第47話 阿波踊り
「何事だー!」
えんやえんやえんや。
阿波踊りを踊るお兄ちゃんでした。
私の帰宅で、喜色満面。
ついてきた春人と五十鈴を見て、阿波踊り。
――――今ここ。
まあ此奴の対応に常識を求めるのが前提条件として間違ってはいるんだけど……それにしても阿波踊りはないだろう……キリエ・エレイソン。
「浮気か陽子!」
「誰に対して?」
「お兄ちゃん!」
「そういうよね」
南無八幡大菩薩。
「兎に角上がって。コーヒーでいい?」
「構いません……」
「よろしく……」
破顔する二人。
「お兄ちゃん。仕事は?」
「サッパリ!」
さっぱり言ってくれる。
「やっぱり実物がいないとやる気出ない」
「じゃあ頑張って」
私はコーヒーメーカーを起動させる。
そのままプシューなんて音を悲鳴にするコーヒーメーカーを眺めながら、キッチンを一瞥して、思考の渦に陥る。
「お茶請け何があったっけ?」
サラリと思う。
キッチンの戸棚から濡れおかきを発見。
皿に盛り付けて、コーヒーと共に差し出す。
「お兄さん若いですね」
「一応大学生」
「仕事って言ってませんでした?」
「兼業作家なのよ」
「ワゥン」
驚いている御様子。
「そう……だね……」
春人も頷く。
「ペンネームは?」
「烏丸茶人」
「「――――――――!」」
男子二人がコーヒーを吹いた。
「あの……?」
「烏丸茶人先生!?」
まぁそうなるよね。
ゲームのシナリオライターで、小説家もやっている。
主に中学高校の年層に受けている作家で……此方の方が比重は重いのだけど、作品がアニメ化もしている時代の寵児だ。
「サインとか貰える?」
「さぁ?」
ファンサービスはどうしてるんでしょ?
そこは私も知らない。
ていうか出来るならば知りたくない。
「だから義兄は……」
なにサラリと義兄って言いやがる。
たしかに私と結婚したら義兄になるけれども。
その前にお兄ちゃんに殴られるよ?
兄貴の一番長い日。
「とりあえずシスコンの新刊」
私は、シスコンを二人に差し出した。
シスコン。
お兄ちゃんの病気。
それとは別の意味を持つ。
『シンタックスコンプリート』
略してシスコン。
兄である主人公が可愛い妹たちのために健気に頑張る異能伝奇活劇……というと高尚に聞こえるけど異能バトル物だわね。
要するにライトノベルですよ。
ジュブナイルでも可。
私の趣味が読書なのも、此処に起因する。
まして春人は、陽子と陰子の衣装を造るほどのフォロワーだ。
感動も一入と言ったところだろう。
「ふわぁ……」
前髪に隠れた碧眼が光るのを感じた。
感じただけだけど。
「貰って宜しいので?」
「元手もかかっていませんし」
見本だ。
「ありがとう……ございます……」
「多謝」
感涙にむせび泣く……というほどではないにしても、中々感動された。
そこまでか?
私の功績じゃないんですけどね~。
「すごいお兄さんだね」
「まぁ色々と」
残念というか遺念というか……断念せざるをえない……ある意味で一般人以上に手の掛かる愚兄と申せる。
シスコンとか書いてるし。
「ふわぁ。なるほど」
何が?
「それでこんなにもヒロインが可愛いわけだ」
「えーと……それは……」
照れる。
頬をポリポリと掻く。
赤面してしまった。
「陽子!」
お兄ちゃん再出現。
阿波踊りを踊りながら。
「何?」
「デートしようぜ! 資料集め! 兼交際!」
「前者なら付き合いますけど」
「愛してる!」
「せめて友達がいないときに言ってくれます?」
「愛の障害か!」
「ヴェローナじゃないんですから」
「ヴェローナ?」
とは五十鈴。
あ、普通はわからんか。
「まさかコイツらと付き合うなんて言わないよな!?」
「さてどうでしょう」
正にそんな感じ。




