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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
六章 生と死の炊き出し
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マヤの夜

 ドワーフと飲み会です。

 マヤ王国の場合平民から炊き出して貴族と言うか、両方ごちゃ混ぜでも問題がないって言う、私にしては凄い気楽な炊き出しスタイルが実現できた。なんと言うか、貧民と高位貴族が肩を組んだりしてる国なんだよね。本当に上下の差が無い。

 私の日本人的な感性だと理想的では有るんだけど、逆に色々機能してない事が有りそう。立場有る人が殺されたりしたらどうするの? ひょっとしたら隠密みたいな人がいっぱいいたりするんだろうか? やっぱり地位とかは大事な部分があるよね。


 あ、ちなみに指輪は買ってもらってないよ? 流石にルートの立場になると婚約とか一国の問題になるからね。女王陛下に相談してヨドミちゃんとお父様で話し合ってるらしい。お父様は私を放したくないみたいだね。あはは、休み明ける前に一緒に釣りに行こうかな。

 やっぱり王族の婚約とか婚約破棄って難しいんだろうな。ルートの場合は継承権放棄してないけど女王国では王様になれないからそんなに重くないんだよね。ララキお姉様の方が継承順位高いんだよね。


 私の場合は婚約破棄とか…………いや、ルートはそんな事絶対しないけど。うーん、想像出来ないなあ。私と婚約して婚約破棄って……、それルートじゃないわ。うん、絶対無い。無いもん。無いよね? 無いか。


 そもそもうちの悪役令嬢は私のお嫁さんにしたいくらい可愛いからね。浮気は出来ないけど大好き。


「? 何か顔についてますか?」

「リカちゃんは可愛いなって。大好き」

「な、何を言ってますの! ……もう、シェルったら女たらしですのね」

「あ、うーん、否定出来ない」

「否定出来ないんですの?!」


 おお、リカちゃん爆笑。本当に最近は(かど)が取れて可愛さが増してきたよね。鬼だから(つの)が取れたら可愛くなるとか? すみません駄洒落はやはり駄目ですね。

 ルートがなんか怖い笑顔でニコニコしてる。ううう、浮気はしませんよ! そもそも女の子同士だしね!


 さて、炊き出しアンド飲み会を始めよう。いつも炊き出しや飲み会はやってるけど最近は両方いっぺんにやるようになってきたな。まあキンノだと冒険者たちと普通にやってるけど、それだけウトリやマヤは人と人の距離が近いんだろう。近すぎてもどうかとは思うけど、楽は楽だよね。


 ラジク王様が炊き出しをしてる私の近くに座って飲み始めた。メイドさんたちがお酒を作って……自分で飲んだ?! あ、一応王様にも出してるね。数人で飲みながら出してる。メイドさんが仕事中に飲むとかこの国フリーダム過ぎる。

 私もラジク王様にモスコミュールを出してみる。いくらか作ってストックしてある原液を炭酸で割る。氷を入れて一回混ぜて差し出す。おお、少し味見するように飲んでる。


「これはまた良いですな。うむ、新しい。キスリカ、これを飲んでみろ」

「……ああ、これはきっと私のための酒」


 どうやら相当に満足してもらえたようだ。キスリカ様にはレシピを送っておこう。ユサと仲良くしてくれてるみたいだしね。おつまみも保存してるのをどんどん出しちゃおう。


「ドワーフと飲むのが夢だったんですよ~」

「シェル様は聖女なのにイケる口」


 キスリカ様は王女様だけどラフと言うか自由と言うか、気持ち良い人だよね。色々肉のおつまみ出してあげよう。ミンチが余ってるからミートボールとかたくさん作ってある。お酒もソルティドッグ擬きとか出してあげる。キスリカ様はお肉とお酒に大満足だ。

 キスリカ様と仲良く飲んでるとルートにはため息を吐かれた。ルートともいちゃいちゃしたいんだけどね。めちゃくちゃしたいんだけど?


 まずは炊き出しだ。今日もスープで行こう。根菜をじっくりと和風出汁で煮込んだおでん風スープだ。流石にマヤは山上の国で涼しいので、こう言う煮込みが受けそうだと思ったのでこのチョイスにした。ちくわとか練り物も作ったよ!

 じっくりと朝から煮込んだおでんの大根を皿に乗せる。ちなみにスープはもちろん奇跡のスープにしてある。ドワーフは鍛冶や鉱山の仕事で体を欠損しているのでやはり喜ばれる。

 この欠損回復って今更だけど不思議だよね。例えば子供の頃に体の一部を失ってから鍛えまくった人が回復したら、その部分も鍛えられた状態で回復する。魂の情報を読み取って回復してるらしいけど、薬品でこんな事が出来るんだからやはりこの世界はファンタジーだ。

 それが出来る薬を作れる私はやはり規格外なんだよね。自覚が薄いんだけど。

 ドワーフたちは歓喜、キスリカ様も喜んでくれたよ。ドワーフだけどスマートな彼女はロリ可愛いな。肉ばかり食ってるのに何故? …………いや、思ったんだけど私もダイエットしたいからレコちゃんやロコちゃん、キスリカ様が羨ましい部分も有るんだよね…………。ちらりとロコちゃんの方を見ると殺気を感知された。私はデブじゃないもん……。


「きしゃーっ!」

「きゃーっ!」

「脂肪を減らしたい……」

「よこせっ!」

「きしゃーっ!」

「きしゃーっ!」


 ロコちゃんと二大怪獣ごっこをした。楽しかったよ。


「シェルはダイエット気にするほど太ってないよ?」

「う、うん、でも気になっちゃう。その、ルートには可愛いって思ってて欲しいし」

「思ってるよ。可愛いなあシェルは」

「うふふっ! やったね!」

「ふむ、二人は恋人なのか」


 あ、キスリカ様放置してた。ちなみにラジク様はみんなと飲んでる。


「私も王族だ。いずれは誰かを選ばねばなるまい。ユサが男なら……」

「世界の肉が滅びますね」


 ユサとキスリカ様のカップルとか本当に破滅の臭いしかしない。でもやっぱり王族って大変なんだな~。






 次回は、温泉回です。


ヤクラ『おんせんねー』

ヤクリ『はいりたいねー』

ヤクル『あるらうねー』

プラム「いや、出番無いからな。私も入りたいけど」

ラウネーズ『やるらうねー!』

プラム「あ、戦闘……じゃなくて銭湯に突撃した! …………私も入るか」


 その日のキンノ町の銭湯は特別な薬効があったそうな。こうして更にキンノ住人は知らずに強化されていくのであった。




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