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少年2人と神様2人


「おれ達どうなっちゃうのかな…」


両膝を抱え、地面に座り込んでいる少年は、隣で同じように座り込んでいる友人に話しかける。


「さぁな。この状態じゃ助けなんて来ないだろ…此処がどこだかもわからない」


薄暗い洞窟の中。月明かりが薄らと辺りを照らす。

微かに見える周りを眺めながら、2人は途方に暮れるしかなかった。





……………

…………

………

……




夏の日差しが照りつける暑い日。

少年2人は、()()()()()()()()と海に来ていた。



「院長先生!すごいよ、海っ!!」


視界いっぱいに広がる海を見てはしゃぐ子達が、院長先生と呼ばれるお婆さんに話しかける。


少し離れた所で座って居た少年2人は、その声にふと顔を上げるが、興味がないとばかりに視線を持っていたスマホに戻した。


「あんまり深い場所まで行くんじゃないよ。危ないからお兄ちゃん、お姉ちゃん達の言うことを聞いて遊ぶんだよ」

「はぁい」

「わかってるー!」


年の小さな子供達がお兄ちゃん、お姉ちゃんと呼ばれる人達と一緒に海に向かった。


「なんだいあんた達…海に入って遊んだりはしないのかい?」


座っている2人を見て、お婆さんは近寄り肩を竦める。


「…海に入って遊ぶより、こっちでゲームしてる方がいい」

「そうそう!ゲームのほうが楽しいから!」


素っ気なく答える少年と、ニッと笑いながら答えた少年は、海へ入る気配はなく話しかけても目線は合わずにゲームに夢中だ。


「はぁ…ゲームの事となると、いつもこうなんだからねぇ」


ため息混じりに呆れながら、お婆さんは子供達が遊ぶ海の方へ戻って行った。


少年2人は同じ年、同じ時期、別々の場所からこの施設に引き取られ、それからずっと一緒に暮らしている。

物心つく頃には既に施設暮らし。親が誰なのかはわからない。

院長先生と呼ばれる婆さんは、そんな身寄りのない子達を引き取り、育てている。

少年2人もその1人で、今日は施設で暮らしている人達と一緒に日帰りで遊びに来ていた。


「なぁなぁ〜、この構築ってやっぱり別のモンスター入れた方が立ち回り良くなると思わない?」

「あー…確かに。俺の持ってる奴と入れ替えて使った方が安定するか?……ちょっと待ってろ」


あれやこれやとスマホをいじる友人を眺めていた少年はふと、顔を上げる。

視線の先、視界に映ったのは小さい少女が海の深い場所へ、一人で浮き輪にプカプカと揺れながら流れている光景だった。


「やばっ!!」


叫びと共にかけだした少年は少女に向かい走りだす。


急に叫び駆け出した友人に驚いた少年は、何事だと周りを見渡す。そして友人が走る先、海に浮かぶ少女を見つけ思わず舌打ちをする。

何故だか周りの大人達は流されている少女に気がついていない。

少年は苛立ちながら持っていたスマホをズボッとポケットに入れ、先にかけだした友人を追いかけた。



少女がいる場所はそこまで流れは早くはない。

少年は少女に声をかけてはいるものの、全く反応がなかった。

少しずつ陸から離れて行く少女に、少年は焦る気持ちもあってか咄嗟にドボンと音を立てながら海へ入った。


後から追いかけた少年は、海へと入った友人をみて「馬鹿!」っと声を上げる。

そこで、少女と友人がいる場所の少し先に小さな渦が出来ているのがわかり目を見張った。

途中、偶然あったロープを持ち出す。決して盗んだ訳ではない、借りただけ。


辺りを見渡し、引っかけられそうな場所を見つけるとすぐさまロープを固定して自身も海へと中に入った。


「おい馬鹿っ!考えなしに海に飛び込むやつがあるか!」


友人に追いついた少年は、怒りながらも直ぐにロープを渡す。


「ごめんって!ってかこの子、息はあるのに全然起きない!!」

「はぁ!?俺に聞かれてもわかんねぇよ!それよりこの先に小さいけど渦があった!このままだとその子助ける前に俺らも巻き込まれる!このロープ辿って早く戻れ!」

「えっ!?わっわかった!!」


少女を抱えた友人を先に行かせ、一緒にロープを手繰り寄せる。

ゆっくりと陸の方へと進んでいき、少年もその後ろについて進んだ。

すると、「あっ……」と前にいた友人が声を出し、ゆっくりとこちらに振り向いてこう言った。



"ロープの引き合う力が無くなった"と。



陸へと戻ろうとするが、ロープが外れたと振り返る友人。


顔を引きつらせながら、咄嗟の判断で握られているロープを自分達の腕などに巻きつけた。

3人の体がズルズルと渦に飲み込まれていく。

段々と暗くなる視界。

苦しくなる体や息に、2人は意識を手放していった。




……

………

…………

……………




波の音が静かに聞こえる。

寒さを感じふるりと身震いをした少年の1人、れんは目を覚ました。


「寒……ここ…どこだ?」


気怠い体を起こし、辺りを見渡す。

薄暗く微かに赤い洞窟の中。もう少しで夜になるだろうと思わせる夕日が視界に広がる。

海の海水が静かに「ザザ、ザブッ」と音を立て、自身の足元を濡らしていた。


…俺は少女を助けに海に入ったんだったか。でもロープが外れて渦に呑まれてそれで……あ……るい…?!


バッと辺りを見回すと、腕から解けたであろうロープの先に横たわる友人のるいと助け出そうとした少女がいた。


「おい、るい!るい起きろ!」

「ん…ぁ?……れん?…あれ。おれ、どうしたんだっけ…?」


目が覚めたばかりのるいは、虚ろな目をしながら目の前にいるれんと薄暗い空間を目にして首を傾げる。


「よかった、目が覚めたか。ここは洞窟の中みたいだ」

「洞窟の中…?」

「あぁ、まぁ正確には洞窟の入り口と言った方が良いだろうが…多分、渦の影響か何かでここの洞窟に流れ着いたんだと思う」


一先ずれんは、眠っている少女に声をかけた。

だが少女はやはり起きる気配は全くない。

そうしているうちに、夕日が見えていた空は暗く染まり、夜の月明かりが海の表面をゆらゆらと照らす。


「なぁ、れん…ごめんな」


両膝を抱え、頬を膝に乗せながらこちらを振り向くるいは、ぼそりと小さな声で謝る。


「なんでお前が謝るんだか。確かに飛び出したのは良くなかった……だが俺にも原因はある。あの状況じゃまともな判断なんて出来なかった。それに、るいが走り出さなきゃ俺は動けなかったかもしれない」

「そっか…」


そう言って、2人はまた無言で海を見つめた。


――どれくらいの時間が経っただろうか。

「ん…あれ…」と小さな声が少女から漏れ、座っていた2人はお互いに目を合わせる。

れんは少女に近寄り肩を揺すった。


「おい、お前、生きてるか。ってか起きろ、早く起きろ」


少女に向かってなんとも乱暴な言葉で起こそうとするれんに、るいは呆れながらも少女に声をかける。


「なぁなぁ、少女少女、大丈夫?起きられる?」


ふるふるとまぶたを揺らし、ゆっくりと目を開いて起き上がった少女は、2人の顔を見ると、急に目をカッと開いて叫んだ。


「人間ッッ!?!?」


少女は自分の発言にハッとし、少しもじもじとしながら「すみません」と言いながら頭を下げた。


……

……


話を聞くに少女は人間には見えないらしい。

なんでも神様の弟子らしく、神様になるための修行をするため人間界に行き…その途中で海の心地よさに眠っていたという。


「じゃあなんで俺達はお前が見えてんだ?普通なら見えないんだろ?」

「はい、人間は私達の存在は見えないようになっています。そして触れる事も出来ないはずなのです」


「どうして」と2人は少女に問いかけるが、例が無くわからないと言われた。


「すみませんでした。お2人は私が見えてしまったが故に海に飛び込み、助け出そうとしていたのですね…」


これまでの経緯を聞き、すみませんすみませんと頭を下げて謝る少女に、2人は居心地が悪くなり話題を変えた。


「あのさ、おれ達が早とちりしたってのはもういいんだけど…元の場所?に返してもらえたりしないかな?ここが何処だかもわからなくて困ってるんだわ」


少女が神様の弟子なら、元の場所へ行く事も可能だと思った。

そんな考えで聞いたるいだったが、少女は暗い顔をしてすみませんと頭を下げた。


「…なんだ、帰れないのか?それとも神様なのに帰り方がわからないとか?」


頭を下げ、謝る少女は、れんの言葉にピクリと肩を揺らした。


「すみません…お2人は渦に呑まれたとおっしゃっていましたよね、周りには見えない渦にと…」

「あぁ、言ったな」

「実はその渦は私から出た世界の渦と呼ばれる物です。私達神はその渦を境に人間界を行き来しており、この世界に干渉する術を得ます。私達神は言わば思念のようなもの…その渦を通すことで思念を人間界に固定、干渉することが出来るようになります。そして…お2人は逆に人間界から渦に呑まれた。それは《渦を通して肉体を分解し、思念となった》という事になります。ここは渦の境…思念が行き来する場所、肉体は持てません」


2人は現実の無さに一瞬思考が停止する。


「じゃあなんだ。俺達は肉体が無くなって、今は思念になっている…置き換えるなら死んでしまったという事なのか?」


そうなりますね、と少女は答えた。


「……まぁいいんじゃないか。どうせ俺達には家族はいないし。帰る所はあっても施設は…帰ろうと思う場所ではなかったしな」

「……れん…」


施設で育った2人は最初から親などおらず、育ててくれていた婆さんには悪いが…本当の家族の愛情というのはわからない。施設の人達は家族というより仲間、学校で言うならクラスメイトに近かった。


重い空気が流れる中、少女は不意に後ろを振り向いた。


「姉様…」と呼ぶ少女の後ろには言葉にはし難いほどの美女がこちらにゆっくりと近づいて来た。


「妹の…いえ、弟子の気配がすると思って来てみれば、これは一体何事でしょう?」


姉様と呼ばれた美女は、少女の頭の上に手を置きニッコリと笑う。

頭から、メリッ、ミシッと音が鳴る。


「姉様痛い!痛いからぁ!!」


顔が引きつった2人は美女と少女の成り行きを見守る。

そして、事の次第を聞いた美女は少年2人に頭を下げ、すみませんと謝って来た。


「すみません。弟子が未熟のあまり…いくら人間には見えなくとも、渦を出し、人間がこちら側に来てしまった。例はないですがこれはこちらの落ち度…貴方方お2人は死ぬはずではなかった」


説明と謝罪をされるが、未だにギリギリと少女の頭を掴む方に意識が向いて、2人は「はぁ…」と間抜けな返事しか返せない。


そんな2人を見て美女の神様は、ばっ!と両手を広げて笑った。


「そこで!お2人はこちらの落ち度の謝罪として、新しい世界で転生してはみませんか?」


いきなりの言葉に今度は「は?」間抜けに答える2人。


「肉体が無いなら好都合!貴方方の世界で言う…異世界転生です!ちょっとお2人の記憶を覗きましたが…ゲーム、お好きでしょう?それならば話は早いです!私が管理する世界に招待します!剣と魔法のファンタジー!!もちろん私の加護を与えましょう!見た所、貴方方は友人のようですのでお互いに良い環境で会えるようにしましょう!あぁ、どんな風に巡り合うかはわからないので転生した後に探してくださいな!」


ベラベラと喋り出した美女の言葉に理解が付いて行かない。

訳がわからないまま少年の周りは光りだした。


「さぁ、お行きなさい。新しい人生を!」


視界は真っ白に染まり、2人はそこでぷつんっと意識がなくなった。



「さぁ、お行きなさい、()()()()()()()()()






気軽に評価などして頂けたら嬉しいです。


頑張って書いていきたいと思います。

どうぞ、よろしくお願いします。



夢で何度か見た途切れ途切れの物語の続きが知りたくて、記憶が抜けている場所に自分の想像を。


現実の夢3割、想像7割。

結局私の妄想じゃないかって?……そうかもしれないです。


…夢の続きを皆様にも。

一瞬の"楽"を楽しめたらと。

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