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シェルは良い子(リーカ視点)

 三話投稿、二話目です。ストックは減ったり戻ったりですね。

 私は辺境伯家の娘、リーカ=ノナニオですわ。シェルの友人をさせてもらっています。


 最初は周辺の貴族子女たちの噂話、シェルが自称詐欺師であるとか、アイテムを魔物に作らせて聖女になったとかを信じきってそれだけで突っ掛かってしまいました。戦略を重んじる辺境伯家の娘としては有るまじき短慮でしたわね。その事は私の生涯で最大の恥となりそうです。


 シェルの力は本物だし、噂も事実だったけれど詐欺師と言ってる理由が分からないくらい働き者だし、魔物と共に作った道具と言ってもその魔物が大人しい知恵有る魔物で亜人にも近い存在でした。責める筋が有りませんわ。それにその魔物のお陰で一つダンジョンが平和になったのだとしたらむしろ感謝しないといけませんわね。少なくともラウネーズは私の友人ですわっ! 可愛いんですものっ!

 おっと、取り乱してしまいましたわ。失礼しました。


 シェルは私に色々してくれます。シェルにもらった指輪、あれが有れば辺境で魔物に苦しむ兵たちも救えます。なので実はシェルに許可を取り辺境に預けようとしたのですが、シェルは記念だからともう一個くれました。だから最初の一個は私が持っています。


 私のお兄様は魔の森を守る兵士でした。とは言っても領主の息子、嫡男でしたのでそんなに粗雑に扱われることは無かったはずです。

 過去形なのはお察しの通り、お兄様は亡くなってしまわれたからです。

 魔の森から魔物が溢れ、それを討伐したのですが、敵の数が多すぎて備品のポーションが無くなり、兄は自分に使われる予定のポーションを全て出して仲間を救い、自らは隠していた傷の為に命を落とされたのです。

 立派な行為ですが、死んでしまっては何もなりません……。お兄様。


 もしあの指輪が有ればお兄様は死なずに済んだ、そう思えば胸が焼き付くように苦しくなります。もうお兄様のような被害者は、出ないのは無理でしょうが、相当に減るはずです。

 辺境の兵も恐ろしく強かった叔父様も、腕や脚を失って戦えなくなっていましたがシェルが癒してしまってくれました。シェルに抱き付きたいくらい感謝しています。


 今日もシェルはロココさんやレコさんに追いかけられたり炊き出ししたりしています。私やイルさんはそれを見て笑っています。シェルはルート様とも結ばれて随分と元気になったように思いますわね。


 シェルはあんなに気さくなのに人嫌いなのだそうです。騙し騙されは貴族の世界では当たり前ですが、そう言うやり取りが苦手なんだそうです。時折シェルはビックリするくらい内心を隠して見せますけれど、そう言うのが嫌らしいですわ。分からなくも無いです。だから本心で付き合えるのが幸せなんだと。私も随分シェルに感化されたと思います。

 シェルのお陰で子供も好きになれたし、将来は私も良い母親になれるかも知れませんわね。


 私の婚約者はある伯爵家の嫡男様で、確か六歳年上ですが、貴族だと普通ですね。亜人の場合三百才差結婚とか有りますから、それくらいでは誤差の範囲ですわ。

 私は鬼人族ですし、その彼より遥かに長生きしますから未亡人決定です。だから亜人は普通人種とは結ばれたがらないのですがまあ政略なので仕方ありませんね。

 シェルに話したら泣かれそうです。シェルは自分の事ではあまり泣かないのですが酷く泣き虫だったりするそうです。人前では泣きませんけどね。詐欺師だから隠しているのだとか。

 本当は心が弱いのだと言ってました。ちなみにルート様とキスして号泣したらしいですわ。幸せそうで何よりですわね。


 シェルはエルフですのでこれからも長く友達でいられそうです。鬼人族の寿命も魔力依存ですので五百年は一緒にいられそうです。人生に飽きるまで一緒にいましょう。シェルといるとそれはとんでもなく先になりそうですが。

 シェルといると楽しいですからね。


 本当に最初何故食って掛かったのか……。生涯の恥ですわ。シェルが良く言うチベットとか言う土地に住む砂狐は遠くを見詰めるような表情をしているそうで、私があの事を思い出す度それにそっくりな顔をしているとからかわれてしまいます。可愛いらしいので見てみたいのですが、どうもこの世界にはいないみたいです。別の世界からシェルは来たんでしょう。そうであれば色々美味しい物の作り方を知っているのも納得ですわ。


 辺境では魚を生で食べる風習が有りますが、魚醤ではない豆の醤油と言うのを合わせると凄く食べやすくなりました。こんなことを知ってるのも違う世界から来たからですわね。シェルは女神様の使いなのでそれはあり得ると考えています。


 突然人間が現れた、これだけでも奇跡の力ですわね。そもそも最初にシェルが現れた方向にはダンジョン化した森しか無かったらしいですわ。

 うちの諜報部は優秀なので間違いないでしょう。最初にこの諜報部を頼っていれば失敗しなかったんでしょうね………。でも私にも秘密にされている事が多い部署なので近付きがたいんですよね。辺境伯家は国の守りの要ですものね。


 女神様の遣わせた聖女シェルは、威張って見せても冗談で、多分(ひざまず)いたりしたら泣くでしょうね。そう言う関係は嫌いみたいで子供たちが聖女と呼ぶとお姉ちゃんと呼ぶように訂正します。


 シェルはとても子供大好きで、本当に良い子なのですわ。末長くよろしく……って、私がシェルと付き合う話ではありませんけどねっ!


「リカちゃんだったら良いよー!」

「浮気ですわね!」

「あうあう、浮気は出来ない!」


 あら、ちょっと残念ですわ。でもまあシェルは真面目みたいで、ルート様も良い子と恋人になれて良かったですわね。

 二人を見ていると羨ましくも有るけれど、何か凄く応援したくなります。この時間が長く続くように、私は祈るのです。






 リカちゃんって最初の印象悪くないかな~と、そこがけっこう心配です。良い子なんですけど思い込みが激しいのかも。

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