ウィズグラント家
自己紹介は説明回
段々と空気が暑くなり、日差しが肌を焼くような季節になった頃。
今日は久しぶりに寮生活をしているグレン達の兄であるルトアと姉のメイラが学園から帰ってくる日。
この学園は、7歳で入学し15歳で卒業。
元世界でいう小学中学が一つにまとめられた学校っという感じだ。
ちなみに寮生活は、7歳から10歳までの3年間。
そこから15歳になるまでは実家から通学する形になっている。
7歳から寮生活かぁ…と今後の生活を考えながら、グレン達は屋敷の玄関前に立ち兄と姉を出迎えるために待っていた。
屋敷から少し離れた門が開き、馬車が走ってこちらに向かって来る。
そして馬車が玄関前に止まると、中からメイド長のカルメが降り、後からルトアとメイラが降りてきた。
「「お帰りなさい、ルー兄様、メイ姉様」」
「ただいまグレン、ルイン。元気にしてた?相変わらず2人は仲がいいね、手紙で色々と聞いているよ」
「グレン、ルインただいま。ふふっ、可愛い弟達にようやく会えて嬉しいわ。早く中に入ってお話ししましょ」
グレン達は2人に手を引かれ、サロンと呼ばれる場所に行き、ルトアとメイラはグレン達を自分の前に立たせ、ぺたぺたと頭や顔を触りだした。
「グレン、ルイン…また少し大きくなったかしら?」
「少し前まではまだ赤ん坊の頃の面影があった気がするけど今は顔つきもしっかりしてきているような」
「ふふっ、将来が楽しみですわ。お兄様やお父様の様にかっこよくなってほしいです」
「…僕の様にとはちょっと自分からは言えないけど、父上の様にかっこよくなっては欲しいね」
あはは、ふふふとグレン達についてあれこれ話す兄姉は、自分達が座っているソファーの間に双子達を座らせて頭を撫で続けている。
そんな兄と姉を横目で見ながら2人は顔を見合わせて、少しげんなりした気持ちでまだ来ない母と父を待つのだった。
………
……
…
この世界での俺の名前はグレン・ローゼ・ウィズグラント。
前世の名前は、れん。黒髪で金色の瞳、貴族で侯爵。
なんでも自身の魔力属性によって瞳の色は違っているらしく、中でも金色は珍しいとか。
魔力属性とは主に火、水、風、土、光、闇、無の7属性あり、それと氷、雷、聖、空、時という希少な5属性を含めた全部で12属性存在する。
ちなみに金色の目は全属性持ちらしい…が実感はない。
そして前世の俺は15歳で死んで今は転生して5歳になってるんだが。
俺の隣に座っているのは双子の弟。もとい、前世の友人で名前はるい。
今はルイン・ローゼ・ウィズグラントが名前だ。
綺麗な白髪で、瞳の色も同じ金色。双子らしく顔も似ている。
前世の頃の俺達も実は顔立ちが似ていて、よく双子かと言われていた。
腹違いかと婆さんに病院に連れてかれ、DNA検査とかやらされた。結果は全くの他人で血は繋がってなどいなかった。
まぁ世の中には3人自分と同じ顔の奴がいるとかなんとか言われてたからな、そんなもんだろうと思っていた。
まさか一緒に転生して、双子に産まれ血が繋がるなんて思ってもいなかったが。
そして俺の右に座っているのは兄である、ルトア・ローゼ・ウィズグラント。ルー兄様と呼んでいる。
髪型は後ろで束ねて、肩に少しかかるくらい。
髪色は黒髪にほんのり青色が混じっている、ダークブルー?ネイビー?
ルー兄様は魔力属性が、水、土、闇、無、氷なので、瞳の色はほんのり紫が入った青色。
俺達とは4歳違いで今は9歳。
ルイン側に座っているのは、姉のメイラ・ローゼ・ウィズグラント。メイ姉様と呼んでいる。
髪型は腰あたりまで伸ばしており、毛先は段々とウェーブが入っている。髪色は真珠のような輝きで銀色っぽい。
メイ姉様は魔力属性が火、風、光、無、雷なので、瞳の色はほんのり黄色が入った赤色。
俺達とは2歳違いで今は7歳。
どちらも美少年に美少女。
二次元から来ましたーとか言われても納得の2人の容姿。
…俺達、血繋がってるんだよな?と2人を横目にみて目が据わる。
隣にいるルインも、俺と同じように横目で2人を見ながら目が据わっている。…考えてる事は同じらしい。
そんな事を考えている間にようやく父であるアルバートと母のリラがサロンに入ってきた。
「ルトアにメイラお帰り。久しぶりだね、元気にしてたかい?皆、待たせてすまない。部下達の訓練が少し長引いてな…いつもならこんなに長くはならないんだが、今日はちょっと面倒な事もあってな」
「ただいま戻りました。父上、母上もお元気そうで何よりです」
「ただいま戻りました。お父様お母様もお帰りなさい」
「「父様母様、お帰りなさい」」
子供達がわらわらと両親の周りに駆け寄り挨拶をする。
「あらあらまぁまぁ…あなた…母上ですって。少し前までは母様だったのに。ちょっと寂しいわぁ…」
「はははっ、私も同じだよ。父上かぁ…不思議な感じだね」
「ちょっっ、とうさ……父上!恥ずかしいじゃないですか!母上も!!」
「まぁまぁいいじゃないか。ほら、皆も昼食はまだだろう?ここで話すのもいいが、食事をしながらまた話そうか」
そう言って父様と母様はサロンから出て行く。
恥ずかしそうにしながらもルトアも続いて出て行く。
メイラとグレン、ルインは3人で目を合わせて笑い、振り向いたルトアにジーッと見られるも、また3人で笑いあうのだった。
食堂に行き、グレンは椅子に座った父と母を見る。
今日は兄姉が帰って来る日という事で、昼は王城で食事をしている父様も仕事を早めて帰ってきており、家族6人揃っての昼食は久しぶり。
斜め前に座っている男性は父で、名前はアルバート・ローゼ・ウィズグラント。
ルー兄様と同じ髪色で、髪型もほぼ同じ。
ルー兄様が父様の真似をしているのでは?と思う。
魔力属性は火、風、光、無、雷、時らしいので瞳の色は一番強い火属性の赤にオレンジの色がほんのり入る色。
身長は190はありそうなくらい大きい。
そして侯爵家現当主であり、父様は結構有名らしく、王城で働いている。
なんでも現国王とは昔から友人で、王様に頼まれて近衛騎士とはまた別の王直属の騎士団長という仕事をしているらしい。
父様は特に剣術に秀でており、この国の中で一位二位を争うほどの強さを持っているのだとか。
その隣に座っているのは母のリラ・ローゼ・ウィズグラント。
メイ姉様と同じ髪色で、ポニーテールの様に髪を後ろに束ね毛先はウェーブがかかっている。
魔力属性は水、土、闇、無、氷、聖、空らしいので瞳の色は一番強い氷属性の青にグラデーションの様な水色、ほんのり紫の入る色。
身長は175あり、芸能人とか、ハリウッドスターとか言われても文句はない。
父様とは学生の頃からの知り合いで、卒業後、仕事で再開。そこから恋仲になり結婚して、今は王家の子供達の魔法の教師として仕事をしている。
どちらも美男美女で訳がわからない。
この世界は美男美女しかいないのだろうか。
因みにハイスペック両親から産まれた自分達は、顔立ちも良く、魔力属性は両親の属性をフルコピーした全属性。
転生者という別次元の思考を持ち、神様から直接祝福をして頂けるという…これはもう、ある意味チートだ。
そんな家族を眺めている横で、メイド達はせっせと料理をテーブルに運ぶ。
運ばれてくる料理をみてグレン達は喉を鳴らした。
この家の料理は美味しい。
料理長も、執事も、皆きちんと栄養面など考えているから『この料理は量を食べても問題ないですよ』とか言うのでかなりの量を食べてしまう。
まん丸豚にならない様に気をつけなければならない。
(いただきます)
グレンは声に出さず、テーブルの下で手を合わせる。
皆も各々食べ始めた。
……
……
「そういえば父上。今日の帰りが遅くなった理由に面倒な事があったと言っていましたが、何かあったのですか?」
食事を終え皆で話をしていた時に、ふと思い出したかの様にルトアが尋ねた。
「あぁ、私が王直属の団長をしているのは知っているだろ?
今日は、その部下達で訓練をしていたんだがな…私の事をあまり良く思ってない部隊の奴らが絡んできおって。
その中に王家の血筋を持つ者もいて、下手な事は出来んかったからな…遇らうのに手間取ったのだよ」
何ともありがちな展開。
どこでも妬みや嫉妬でーーとかあるもんなんだなと、会話を聞いてしみじみ思う。
「まぁなんだ、可愛い子供達に会う時間が遅くなった恨みついでに、そいつらには私の部下達と手合わせさして叩きのめしてやったから問題ないよ」
異世界に転生して5年。
未だに慣れない家族との食事は、ぎこちない会話をしながらもグレン達は少しずつ楽しいと思えるようになっていった。
あぁ、これが家族ってものなんだろうなと。
そこで前世の頃の育て親とも言える婆さんが浮かぶ。
また違った家族としての形もあったのかもな…と、悲しい様な嬉しい様な…なんとも言えない気持ちなった。
メリークリスマス