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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
六章 生と死の炊き出し
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雷神

 ルートの、背中の、真ん中から、剣が…………。

 え、え、え、…………ルート? 普通にそこ刺されたら……!


「きゃああああああああああああああああっっっ!」


 その場にいた全員が絶叫した。絶望すらしていただろう。私はしていた。ただ、何故かありすちゃんもヨドミちゃんも落ち着いている。何故?


 ルート、ルートが、…………死んじゃった? 嫌だあああああああっ! 私たちまだ、付き合い始めたばかりなのにッ! いやああああああああああああっっ! ルートっ、ルートっ、ルートおおおっ!


 戸惑う私に三獣人娘が次々に声を掛けてくる。なんで?


「落ち着いてください、シェル」

「大丈夫にゃ! あれは…………」


 なんだよっ、ルートは、胸を貫かれて…………。


「血の臭いが、しない!」


 え、ユサ、血の、血の臭い? あれ、本当だ。

 自慢じゃないけど私は鼻が良い。ユサなら肉の臭いを間違えない。料理に大切なのは舌もだが、鼻も大切なのだ。その自慢の鼻に、血の臭いが漂って来ていない。まだ、まだ、血が、えっ? 雨の匂いはする? 血が出ていない? どゆこと?


「ぷっ、くっくっくっっ! ねえ……、勝ったと思った? 一瞬でも勝ったと思った? アハハハハハっ! わざと躱さなかったんだけど? アっハハハハハっ!」


 戸惑う私の耳に響くのは愛しい人の笑い声だ。でも……。


 わあー、邪悪ルートだ。スッゴい悪い笑い方するなあ。…………あれ、好きだ。それ大好き。


 戸惑う全体合体して、多分強くなったんだろう邪骸騎士。心臓に近い場所を穿った相手を嘲るように笑っていたのに、どうして? え? そんな戸惑いの顔に変わる。私も戸惑っている。


『僕割と無敵だよ?』


 えっ? 確かにそう言ってたけど…………スキル? ええええええっ! 流石に心臓刺されて平気ってチートってレベルじゃ……。無敵?


「君は雷を斬れるかい? 世の中には雷を斬れる雷切なんて名前の刀も有るとか。剣聖って呼ばれる人なら雷も斬れるのかも知れないけど…………。君に僕が斬れるのかな?」


 え、なんですそれ。ルートって雷になれるの? え、斬られても死なない?! 流石にチートが過ぎるけど…………勇者様だもんね。私の勇者様だもんね。勇者だもんね!


 ……………………っ! かあああっこいいいいいっっ! ルート格好良いッ! 凄いッ! 超かっこいいいいいっ!


 雷神ルートは、雷の化身なんだ…………もお、ちゃんと説明しておいてよおっ! 女神様もっ!


『知るか色ボケ』

「女神様あっ! メッセージ(神託)はそれで良いのかあああああっ!」


 舞い上がり過ぎかも知れないけど、だって、斬られても死なない勇者とか。うふふふふふふふふっ! 凄いよー! 本当に無敵なんだ! あとは倒すだけだねっ! ルートっ、やっちゃえーーーーっっっ!!


「君の戦闘力は邪骸兵イワコの二十倍で良いかな?」

「そ、そうだ、理論的には…………。そうだ、お、お前に負けない力を私は…………ッ!」

「君は、Sランク冒険者を、勇者を、嘗めたね? 邪骸騎士、って? 紛い騎士の間違いじゃないの?」

「えっ、ちょまっ、はっ? き、貴様ッ、それでも人間」

「人間じゃなくてハーフリング七十五パーセント」

「はっ?」


 ルートはメキメキと邪骸騎士の頭をつまむ。アイアンクローだな。その次の瞬間雷音がその場に響き渡る。スキルで軽減されても轟音だ。

 ルートたちはその一瞬で消え去ったので私たちがその後に聞いたルートの行動を追ってみよう。


「君は雷の速度で人が動くとどうなると思う?」

「あがばばばばぶべらぼあっ!?」

「そう、雷速は音を超えるから、君が何を言っても聞こえないんだ。僕のも聞こえてないと思うけど」

「ふぎぇべぼばばがばばぼべええええっ!?」

「雷の速度で空を飛んだら、普通は摩擦熱だけで死ねるから安心してね? ほんとは自重だけで潰れちゃうけどその辺りはスキルでカバーされるみたいだよ? 良かったね」

「ぐぼあーっぎゃああああああっ!?」

「振動が割と手を伝わってくるもんだな。まあ良いや、…………さよなら」


 これでも相当に手加減していたらしく、実際の雷速よりは遥かに遅いと言っても音速を遥かに超える人間が着弾すればそれは災害と言えるだろう。その後、町外れにキノコ雲が上がった。……。全力だと地球壊れたりしない?


 いやさ、いくらなんでもチート過ぎでしょ。え、私のスキルなんて植物と話すだけですよ? 雷になるって、なんじゃそりゃあああっ!

 うう、今回の戦いで一番悲しいのは、ルートには私の薬が要らないかも知れないって、その一点だよ。いや、魔力が上がる作用は有るんだけどね。魔力回復も出来るし。


 でも、死んだみたいな景色を一瞬でも見ちゃった…………。うえええええっ! うえええええええええんっ!


 こわっ、怖かったあ…………っっ。夏休みが終わったら、私ルートのために蘇生薬作る。全力で作る。もう幻でも、死なれるなんてもう嫌だあ……。


 歩いて帰ってきたルートは、裸だったけどまずは抱き締めた。


「もうやあああっ、死なないでえええっ!」

「あはは、死なないよシェル。魔力が尽きなければ。あ、シェル、服は無い? このスキル使うと服がまず耐えられなくて」

「へ? きゃああああああああああああああああっっっ!!」

「あぷっー! シェル、ごめんごめん、あの、服出して!」

「あうー。ごめんルート、取り乱した」


 裸のルート、裸のルート、あうー。前世男だったんだから見慣れてるはずなのに…………いや、自分のと人のじゃ違う? 胸とか今世でも、無意識に人と比べてるし……。とか、そんな問題じゃないよね。思いっきりルートの顔を平手で突いてた。乙女だな…………、いや、普通かも。裸の恋人が往来で歩いてきたら怖いよね。でも感情が昔みたいに抑えられなくなってるのは間違いない。


 あうううう。ルートの裸すっごい逞しかった。マッチョは苦手だけど細マッチョはちょうど良い感じとか思えたのは、好きだからかなぁ。

 いや、何をハレンチな! 私は、ルートが、……生きて帰ってくれて、スッゴク嬉しいのに。


 そう、…………ルート、生きててくれて、有難う。





 根っこが優しい腹黒ショタは至高だと思います。

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