼護衛役という事もあり、まさかの期間限定王城暮らしをしているのだ。
国王曰く、
「――ならば城に住むが良い。わざわざ屋敷を行き来するより楽であろう。王城で勉学に励めば良いのだ!はははっ!」
と言ったらしい。…とんだ権力の乱用である。
「いつも通りの手紙だと思うのだけど?これなら後で渡しても良かったのに…どうしてわざわざ?」
「手紙のお二つは後でも良かったのですが…ルトア様からのお手紙が……」
「「………??」」
「お手紙はルトア様からであるのも確かなのですが、その…第三王子殿下からでもありまして…」
「「…え」」
「…更に先程王城より使者が参りまして。明日この屋敷にルトア様と第三王子のヴィンセント殿下がおいでになるそうです」
「「……はあぁあああぁぁ!?!?」」
驚きの余り叫んだ2人の脳内には、にっこりと周囲に花を飛ばしながら、ひらひらと手を振るルトアの姿が。
すぐにグレン達は、ルトアから届いた手紙を開ける。
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グレンとルインへ
2人共、元気にしてるかい?
……って、毎度こんな事しか聞いてない気がするけど
まぁ、いつも通り僕は元気だよ。
最近は騎士団の訓練にお邪魔させてもらったりしてるんだ
たまに父上の姿も見れるんだよ。
いつか2人も王城に来れる日が来たらいいんだけど…
あぁ、ヴィンスが2人に会いたがっていたな
じゃあ2人とも体調には呉々も気をつけるんだよ。
ルトアより
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グレン、ルイン
よう!元気にしてるか?
俺は友人に手紙を送るのは初めてなんだ。
ルトアのを見てたらな、俺も書いてみようと思った。
でも、何を書いたらいいかわかんねーから、その事を兄上に相談してみた。
そしたら、「恋文か?」って勘違いされたんだ。
…あぁ、流石に誤解だと言っているから安心しろ!
合ったら話しようぜ
またな。
ヴィンセント・レウス・エリュグリンダ
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「「……………………」」
どれを最初に突っ込めばいいのか。
ヴィンセントの友人兼護衛役であったとしても、一応は学生であるルー兄様が、どうなったら国の騎士団の訓練にお邪魔させて貰えるようになるのか。
そして、誰が王城になど行くものか。あれは魔窟だ。
さらに一応は友人…とは言え、第三王子から手紙なんて貰っても扱いに困る。
でもって、何を相談しているんだあの王子は。
第三王子であるヴィンセントの兄と言ったら、第一か第ニ。
恋文か?何て勘違いまでされるとか笑えない。相手は男だぞ…
そして、やたら文字が達筆でいらっしゃるのが釈……これはただの八つ当たり。
最後に…手紙では無いが、こっちに来るってなんだ…
ルー兄様も何故止めない?何を考えているのか。
いくつもの疑問と困惑が、ぐるぐるとグレン達の脳内を駆け巡っていた。
途中、はっ…!っと思考が現実に戻ってきたので、レーナを部屋から退室させる。
「……やばい」
「やばいな」
隠れていた白虎とハクが2人に寄り添い、いつもの様にルインはハクを撫でる。
そしてグレンも、白虎の頭を優しく撫で始めた。
普段では撫でる事などしないグレンに、信じられないものを見た…と、白虎はあんぐりと口を開ける。
動揺が漏れてるよ!なんて指摘はもちろんしない。
そんな事よりも今は明日の事の方が重大だ。
何せこの国の王子である。
いくら接点が多いとはいえ王子が家に来るなど、早々起きる事じゃ無い。
使者が来たと言う事は、公認であるという事。
今頃屋敷内は王子を迎える準備で大慌てだろう。
もちろん、グレン達も慌てている。
何せ〈隠蔽〉のレベルが足りていない。
公認で来るという事は、ルー兄様以外の護衛も、もれなくついてくるという事。
どの程度の護衛が来るかはわからないが、今屋敷外の人に会うのは非常にリスクが高いのだ。
「……逃げるか」
「…え?グレン?」
まさかの逃亡を図ろうとするグレン。
どう考えても愚行でしかないとわかるはずなのだが…
今のグレンの脳内は、ただの脳筋ゴリラ。
「お、落ち着こ??……あ、ハクも撫でる?」
白虎とは反対側にハクを持っていく。
両手に花…ではなく両手に獣。
そのまま無意識に2匹の獣を撫でる。
ここか?ここがええんか?とばかりにグレンの手が動く。
もふもふ、ふわふわり。
その手つきにだらんと体が崩れ、白虎達の喉がぐるぐると鳴った。まるで猫である。
白虎もどさくさに紛れ、グレンの魔力を貰ってもぐもぐ。
怒られないとわかったのか、調子に乗って魔力をゴクゴク。
美味い、美味すぎる!
そんな白虎に『怒られても知らないぞ』とルインは忠告だけしておく。
そして…グレンの魔力が半分を切った所で、現実に戻ったグレンの手が、がしりと白虎の頭を鷲掴んだ。
『あ』
あと少し、もう少し、もうちょっと。と、ずるずる魔力を奪っ…貰ってやめ時を逃した白虎は、時すでに遅し。
「………何をしている?…なぁ、白虎?」
メリメリ、ミシリ。
白虎の頭から悲鳴が鳴る。ついでに口からも悲鳴が聞こえた。
声変わりした?なんて言われる程の重低音を響かせながら、グレンは白虎をギロリと睨んだ。
自分が白虎を撫でていた事は、もちろんスルー。
危険を察知したハクは、すぐさまルインの元へと戻る。
『あ…主…、聞いてくれ』
「……………」
掴んだ手から、小さくパチリと雷が走る。
同時に、もわりと白虎の頭から煙が上がった。
『い、〈隠蔽〉のレベルが足りないだろ?それをどうにか出来るかもしれない!!』
「…………で?」
それを聞いた瞬間、手から出ていた雷がピタリと止んだ。
鋭い視線を向けられた白虎は、あっせあっせとしながら、身振り手振りで話しだす。
『俺っちの稼いだ経験値を渡すんだ。そしたらレベルが上がるかもしれない!』
実はグレン達の過去の話を聞いてからと言うもの、白虎は夜な夜な屋敷を抜け出し、街の外にある森へ1人で魔物を狩りに行っていた。
本来なら経験値がグレンに入るはずなのだが、白虎はそれを溜め込んでいた。
経験値というのは目に見えるものではないが、魔力を流す事で渡す事が出来る。
本当は学園が再開するギリギリまで溜めて、渡した時に、急にレベルが上がった!と、サプライズの様な事を考えていた。
「……そういう事なら、さっきの事は見逃してやる」
流石に、わざわざ魔物を倒しに行ったのに、ご褒美ををあげないなんて事はしない。
…これ以上は魔力は渡さないが。
「んで、白虎の魔力を貰うにはどうしたらいい?」
『それは簡単だ!』
ほらよ。と、白虎はグレンの額に、自分の右手をぴとりと当てた。
冷たい肉球の感触と同時に、全身にぶわりと魔力が広がる。
地面にごろりと寝転んだ時の様な、冷たい様な、硬い様な…それでいて静かな魔力。
『もういいぜ』
白虎の声で、無意識に閉じていた目を開き、そのままステータスを表示させる。
「……………上がってる」
画面には、〈隠蔽〉がlv5と表示されていた。
『おう!よかったな!!』
どうよ!っと腰(?)に手を当てて白虎はドヤる。
その瞬間、ふと、グレンの肩の力が抜けたように思えた。
それを見た白虎は、ニッと笑ってルインを見る。
目があったルインも、つられて大きく笑った。
……
……
「そういえば、他にも上がったのがあるな」
「いいなぁ、グレン。おれより魔力高いじゃん」
ステータスを見てわかったのは、〈感知・遮断・隠蔽lv5〉の他に、〈鑑定〉がlv4、魔力が8000に上がっていた。
そして、魔力属性の【空】と【時】がC +にもなった。
『ん?ルイン、おめーさんも上がってるぜ?』
白虎の言葉に、へ?と間の抜けた声が出た。
ルインも自分のステータスを表示させる。
魔力属性がグレンと同じように上がっており、魔力に関しては、1万になっていた。
「…え?なんでおれのも上がったの?魔物を倒してきたのは白虎だけだろ?」
『あぁ…俺っちの主は主だが、それ以前に狐っ子の守護者でもあるからな、別の繋がりがあるんだよ』
白虎の主はグレンだが、同時にハクの守護者でもあるので、白虎が稼いだ経験値はハクにも入り、ハクの主であるルインにも経験値が入ったという事。
逆にハクが経験値を稼いだらルインに入り、白虎を通じてグレンにも経験値が入る、という仕組みだったりする。
ちなみに〈隠蔽〉がlv5になって、新しく自動化というのが使えるようになった。
この自動化は言わばパッシブのようなもので、今まで手動で発動していたスキルを自動で発動してくれる、というモノだ。
これで、寝てる時は発動しなかった〈隠蔽〉も、常に発動している状態に出来るようになったのだ。
更に嬉しい事に、魔力が8000を超えたお陰か自動で発動している時は魔力の消費が無くなった。
これは、自然回復量よりも使用量が少ない為だと考えた。
「ありがとな!白虎!」
『おう!皆レベルが上がって俺っちも嬉しいぜ!』
「きゅ〜〜!!!」
ルインはそう言って、わっしわしと白虎の頭を撫でた。
ハクも撫で欲しかったのか、ルインに頭を擦り付ける。
「白虎」
そんな彼らを見て、グレンは白虎の名前を呼んだ。
『どしたんだ?主』
「…………」
呼ばれて近寄った白虎は、何も言わないグレンに首をかしげる。
すると、徐にしゃがんだグレンは、ポンっと白虎の頭を軽く撫でた。
「…………ありがとう、助かった」
そう言って、すぐに白虎から手を引く。
グレンはそのまま部屋を出て行ってしまった。
『…………俺っちは夢でも見てるのか?』
本当の意味でお礼を言われ、撫でられた事などなかった白虎は、動揺の余り器用に自分の頬を引っ張った。
…が、痛みはなく、みよーんと、ただ頬が伸びただけ。
「…あれは訓練場に行ったかな。当分は戻ってこないだろうし、おれ達だけで明日の対策でも考えておくか」
「きゅいきゅいっ!」
ピリリとルインに繋がる感情は、やっぱり暴発している〈共有〉スキル。
前世でも、元々無いにも等しかった2人のプライバシーなんぞ、この〈共有〉のお陰でほぼゼロである。
グレンの気持ちやら、どこに向かうのも、暴発してしまえばルインにはバレバレだった。
グレンが部屋に戻って来るや否や、感極まっていた白虎がいきなり飛びついた。
だが既に優しさは消え、速攻で引っ剥がされた挙句、雷による電撃をくらった。
その夜、白虎はグレンから魔力を貰う事が出来なかったのだった。




