君と
ここまで長かった…………。
ルートと二人っきりの状況で、私はすっかり混乱している。ルートに可愛いって言われた、嬉しい…………って乙女か!
乙女のようである。なんかもう、誤魔化しようもなく乙女のようである。
駄目だ、やっぱり長いこと恋愛して無かったから別に違和感無く、ルートが好きって思ってしまう。胸がきゅんきゅんする。元男なのに。ルートも気持ち悪くないみたいだし。
「ルートは、私が気持ち悪く無いのか?」
ルートに気持ち悪いって言われたら死ねる。でも聞いておかないと、何度でも聞いておきたい。うわっ、想像したら超辛い。
「えと、正直、今の君しか見てないからね。アンセルだって前の君を知ってるのに気持ちは変わらないって言ってたし…………あのね、アンフェアな気がするから言わなかったけど、僕は…………シェルが好きだよ」
「はうっ! い、いきなりだな…………嬉しい」
あー、もうこれ駄目だ。完全に駄目だ。もう気持ちに抗えない。完全に今ので落ちた。上目使いで好きな人に好きって言われたら落ちるよね? 女の子でも。
あー、確かにアンフェアな気がするな。アンセルいないし、ここで、えーと、ルートと恋人になったりしたら、アンセルに悪い気がする。アンセルにはきっちり距離感は伝えたけど、それからちょっとずつ縮まってたのかも知れない。もう一度、謝る? のはなんか違うな。分からない。突き放すのも違うし。分からない。
だから凄い動揺してしまってるんだ。ルートもそれは分かってるみたいだし。どうしたら良いのかな。
「ルート…………その、な、各国の炊き出しが終わるまで、待っててくれる?」
「う、うん。シェルも、その、」
「うん、私も、ルートが、その、好きだよ」
言ってしまった。待っててって言ったのに。でもどっち付かずに見せるより良いか。
すでに気持ちには抗えなくなってしまってるから耐えるのは無理だった。
お互いに好きって言い合ったからこれで良いんだよな? ルートと恋人同士って事で…………って恋愛初心者みたいな反応になってしまうな。ドキドキしすぎて……。
ルートと、これから歩んで行きたい。
「待ってるね」
「うん……って、何を?」
「あははっ、もう好きって言われてた。じゃあ、良いよね?」
「ん? っ!」
ルートに下から抱き締められた。ルートの身長だと顔が、その、胸に埋まるけど、その、悪くないな。うん。あったかい。
「あ、ごめん、いきなり」
「良いんだ。ルートならいつでも……抱き締めて」
ってなんかエロいな。その、エロいのはまだ、なんかだめーっ! ……この体だとぜんぜんエロ耐性が無い!
…………はあ。ルートと恋人同士になってしまった。アホほど心臓がドキドキする。あー、顔もあっつい。ルートも顔赤い。
『きすしないの?』
「しません」
「なんか植物にからかわれてる?」
「う、うむ、そうじゃのう」
「なんでいきなりお婆さん?」
またルートに爆笑された。ちくしょう、好きだー! はうう、心臓が太鼓叩いてるくらい鳴ってる気がする。こんなに恋ってドキドキするものだっけ? ききき、きすはしないけど。しないよね? しないのか……。だからなんで恋愛初心者な反応? 生まれ変わったから初恋なのかな? これ脳内麻薬とかのせい? 体は乙女で間違いないからな……。
「それでね、僕も卒業したらキンノ西の森に村を作ろうかと思ってるんだ。シェルも手伝ってくれる?」
「そうなんだ? うん、楽しそうだね、手伝う」
「シェルが一緒なら百人力だよ。炊き出しとかは続けるよね」
「テレポーター有るからな。炊き出しは、そうだな、みんながそれを当然とか思わない限りは続けるよ」
「そんな日が来ないと良いね」
「うん」
ルートは現実を見てるな。それで優しい。ルートと一緒なら生きていける。と、その時ガサガサと背後の観葉植物が揺れる。
「おめでとうシェル!」
「うわっ! ロコちゃん!?」
うひえええっ! ロコちゃん?! ロコちゃんなんで?! って覗かれてた?! つか行動バレバレだった?!
うわあ、顔を真っ赤にしたリカちゃんとかカナイ、簀巻きもいる。リカちゃんにもおめでとうと言われた。はっ、なんか簀巻きがメキメキ言ってる! バーンって弾けた!
「おーっほっほっほ! 密室ハウスで聖女様が恋人を胸に埋めてあんな事やこんな事のエロエロな妄想をしている現場に遭遇ですわっ! なんと言うおかずっ! ハンバーグ以上のごちそう! これから人目も憚らず聖女様と勇者様がぬっぽりしっぽりしてるところをお空の下でさらけ出す青○プレイが始まるのですわねっッ!」
簀巻きがハジケたーッ! もう一度巻いてやる! 今度はもっとしっかり巻いてやる! 霊木化した蔦とか使って巻いてやるぅッ! 二度と私とルートで妄想すんなっ!
あ、アンセル…………。
「おめでとう…………」
「あ、うん、その、」
「謝ったりしないでね?」
「あ、だよな。その、そう言う事で…………ってなんだそれ」
「ははっ、残念だけど、シェルの気持ちはシェルの物だからね」
「そうだな、あの、有り難うな」
「それで、これからも君を守らせてくれるかな?」
「…………アンセルがそれで良いなら…………」
それ凄い辛くない? 大丈夫なのか? いや、アンセル好きな奴も仲間にはいるみたいだし、いてくれた方が良いんだけど。イルやレコとも仲が良いみたいだし。
アンセルもすぐにそんな気持ちにはならないとは思うけど……いつかは。
しかしなんて場面を見られてしまったのか。それにこれからどうなるんだろう。なんか色々あって頭おかしい。混乱している。
ルートと、そうだな、ルートと。二人で村作りしながら炊き出しの準備したり薬作ったり新しいアイテム作ったり炊き出ししたり…………そのっ、恋したり。
ルート、君と。
ここからシェルはどんどん女の子になっていきます。




