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リベンジとその後


あれからリベンジを決意したグレン達は、何故だか3人(?)で念話が出来た為、喋る剣を交えて作戦会議中だ。


『――んでもって、大鬼(オーガ)の弱点は角と足だ。角を折れば魔法は使えなくなるし、足は装甲が薄い。その代わり腕は殆どダメージが効かないって言うおまけ付きだ』


もちろん、相手は待ってはくれないので攻撃は全て絶賛回避中である。


『じゃあ目に剣が刺さらなかったのはどうしてだ?、ぅおっと』

『あれは魔法のせいだろうさ。俺っちも何度も戦った事があるわけじゃぁねーから、確証は無いがな』

『って事は、角を折ればいい?、"土壁(アースウォール)"』

『まっ、簡単に言えばそーゆー事だ』

『なら俺は、角を切る為に出来るだけ前に出る。援護頼んだ』

『任せろ!やっと後衛職っぽい事が出来る!!』


やる気満々だぜ!と意気込むルイン。


真っ先に突っ込んで行ったのはお前だろ。とグレンは思ったのだが…それは言わないでおく。



「さっきまでは散々だったからな!そろそろお返しだ!!"サンダーアロー"!」


回避に専念していたのを止め、ルインの魔法で雷の矢が一斉に大鬼(オーガ)へと飛んでいく。

それに対して大鬼(オーガ)は攻撃をやめ、ルインの放った雷の矢を、右腕を払う事によって塞いだ。


その隙にグレンも角を切るべく、一気に間合いを詰める。

身体強化を強め、ドッと地面を蹴って飛び上がり、角目掛けて剣を振った。


…が、そう簡単にはいかず、反対の腕で剣を受け止められ弾かれた。


「…っ!!」


大鬼(オーガ)はそのまま、右腕を振りかぶる。

グレンは即座に剣で防御の姿勢を取り、攻撃を無効化した。


「もう一回!!」


ルインはもう一度同じ魔法を2回ほど放つ。

時間差で放たれた矢は、一つ目は塞がれるが、後からの攻撃が右足へと命中した。


大鬼(オーガ)は「ゴアァアァ!!」と、怒気の含んだ叫びを上げ、そのままの勢いで両腕を地面に叩きつけた。


ドゴォッと地面が爆ぜ、辺りに土煙と共に割れた土や砂が舞う。


「…!ごほっ、ごほっ!!」


咄嗟に後方へと下がったグレンだったが、砂埃を盛大に被って咳き込んだ。


「…あっぶねぇ。やけくそすぎんだろ…ルイン!!」

「了解!!……"水雨(ウォーターシャワー)"」


グレンの声で、ルインはすぐさま魔法で大鬼(オーガ)の周りに小さな雨を降らした。

規模はとても小さいが、それと同時に舞っていた砂埃は元に戻り視界が晴れる。


「水を被ったなら効くよな!"サンダーアロー"!!」


さらに矢の量を増やし、一斉に放つ。

グレンもそれを見て同時に駆け出し、後ろへと回り込んだ。


『右足を狙え!にいちゃん!!』


グレンは、大鬼(オーガ)が矢を振り払う動作をしたのを見て、直ぐに剣の指示通り右足を切りつけた。


「矢のお返しだ!」


皮膚が裂け、右足から血が吹き出る。


「ガアアァアァァッ!!」


大鬼(オーガ)はバランスを崩し、ドシャリと地面に膝を着いた。

それでも、すぐに起き上がろうと身体を動かすが、パチパチと体の周りに雷の線が飛び、ダメージはなかったものの、痺れた様に立ち上がる事が出来ない。


グレンはそれに気づき、すぐさま頭へと移動して、角を切り裂いた。


再び叫び声を上げる大鬼(オーガ)を見て、そのまま首を落とすべく剣を振るう――


…その瞬間、大鬼(オーガ)の右腕がぐわりと動き出し殴りかかってきた。


「!!」


「"土壁(アースウォール)"!!」


だが、見ていたルインも咄嗟に魔法で壁を作り、当たると思ったグレンへの攻撃を塞いだ。



――ザンッ!!



そしてもう一度狙いを定め、今度こそ、大鬼(オーガ)の首を切り飛ばした。

ビクビクと小さく痙攣した体は、ぼとりと落ちた頭と共に倒れ、地面を血に染めていく。


「……………」


剣に伝う血を振り払い、グレンは無言のままそれをじっと見つめた。



少し離れた場所に居たルインがグレンの元へ駆け寄る。

肩越しに振り向いたグレンは、苦笑いを浮かべた。


「…終わったな」


最初こそ手こずったが、2人で戦えば思っていたより余裕がうまれ、最後は呆気なかった。

魔物を切った感触が未だに手から離れないではいるが、それよりも不思議と落ち着いている自分に驚いた。

ルインも、地面に広がる赤黒い液体を見ても、特に取り乱したりはしていないようだ。

前世のゲーム環境の影響か、それとも2人の性格か。

異様にも思えるこの状況で既に事切れた死体を見つめる。


「……これからどうする?」

「どうするって、何が?」

「何がって、この死体。このままにするのやばく無いか?」

「確かに…」


そこで、さっきまで無言だった剣がカタカタと喋りだした。


『なぁにいちゃん達。見た感じ全属性持ちだろ?だったら空属性の"収納"、使えねーのか?』



"収納"とは、空属性の魔法で、別空間に物を出し入れ出来る便利な魔法だったりする。


「まだその魔法は使えないんだ」

『そのステータスで?』

「あぁ。このステータスで………は?今何てった?」

『だからそのステータスなのに"収納"使えねーんだなって……あぁ、にいちゃん達双子か。それに〈共有〉?…2人共おもしれースキル持ってんじゃん』


カタカタと楽しそうに剣が喋る。

…だが、それを聞いていた2人は唖然とした。

何故ならグレン達は隠蔽の魔法と、両親から貰ったピアスでステータスを隠していたからである。

すなわち、この剣にはそれが通用してない訳で…


「………なぁ、喋る剣さん?もしかしておれ達のステータス見えてんの?」

『そりゃぁ俺っちを持った事のある奴ならステータス見れるぜ?』


当たり前だろ?…と、カチカチと剣が笑う。


「…………おい」

『んぁ?なんだ黒いにいちゃん』

「いろいろ聞きたい事があるんだが、ひとまず死体をどうにかしたい。何か良い案はないか?」


空を見上げれば、日はさらに傾き、そろそろ夕暮れ時と言った所だろうか。

どう言い訳を考えるかは別として、流石にそろそろアーリー達の所に戻らないといけない。


…決して忘れていたわけでは無い、はず。


『なら精霊に頼むのが一番手っ取り早いだろうな』

「精霊…」

「あ。じゃああの3人に頼んでみようよ!」


ルインはそう言って、離れてこちらを見ていた精霊達に駆け寄った。


「なぁなぁ、精霊さん」

『あらルイン、お疲れ様。それで、どうしたの?』


ルインの言葉に、赤い髪の精霊が答える。


「えっと、さっきは魔力くれてありがとう。それでさ、あの死体を片付けたいんだけど、精霊さん達ならどうにか出来るって聞いて…頼んでも良い?」

『いいわよ。空に風もいいでしょ?』

『うん。問題ないよ』

『………元はと言えば僕達のせい』


赤い精霊が他の精霊に聞くと、手伝って貰えるみたいだが、僕達のせいとは何だろうか。

最初に見た時も暗い表情をしていたから何かあるんだろう。


「ルイン。精霊は手伝ってくれそうか?」


遅れてやって来たグレンは、若干当たりを見渡しながら話しかけて来た。


「うん、手伝ってくれるって。どうするかは聞いてないけど」

「………あぁ、ここか」


じっと目を凝らして、辺りを見る。

グレンにはハッキリとした姿は見えないが、歪んだ場所が3つ程あるのが見えた。


「……なぁ、精霊」

『何よ!!!!』


多分火と呼ばれていた声が、グレンに突っかかって来た。

とりあえず無視を決め込む。


「………空、いるか?」

『いるよ。どうしたの?』

「手伝って貰えると聞いた。だが、具体的にどうやって処理するのかと思ってな」

『……素材とか貰っていい?』


魔物を倒すと、その死体からは素材が手に入る。

種類によって物は変わるが、魔石だったり皮だったり。

それらを加工して防具やら魔道具やらと、様々な物に使われたりするのだ。

特殊個体の大鬼(オーガ)なら、素材の量はかなりあるだろう。

だが、今の2人には"収納"は使えない。


「ルイン、大鬼(オーガ)の素材全部渡していいよな?どうせ持って帰れないし」

「いいよー」


ルインもそこは気にして無いようだ。


『…ありがとう。でも、お詫びも兼ねて魔石は持って帰って』

「…お詫び?」

『……うん。あの大鬼(オーガ)が現れたのは、多分僕達のせいだと思うから』


空が言うに、どうやらあの大鬼(オーガ)は精霊達が空間に過度に干渉したせいで現れてしまったモノ…と言うらしい。


素材が欲しいのは、魔力に変換して魔法を使うためだそうで…それでも魔石だけは申し訳ないから持って帰って欲しいと。

まぁ、貰えるならそれはそれでいいので問題無い。


「後…すまないが、この剣とあの変な生き物を預かっていてくれないか?これから急いで戻らないと行けない所があるんだ」

『……その格好で?』


そう言われて、気がつく。

グレンとルインは、"ヒール"で傷などは治ってはいるものの、服は所々破れ、滲んだ血の跡はそのままこびりついている。


どう見ても、普通に帰ったら大騒ぎになるだろう。


どうするかと悩んでいたら、空はお詫びも兼ねて空間転移でグレン達を行きたい場所に送ると言ってきた。

思っていたよりも素材が豊富にあるらしく、魔力的に問題もなく、大鬼(オーガ)の処理と合わせると、助かったのでお願いする事にした。


そうと決まればと精霊達はさっそく処理を終えて、グレン達の寮部屋に送ってもらった。

初めての転移体験だったが、余韻に慕っている暇もないので、すぐに着ていた予備の服に着替える。


貰った魔石を机に置き、喋る剣と未だ目を覚さない狐もどきは部屋にいてもらう事にした。

そしてまた精霊に頼んで、元いた森の中の、アーリー達が待っていた場所の近くへと転移してもらった。


「助かった」

「精霊さん達ありがとう」

『ふふん!アタシ達ならこんな事楽勝よ!』

『お礼なんていいよ。元はと言えば僕達のせいだから』

『………火は何もしてないでしょ』


精霊達…特に空と風にお礼を言い、グレン達は元の場所へと急いで向かった。



……………

…………

………

……




アーリー達がいた場所に向かう中、森は既に日が届かず、隙間から微かに見えるオレンジ色は、あとほんの少しで色を失うだろう。

ルインは暗い足元を照らすように、光魔法"ライト"を使って、グレンは〈感知〉を使って森を抜けた。


〈感知〉で誰かいるのはわかってはいたが、グレン達が休憩していた場所には教師と思われる男女5人程が待機しており、その中にはグレン達を担当していた教師もいた。


暗がりに突如現れた小さな光と、ガサリガサリと草をかき分ける音に、丁度森を抜けて来たグレン達と教師達の視線がかち合った。


お互いに少しビクッと体を硬らせたが、グレン達を担当していた教師のジョルナンが、クワッ!と目を見開いて、すぐ様駆け寄って来た。


「貴方達!何処へ行っていたのですか!!!心配したのですよ!!!!」


がしりとグレン達の肩を掴み、怒りながらもジョルナンは怪我は無いかと体をあちこち見ている。


「「えっと……」」


これまでの事をどう説明…基、言い訳を考えるのをすっかり忘れていたグレン達は視線を宙にふよふよと動かす。


どうするかと念話で話していると、他の教師達から今は学園へ戻ろうと言ってきた。


「そうですね。残っていた学生はこれで全員……貴方達、後で少しお話しがあります。…わかりましたね?」


有無を言わさない物言いに、グレン達は「はい」と一言言うだけで、教師達とようやく森から抜けるのだった。


……

……


学園へと戻って来たグレン達は、教師のジョルナンに、一つの空き部屋へと案内された。


部屋に入ってみると中は休憩室のようで、テーブルやソファーが並び、丁度そのテーブルの上に飲み物やお菓子などを並べていた女性がこちらに気がついた。


「ジョルナン先生、ノックくらいして下さいよ。わかってはいても、びっくりするじゃないですか」

「あ、あぁ…申し訳ない。つい癖で…」

「まぁいいです。それよりジョルナン先生、校長先生に呼ばれています、今伺って来たらどうですか。学生2人の休憩も兼ねて」

「……そうですね。グレン君ルイン君、少し席を外します。ここで休憩していて下さい、またすぐ戻って来ますので」


「では後ほど」と言ってジョルナンは部屋から出て行った。

残されたグレン達は、部屋にいた女性にソファーにどうぞと言われ、ついでにお菓子でもと勧められた。


そして女性は、そのまま部屋を出て行ってしまい、グレン達2人が部屋に残った。


「「……どうするよ」」


勧められたお菓子や飲み物…ジュースを手に取り、黙々と飲み食いしていた2人は、ふと止まった手と同時に声が重なった。


「……どうするも何も言える訳ないだろう」

「………だよな…。信じてもらえるかどうかじゃなくて、絶対言ったらやばいのはわかる」

「何に対してなのかも分からないし、大鬼(オーガ)の事なら証拠がない。そもそも俺達は、森へ入って行っただけだからな。まぁ……トイレ…とだけは言ったが……」

「ぶはっっ!!!」


グレンの「トイレ」の言葉に、ルインは飲もうとしていたジュースを吐き出した。


「きったねぇな…」


ゴシゴシと袖で口を拭ったルインは、引き気味のグレンをジロリと見返した。


「だってトイレって!!それじゃあおれ達何時間トイレ行ってたんだよっ」


ルインは、「おれ達の〇〇こ長すぎ」と、顔を赤くしてジタバタと体を揺らした。

それを聞いて、グレンは堪らずルインの頭を引っ叩く。


「阿呆、何言ってんだ。トイレはその場凌ぎで言ったことだ。それと一括りにすんじゃねぇよ」

「だって…他に言える事なんて無いじゃん」

「あのなぁ……。とにかくだ、その後迷ったとでも言うしか無いだろう、事実俺達は迷った訳だし」


実はグレン達が一度寮に戻った時に、ルインと精霊達から詳しい話を聞いていた。


精霊達は元々あの森で遊んでいたらしい。

そしてグレン達を見つけ、追いかけっこでもしていると思った。

そこで悪戯をしてみようと言う話になり、波長の合うルインの方に手助けをした。反対にグレンの方にはハンデをつけたらしい。

そこまでならまだ良かったのだが、ルインはそれよりも前に飛び出しており、その原因は、遊びの最中の空間の歪みから出てきた大鬼(オーガ)が、その時偶然居合わせた喋る剣と寝ている狐もどきを襲い、助けを呼んだせいだった。


まとめて見れば、最大の原因は精霊達だった訳だ。

とんだお騒がせさん達である。


とりあえずその時に、グレンは精霊達を鷲掴んだ。

特に火と呼ばれた精霊を重点的に握っておいた。

ルインには精霊の姿が見えていたので、どれが火なのかすぐに分かったからだ。


『何でアタシだけ強いのよ!!!』と、抗議の声を上げていた火だが、散々騒ぐだけ騒いで特に何もしなかった火の精霊にお仕置きをしたまでである。



そろそろお菓子やジュースが無くなる頃に、コンコンとノックの音がドアから鳴り、少し前に出て行ったジョルナンと、その後に部屋から出て行っていた女性が入ってきた。


「お待たせしました。時間も時間ですし、早速ですが少し詳しい話を聞きたいと思います」


グレン達と向かい合うように座ったジョルナンは、懐からメモ用紙のような物を取り出した。


「ちょっとジョルナン先生。私を忘れないでください」

「あぁ…えっと、こちらの女性は…――」

「私はセルカ・ロアと申します。よろしくお願いしますね」


そう言ってジョルナンの隣に座ったセルカは、この学園の教師では無いそうだ。


「ではまず…お二人共、本当に無事で何よりでした―――」


それからジョルナンは、グレン達が居なくなった後の事を話し始めた。


2人が居なくなってから少しすると、他の生徒達も戻ってきた。

そこで、突如森から魔物の強烈な咆哮が響き渡り、地響きや、森の深い方角の方から煙が上がった。

当然、生徒達はパニックになる。とにかく安全を第一に、生徒達を鎮め、早急に学園へ戻る事になった。

だがアーリーが、グレン達がまだ戻って無い事をジョルナン達に話したそうだ。


緊急事態に救難信号を出した教師達は、ジョルナンを含めた5人の教師達を残し、他の生徒達は残りの教師達と共に学園へ戻って行った。

救援を受けた学園側は、即座に学園にいた教師や警備の者を派遣し、グレン達を探すと同時に、原因究明の為森の中を捜索した。

だが、森の中は下級の魔物すらおらず、そして煙が上がった場所へ向かおうにも、何故か辿り着くことが出来なかった。

その間にも何度かの咆哮や地響きなど繰り返された。

そして突然、それらがピタリと止んだのである。


そこから、すでに辺りは暗くなっていた為、派遣された人を除き、最初にいた教師達5人は休憩していた広場に戻り、ギリギリまでグレン達が戻って来る事を信じて待っていた。

だが、真っ暗になってはどうしようも無く、捜索や究明は派遣された人達に任せ、教師達は帰る準備をしていた所で、グレン達と会ったという事だった。


グレン達が見つかったという事は既に報告がされており、今は突如起こった出来事の原因究明の為に未だ調査が行われているらしい。


「「は、はは、は…」」


それを聞いたグレン達は、乾いた声しか出なかった。


偶然と言えば偶然だが、精霊達のせいで空間が歪み、現場に辿り着く事はできず。そしてグレン達と大鬼(オーガ)の戦闘で咆哮や地響き、魔法による爆炎などなど…

どう考えても、原因はグレン達と精霊、そして大鬼(オーガ)であった。


事の経緯を聞き、ジョルナン達からは、グレン達が居なくなった後どうしていたのかを聞かれた。

本当の事を話すのも確かに良いとは思ったが、それを話せば色々と面倒になるのはわかりきっていたので、


"トイレに行った後、広場に何故か戻れなくなった。咆哮や地響きがあったので近くの草陰に隠れていた。それが止んだ後はとりあえず歩いていたら広場に着いた"


と言った。


これを聞く限り、グレン達が何かしたわけでも、危ない事をしたわけでも無いので、今後は気をつけるようにとちょっとしたお小言だけをもらって、時間的にも既に夕食時だったのでグレン達はそのまま食堂へと移動した。


食堂にいた生徒達は、今日起こった出来事で話が持ちきりだった。

一緒に授業を選択していたAクラスの生徒が、グレン達に気が付き、無事でよかったねと声をかけてきた。

アーリーはというと既に部屋に戻っているらしく、一番心配して、明日すぐに顔を見せるといいよと言われたのでそうする事にした。




夕食を終え、ドッと疲れが出てきた2人は自分達の部屋へと戻るべく、重たい体を動かしてそのそのと階段を上がる。


「あ"〜〜〜づっがれ"だぁ"ぁ"〜〜…」


ルインの長〜い溜め息が、グレンの頭に響く。


「………うるせぇ」

「だってさぁ〜〜〜〜…」


とにかく寝たいと2人は思いながら、ようやく自分達の階にたどり着く。


「あーー…そういや、部屋にあの剣と狐もどきがいるんだっけか」

「あ。そうだ…狐さん大丈夫かな"ヒール"はちゃんとしたと思うけど…」


部屋の前につき、グレンがドアノブに手をかけると、魔法によって鍵が開いた。

グレンがドアを開け、ふとベッドを見ると()()はいた。


『あ』


聞き覚えのある声の主は、確かに何度か聞いた声。

だが、現実を受け入れるのを拒絶したグレンは、スッとドアを閉めた。


「え?グレン?どうした…入んないの?」


「もう嫌だ」


そう言って、ドアの前で頭を抱えてしゃがみ込んだグレンにルインは疑問符を浮かべた。

何が何だかわからないので、グレンを避けて、ルインは再度ドアを開けた。


『よっ!にいちゃん達!遅かったじゃねーか!!』


視線の先、ベッドに横たわっていたあの狐が目を覚まし、こちらを見ていた。

だがそれよりも、()()()()()()挨拶してきた()()は何なのか。

いやわかるのだ、声は。


ついグレンが頭を抱えてしゃがみ込んだ理由。


ベッドの上には目を覚ました狐。その隣、大きさは狐と同じぐらい。

体は白い毛に覆われ所々に黒い模様が走り、その後ろには、ふよりと動く長めの尻尾。

笑みを浮かべ、口元からはにょきりと伸びた牙。

片手を上げて見えるプニっとした肉球は、綺麗なピンク色。


そして聞き覚えのある声とこのおっさん口調は、確かにあの()()()なのだ。



「は?」



そう…片手を上げて笑うそれは、どう見ても 虎 だった。



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