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見学


はれてアウグリッドと友達なったグレン達。

その間に他の生徒達も次々と教室に入ってくる。

そして鐘がなる数分前に、あの三馬鹿も教室に入ってきた。

ホッズは辺りを見渡し、「はっ!」っと一言。そのまま嘲笑う様に歩き出す。


「ホッズ様、今日も素晴らしい!!」

「皆もホッズ様より先に来て、出迎えてくださったのだ!」

「うむ、ご苦労!!」

「「「はははは!!!」」」


入ってきて早々、訳の分からない事を言いながら、三馬鹿はいつもの席に座った。


「何あれ」

「知らねー、ほっとけ」


ふと、隣で俯いていたアウグリッドに、ルインはぽんぽんと肩を軽く叩いた。


「…アウグリッド?」

「えっ……あっ、どうしたの?」

「いや、ちょっと顔色悪くないか?って」

「…平気だよ」

「そう?」

「うん」



それから学園の鐘が鳴り、同時に教室に担任のゴロガンが入ってきた。


「皆おはよう!全員揃っているかな?今日は学園内の見学だ!!!時間は有限!早速、見て回ろうじゃないか!ほら、皆立って、立って!!行くぞー!!」


こちらも来て早々、大声と共に生徒達は教室を出され、皆ゴロガンの後について行った。




……

……




この学園はなんと言っても広い。

各場所に配置されている転移門を利用して移動しないと時間通りに目的地へ着くのは難しい。

世間でこの学園は、【第二の城】と呼ばれる事もあるそうで。

逆にあまりの広さと、部屋の多さから【迷宮】なんて呼ばれていたりもするそうだ。


クラス別の一般教室、語るには多すぎる各分野に分けられた専門室。

図書室…いや、図書館。とにかく大きい食堂、貴族向けに作られたであろうダンスホール、コロシアムと言っていい程の体育館…数個。

職員室、なぜかグレン達は入った生徒会室、早々入らない校長室。

職員が寝泊り出来る職員寮、グレン達学生が寝泊りする学生寮、馬などの動物がいる厩舎。

転々と植えられた木々…ではなく、学園内に林、又は森。


まだまだ細かく見ればもっと多いが、簡単に言っても情報量が多い。

さながら、某夢の国を歩き回った気分だ。



「…この学園やっぱりおかしくね?」

「………まぁ、広いな」

「なぁなぁ、アウグリッドもそう思わない?」

「えっ、あー…慣れじゃないかな…?それに王都だし」

「そっか、慣れかぁ…アウグリッドは王都住みなんだっけ」

「うん、僕の家は領地持ちではないから」

「あれ、じゃあ何してる家?だっけ?」


「……魔道具作ってる家。さっき話しで聞いただろ」

「そうだ、グレンごめんごめん、アウグリッドもごめんよ」

「大丈夫、気にしてないよ」

「んで、城で魔道具作ってるんだったよな!すげーよ」

「うん、だから僕も将来は魔道具師になりたいから、いっぱい勉強しないといけなくて」

「Aクラスに入ってんだから、十分凄いと思うぞ」

「あはは…グレン君にそう言われると嬉しいな」



そうしている内に、学園内を粗方周り終わり、グレン達生徒は教室へと戻ってきた。


「よーし、皆お疲れ!どうだったかぁ?この学園は広いだろう!少しずつ慣れていくといい。あぁ、今日の昼ご飯だがな、寮じゃなく学園の食堂で食べて行きなさい。それじゃ、解散!!」

「「「「「「お疲れ様でした」」」」」」」


言われた通り教室を後にして、グレン達3人は食堂へと向かった。


「今日のお昼は何にしようかなっ!」

「どうせルインは肉だろ」

「そうだけど!!グレンとアウグリッドは?」

「僕は軽いものでいいから…サンドイッチかな」

「適当」

「よーし!じゃあ自分の取ったら昨日の場所に集合で!じゃっ!後でな!」


そう言ってルインは肉が置いてあるコーナーへと我先にと向かって行った。


「………えっと…グレン君。昨日の場所って何処かな…」

「…多分俺達が昨日座って食べた場所だ。ったく…悪いなアウグリッド、一緒に行こう」

「…あはは、そうしてくれると助かるよ。それと…アウグリッドじゃなくてアーリーって呼んで。家じゃそう呼ばれてるんだ」

「そうか、わかった。俺もグレンでいい、アーリー」

「わかった、グレン!」


各自食べたい物を持ち寄って、ルインが言っていた場所へと向かう。

そこにはすでにルインが座っており、大きく手を振って待っていた。


「グーレーンー!遅いぞー!早く食べよう!!」

「あのなぁ…この場所、アーリーは知らなかったんだぞ?俺がついてなかったら遅いどころじゃないだろ」

「あっ!そっか!ごめん!じゃあ揃ったし食べよ!……ってかアーリーって何?!」

「忙しないな。アウグリッドの事だよ」

「おれも!おれもアーリーって呼んでいい?!おれの事もルインでいいから!!」

「う、うん。もちろん、そう呼んでくれると嬉しい」

「よっしゃ!グレン、アーリー食べようぜ!」


待ちわびたと言わんばかりに、肉にかぶりつく。


「……本当お前は」

「……なんか、侯爵家って言うからもっとこう…厳格というか…何というか…」

「あー…ルインは…気にしないで欲しい。まぁ俺も似たようなもんだ。それに気軽な方がいいだろ」

「そう…だね、じゃあ僕達も食べようか」

「あぁ、そうしよう」


テーブルに向き合う形で座り、3人は雑談を交えながら食事を済ませた。

他のクラスの生徒達も見学が終わったのか食堂に集まってくる。


「段々と人が多くなってきたな、そろそろ寮に戻るか…」

「アーリーは午後、何すんの?」

「んー、僕は図書館に行こうかな。あれだけ大きいから、魔道具の本とかあると思って」

「そっか。じゃあ解散!…ってアーリーも一旦寮に戻るよな」


3人は空の食器を指定の場所へと戻し、食堂を出た…が、運悪く、あの三馬鹿とかち合ってしまった。


ホッズはにやにやと笑い、グレンの隣に居たアウグリッドを指差す。


「ははっ!誰かと思えばAクラスにいる混じり物じゃないか!」


それを見て、ルインはすぐにアウグリッドを自分の後ろに隠す。


「何?何が混じり物だって?」

「あぁ?お前の後ろにいる奴以外に誰がいるってんだ、なぜかAクラスにいるE風情ってな。ってかお前には関係ねぇだろ、引っ込んでろ」


ホッズはそう言って、虫でも追い払うかの様に、ルインに手をしっしっと動かす。


「関係あるから。アーリーはおれの友達だ、混じり物何て言い方するな!!」

「友達だあ?……ぎゃはははは!!おい!混じり物!お前弱いからって金目に構ってもらってんの?!よかったなぁ?お前みたいな混じり物が金目の目に止まって!あぁ…それなら白いお前も、こんな奴を友達にするとか目が悪いのか」


ホッズの後ろに居た取り巻きの2人もそれを聞いて大笑いしだした。


「目が悪い?じゃあお前達は頭が悪いな」


大笑いしていたホッズ達は、ルインの言葉にピクリと反応する。


「は?お前今何てった?」

「この距離で聞こえなかった?もしかして耳も悪い?お前達は頭が…いや、頭も悪いなって言ったんだ」

「てめぇ!!!ふざけんなよ!!」


顔を真っ赤にしたホッズは、ルインの胸ぐらを掴もうと掴みかかった。


それを見ていたグレンはルインの手を掴み、グイッと後ろを引っ張る。掴み損なったホッズはたたらを踏み、手は空を切った。


「グレン!?!?」『"フリーズ"』


いきなりの事に驚いたルインと、同時にグレンが小さく魔法を唱える。

するとホッズの靴の足裏と床の間が凍りついた。

周りからは、急にホッズの足が床から剥がれない様に見えただろう。

溶けるには数分程度しか持たないが、この場では十分だった。


「何だ!?急に足が動かなっ…!?お、おい!お前達!俺様を動かせ!早く!!」

「「はっはいいぃ!!!」」


直ぐに取り巻き2人がホッズの足を動かそうと四苦八苦する。

それを見て、グレンは何もなかった様にルインとアウグリッドの手を掴み、別の扉から食堂を出て行った。






手を引くグレンは、終始無言で廊下を歩く。

話しかけづらい2人は無言のグレンに連れられて、転移門を潜り、学生寮に入った。

そのまま階段を上り、グレン達の部屋へと入って、2人をベッドに座らせる。

グレンは部屋に常設されていたコップに、魔法で水と氷を入れ、2人に渡した。


「飲め」


ただ、そう一言。


有無を言わさないグレンに、ルインとアウグリッドは渡された水をコクリと飲んだ。


「「!?」」


その水は、一口飲んだだけでもわかる程冷えていて、キーンと頭に響くかき氷の様だった。

あまりの冷たさに2人は顔を歪め、「うっ」っと呻く。


「落ち着いたか?」


グレンに言われ、2人はコクリと頷いた。


「…止めてくれてありがとうグレン」

「先に魔法をぶっ放さなくてよかったよ……煽ったのはいただけないが」

「だって!あれはあいつらが!!」

「場所を考えろルイン。あのままだと騒ぎになってた…まぁすでに遅いかもしれないが」

「でもっ!!!」

「……頭を冷やすには水は足りないか?」

「………ごめん」


ぽんぽんとルインの頭を軽く撫で、隣で俯いていたアウグリッドに声をかける。


「アーリー」


びくりと肩を揺らし、ゆっくりと顔を上げてグレンを見る。


「グレン…僕…僕は…」

「アーリー、まずはルインに何か言う事があるんじゃないか?」

「えっ…と…」

「どうしてこうなった?ルインはアーリーに何をした?」


グレンの言葉に顔を顰め、ハッとする。


「……ルイン…庇ってくれてありがとう」

「そんなの!友達なんだから当たり前だって!」

「グレンも…ありがとう」

「俺は何もしてない。2人を連れて、冷たい水を飲ませただけだからな」

「でも、ありがとう。それと、嫌な思いさせてごめん」

「嫌な思い?…何かあった?」

「友達だって言ったから目が悪いなんて言われて…」

「あぁ、嫌ってか怒っただけだから。気にしてないから」

「………でも」



「アーリーは俺達と友達になるのは嫌か?」

「そんな事ないよ!!」


バッとグレンの方を向いて、アウグリッドは声を張る。


「「じゃあ問題ない!/な」」


グレンとルインの声が同時に重なり、3人に、ふっと笑いがこみ上げる。


そのまま3人は笑い合い、夕方近くになった頃、アウグリッドは部屋を出て行った。



あれからグレン達は特に呼び出されることはなく、夕食などぱぱっと済ませて、今日は早めに寝ようと2人はベッドに入った。


直ぐに、すぅすぅとルインの寝息が聞こえる。


暗い部屋。ベッドの横にある小さな灯りに照らされて、グレンの右手がぼやりと浮かぶ。


いつからだったのか。自身が気づかない内に、グレンは己の右手を固く握っていたのだろう…血は固まり、すでに流され、皮膚が小さくえぐれた爪の痕。


ルインを掴んだ方だったが、この様子だと気がついてはいないだろう。


(俺も人の事は言えないな)



「"ヒール"」



右手は淡い光に包まれて、爪の痕はスッと消える。

そのまま、光が微かに残る瞼を閉じて、グレンの意識も暗闇の中に包まれた。




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