聖女様がお友達(ロココ視点)
今日は閑話を三話更新します。一話目です。
今日もキンノ町のシェルの家で、二匹の野獣が吠える。
「きしゃーっ!」
「うがーっ!」
「やめてやめてっ、痛いからっ!」
その野獣とは私たちだ。今日もレコちゃんと私はシェルの胸をもぐ。憎い憎いこの脂肪を私たちに分け与えよ! 男性陣が羨ましそうな顔をしているのは無視だ。
本来なら聖女認定された彼女は女神様の使いであり、王より上の存在なのであるが、私たちは友達として認知されていて、こんなことをしても不敬とは言われない。そもそもそれを決めるシェルがゆるゆるだ。
最初に会った時から憎い肉を睨み付けたけど、別にシェルの事は嫌いではない。むしろ好きな部類の子だ。
変に男に媚びたりする貴族令嬢が多い中で全くマイペースな彼女は、正に友人として相応しかったのだ。
まあ今は私の方が立場はかなり下なのだが、もしシェルに変に気を使って持ち上げたりしたら絶対に嫌がるだろう。平民気分と言うより、あれが彼女のスタイルなのだ。それが心地良い。
今日もレコちゃんと奴の胸をもがないといけない。しかし揉んだら逆に大きくなりそうな気もするな。レコちゃんと会議しよう。かなり悲しい会議だが。
そう言えば私もレコちゃんが平民だとかは気にしてないな。シェルを中心にしたコミュニティは新しく平等なコミュニティだ。
貴族至上主義の人たちがふん反り返っている事もあるこの国には似つかわしく無いのかも知れないが、彼女は女神様の使徒。彼女が正義だろう。そう言えばレコちゃんがジャスティスジャスティスと良く口にしている。
「シェルはジャスティスにゃ」
「そうだね、シェルはジャスティスだ」
「だが胸は許さない」
「お尻も許せない」
「だからもぐにゃ。シェルのジャスティスのために!」
「ジャスティスのために!」
「お前ら…………」
「あ」
「あ」
シェルに魔法で霜焼けを作られた。あとで治してくれたけどキツいな、あれ。痒い。
「アンセルが霜焼けを恐れていた理由が良く分かったにゃ」
「そう言えばお兄ちゃんにアプローチかけないの? チャンスじゃない」
「まだ早く無いかにゃ? 諦めて無いっぽくないかにゃ?」
「そうだねー、あれ諦めは悪い方だと思うし。呑気な疾風とか呼ばれてるくらいマイペースだからね」
「早く諦めて欲しいとも思うけど、シェルが魅力的だから無理っぽいにゃね」
「もぐ?」
「もぐにゃ」
「いい加減にしろ!」
また霜焼けを作られた。しっかりもいだけど。もげてないけどね。もげないなあ。私に移植して欲しい。
「もー、ルートにも揉ませてないのに……」
「もう一回揉むぞ」
最近は毎日のようにルート様といちゃいちゃしてるシェル。邪魔したい訳じゃないけど正直ウザい。まあでも、私も婚約者といちゃいちゃすれば良いのだろうけど。
婚約者はイケメンだし、貴族として優しいけど、うーん、ルート様やお兄ちゃんに比べると堅いのよね。私自身貴族としての振る舞いは上っ面を取り繕う程度だから、なんか合わないと感じちゃう。まあ本当は間の抜けたところもある人だから、そこは良いんだけど。
って私がのろける流れになってしまった。別にのろけてる訳ではない。政略結婚だもの。貴族だから当たり前だけどね。好きとかは無い。
三人娘と言われるリカちゃんと簀巻きにも婚約者はいる。簀巻きの婚約者は誰か分かるよね。いつも仲良くしてるもの。やはり私やリカちゃんの婚約者もパーティーに加えるべき? リカちゃんの婚約者は……まあ私に縁のある人だよ。かなり年上だよね。六つ上だ。私の婚約者は一つ上。まだ誰にも会わせてないからな~。嫡男なのに騎士学校じゃなく錬金術師学校に通うような人だからどんな感じかは分かるでしょ。へなへなよ。眼鏡男子ね。
まあそのうち炊き出しに自分から参加して来る可能性は有るかな。会いたがってるシェルも、その時を楽しみにしていると良いわ。
シェルは私がありすちゃんの婚約者じゃないか疑ってるみたいだし。違うわよ。私の婚約者は伯爵家の嫡男なんだけど、だけど私も貴族らしくしろとは言われないし、へなへなだけどその分は優しい人。うーん、やっぱりのろけてるみたいね。レコちゃんが私をシェルの胸のようににらんでくるから違う事を考えよう。
そう言えばシェルによってドルーシ伯爵家の兵力は増大した。古参の兵はお父さんに忠誠を誓い、しかも強い人たちが多かったから更にその人たちによるしごきで新兵まで鍛え上げられて、今戦争したら竜騎兵一千連れてきてもうちは落ちなさそう。それくらいの化け物な人がいるのね。数十年も昔だけど、戦争時代は本当にこの国は化け物だらけだったらしいわ。うちは軍略を重んじる家系だし、私たちの世代だけで王国騎士を三人も輩出してるからね。二番目のお兄ちゃんはほとんど王宮勤めだからなかなか会えないけど。
そんなわけでシェルには感謝してる。胸はもぐけど。
聖女様がお友達なんて、本当、私なんかにゃもったいないわよね。言うと泣かれそうだけど。
これからも仲良くしましょうね。胸はもぐけど。
シェルの胸がどんどん大きくなってるのはこの二人のせいかも。




