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双子の選択授業


翌朝。


寝起きの鈍い体を起こし、グレンはベッドから起き上がる。

窓の扉を開け、くらりと眩しい朝日に目を瞑りながら、朝独特の、冷たい匂いの空気を深く、ゆっくりと吸い込む。


そこで、ふわぁっと欠伸を一つ。


それから、未だ寝ているルインを起こし、2人は身支度を整え、寮の食堂で朝食を済ませた。


時計を見れば時間も丁度良く、転移門を利用して学園へ向かった。


自身のクラスのドアを開け、定着しつつある席へと進む。

すでにそこには、昨日から友達になったアーリーがいて、片手を上げて笑った。


「おはよー!アーリー!」

「おはよう、ルイン。グレンもおはよう」

「あぁ、おはよ。アーリーは来るのが早いな」

「そうかな?朝は強い方だから…自然とね」


席に座り、いつもの様に3人は時間になるまで雑談をする。


鐘がなるギリギリに、これまたいつものように三馬鹿が入ってきた。

今日は入って早々、グレン達をひと睨みして何も言わずに席へと座った。


直ぐに先生も入って来て、今日は担任のゴロガンと副担任のアンがいる。

…今日のアン先生は落ち着いている様だ。


「皆おはよう!今日は事前に伝えていた通り、選択授業の説明だ。昨日に引き続き場所を移動する。それと…」

「皆さんおはようございます。今日の説明会ですが、午前中は大まかな説明を行い、午後は各希望する選択授業の詳しい説明、又は体験という形になっています。これから渡す用紙に希望3つを書いてお昼頃提出してください。その中から午後の割り振りをします」


生徒達は用紙を貰い、会場である体育館に向かった。


会場につくと、今年入学した学生がずらりとおり、クラスごとに別れ待機している。

グレン達も指示に従って並び、程なくして説明会は始まった。

一つにつき、数分程度の説明が何項目も繰り返される。


「グレン、選択授業どうする?」

「第一は冒険者育成」

「おれも第一は同じ。そもそも目標は冒険者だし!第二はー…魔力操作かなぁ」

「アーリーは何にするか決めたか?」

「僕は第一は魔道具製作。第二は付与魔法。第三は冒険者育成かな」

「何だ、もう決まってるのか」

「うん、魔道具製作はもちろん、どれも必要かなって」

「あれ、アーリーも冒険者育成選んでんの?何で?」

「魔石を素材として使うし、魔物自体も使う事もあるから、その足しに出来たらってね」


未だ続く説明を聞きながら、グレンは自分の用紙を裏返す。

裏面には今回選択できる授業名が並び、どれがいいかと名前を指で追う。

ふと、一つの名前に目が止まる。

それは丁度今、説明されている授業名と同じだった。



………

………



説明会が終わり、生徒達は自分の教室へと戻って、用紙に希望する授業名を記入する。

午後からは指定された場所へと向かう予定だ。


「グレン、結局何にするか決まった?」

「あぁ。第一は同じ、第二は副種技術学、第三は魔力操作」

「副種技術学…?」

「聞いてなかったのか?説明されただろ」

「いやいや、全部覚えてる訳ないじゃん!」

「…副はサブって意味。後は簡単、サブに使える武器を増やしてものにしましょうって訳だ。剣がないなら拳で、に似てるか。まぁ俺にとってはうってつけだな。メインで使う武器は長剣だが、他にも扱える武器が増えるのはいい事だと思った」

「なるほど。まさにグレンの称号にぴったりって訳か!」


「……あの、良かったらグレンの持つ称号が何か、聞いてもいいかな?」


2人の会話を聞いていたアーリーが、グレンに話を振る。


「俺か?俺の称号は〈一流者〉だ」


本当は〈統べる者〉だが、偽装しているのでそう答えた。


「〈一流者〉…。本で見た事がある…初めて使う武器でも、使えるレベルまで扱える様になるって」

「まぁ便利だろうな」

「便利って……。あ、ルインの称号も聞いていい?」

「おれは〈打ち解ける者〉!」


ルインも本当は〈精霊の導き〉だが、これも偽装している。


称号を聞いて、ピシリとアーリーは固まった。

口を開け固まったままのアーリーの視界に、ルインは、どうした?と手をひらひらと振る。


「…………僕なんかが本当に友達になって良いのか不安になって来た」

「へ?」

「2人とも、どうしてそんな平然としてるのか分からない…どう見ても、将来は決まったって言える称号…凄い…」

「あー…そう言えば、校長も似たような事言ってたな」


ふと、グレンは校長に言われた事を思い出す。

確か『羨ましい』と言っていた。


「校長先生…?あれ…もしかして、S判定が出たって人がいるって噂が……もしかして2人がそのS判定者…?」

「確かにおれ達だな!」


アーリーはそれを聞いて机に突っ伏してしまった。


「…アーリー?」


「…………本当、どうして僕なんかと…どう考えても雲の上の存在じゃないか…おかしい…絶対おかしい…」


今度は突っ伏したまま、ぶつぶつと話し出した。


「ってか、書き終わったなら食堂行こうぜ!おれお腹すいた!」


ルインは3人の用紙を取って、提出場所に置いた。

グレン達を早く早くと急かすルインに、アーリーは何処か遠くを見つめたまま、後をついて行く。

グレンも後を追い、そしてアーリーの肩にぽんっと手を置いた――


「まぁ…なんだ、諦めろ」




……………

…………

………

……




午後になり、希望した授業の割り振りが生徒達に渡された。

前半、グレンは副種技術学、ルインは魔力操作、アーリーは魔道具製作になった。

後半は揃って冒険者育成だ。


「前半は皆バラバラだな。じゃあまた後半で」

「グレン、アーリーまた後で!!」

「うん。またね」


3人はそれぞれ指定された場所へと向かう。



グレンの指定場所は武器を使う為、体育館だ。


「ここか…」


着いた体育館の扉前には、【選択/副種技術学】と張り紙が貼られていた。

中に入ると、既に来ていた他の生徒達がグレンに振り向く。

一般授業とは違い、選択授業に関してはクラス別は関係ない。

なので、見知らぬ顔ぶれが多い。

まぁ、入学してからまだ日も浅いため、ほとんどが見知らぬと言っていいかもしれないが。


「グレン!!」


不意に名前を呼ばれ、声の方へと振り向いた。

そこには何故か、第三王子のヴィンセントが立っていた。


「…………どう、して、ここに?」


どう考えても、ここにいるのがおかしい人物に、言葉に詰まりながらも声を返す。


「よっ!驚いた?」

「……驚かない方がおかしいでしょう」

「堅いな、もっと普通に喋ってくれていいんだぞ?」

『無茶を言うな、これでも、あからさまな場所は控える。そもそも第三王子がどうして護衛も付けずにいるんだ。それに、ルー兄様は?』

『ん?どうして小声?ルトアなら別の場所にいるぞ。あいつは【魔力操作】の授業場所へ行っている』

『は?ルインの所?』

「あ、やっぱルインは【魔力操作】選択してるよな」


小声を止め、予想通りだ。と笑うこの王子は一体何を考えているのか。


「あぁ、ちなみに護衛はちゃんといる。流石に一人にはさせてもらえないらしい」

「当たり前でしょう」


体育館の中、見ればヴィンセントの他にも先輩らしき上級生が数十名いる。その中に教師らしき人もいるので、もしかしたらこの先輩達は補助的立場の人なんだろうか。

ただ、その中に第三王子がいるのはおかしい気もするが。


ぐるぐると回る頭から、今度は聞き慣れた声が聞こえて来た。


「おー、みんな揃ったかー!?それじゃあ、説明及び選択授業を始めよう!!俺の名前はゴロガンだ!一応1年のAクラスの担任をしている。よろしく!」


まさかの担任がこの授業の担当だった。

続けて教師数名と、予想通り、補助役の先輩達が紹介された。

その中にはもちろん王子のヴィンセントもいる。


王子だと知らない生徒は、ヴィンセントの容姿に見惚れるか、普通に先輩としての眼差しを向けるかだ。

中には、王子だと気がついている者もごく僅かにいるみたいだが。


「早速だが、まずグループを作ってもらう。割り振りはこちらで決めておいたので、指示通りのグループで集まってくれ。そこに教師と先輩がそれぞれ数名着く。そしたら軽く自己紹介をしてくれ!」


割り振られた場所にグレンも集まった。

グレンを合わせて生徒5名、教師1名、先輩2名のグループだ。

教師が率先して話を進め、皆軽い自己紹介を済ませる。


グループといっても、生徒を2、2、1で分け、教師と先輩が1人ずつ着く。


グレンはお一人様。

そして、さも当然だと言わんばかりに、ヴィンセントがグレンに付いた。

じとりと金髪赤目の王子様を見れば、にやりとグレンに向かって不適に笑う。

悪戯が成功したと言わんばかりのその姿がどうにも腹立たしい。


「では、簡単な説明をした後に、気になる武器を持ってみよう!担当の指示に従って、どんどん色々な武器に触れてみるといい!!」


少し離れた所から、ゴロガンが全体に支持を出す。


何故お前なんだと、説明しろと言いたい気持ちを抑えつつ、グレンはヴィンセントに教えを乞う。


「………よろしくお願いします。ヴィンス先輩」



―――――――――――――――――――――――――



グレン達と別れたルインは、指定されていた場所へと向かう。

着いた場所には張り紙で【選択/魔力操作】と書いてあった。

教室に入ると、同じAクラスの生徒が数名いた。

他は知らない顔ばかりで、とりあえず空いている席に座る。

どんどんと生徒が入ってきて、あっという間に席は全て埋まった。


数名の教師、上級生だろう先輩達が入ってくる。

そこで、入って来た先輩の中の1人を見て、ルインは目を見開いた。


向こうもルインに気がついたのか、にこりと笑って列に並んでいた。


(何で!!ルー兄様がいんの!?!?!)



……

……



「―――えー、ですので、魔法を扱うには、魔力操作がどれだけ出来ているかが肝になります。これから渡す魔力水晶に自身の持つ魔力を注ぎ、どれだけ魔力を回転出来るかやってみましょう」



(…………っ!?あれっ!?やば…何でルー兄様がここに居るのか気になって、ほとんど話聞いてなかった!!!)


思考が止まっていたルインは、いつの間にか置かれているガラス玉に、何をすれば良いのか分からず、きょろきょろと辺りを見渡す。

皆、このガラス玉に手を当てて唸っている。

隣に座る生徒をチラりと見れば、ガラス玉の中は火の魔法が発動されており、ゆっくりとだが回転していた。


(このガラス玉に魔法を入れればいいのかな)


ルインは見様見真似でガラス玉に魔力を入れた。

展開された魔力は水になり、一瞬にしてガラス玉の中が水の魔法で埋まる。


―――ピシリッ


不穏な音が目の前のガラス玉から聞こえ、それは次第に広がっていく。

ピシパシッと音は進み、ガラス玉全体にヒビが行き渡った瞬間。


パキンッと一つ、甲高い音を立てて砕け散った。


それでも溢れた魔力は水となり、バシャりとルインの机に広がった。


「怪我はありませんか!?!?!」


担当の教師が慌ててルインに駆け寄り、怪我などないか聞いてくる。

そして、ルインの机に広がる破片と水を瞬時に魔法で片付けて綺麗にした。

騒つく室内を落ち着かせ、替えの魔力水晶を持ってくると言って出て行った。


別の教師から再度怪我はないか聞かれ、問題ないと言えば、とりあえず待っていなさいと言わた。

タイミングを見計ったのように、教師と入れ替えで兄のルトアが話しかけて来た。


「ふふっ、派手にやったねぇ。ルイン」


慌てていた教師よりも、落ち着いた兄。

こうなるのはわかっていたかのように、くすくすと笑う。


「…………は、ははは…」


ルインの乾いた笑い声。

とにかく説明してよと、兄を見れば、未だにくすくすと笑うルトアはこう言った。



「僕も昔、同じ事をしたよ」



少しでも目に留まり、読んで頂ける方が増え、とても嬉しく思います。


双子の人生はまだ数十ページしかありませんが、より多く、長い時間になれるよう頑張ります。


どうぞこれからも、一瞬の楽を、皆様にも。

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