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カナイ村の奇跡って何?

 炊き出し旅は一旦中断です。

 ウトリではかなり充実した炊き出しが出来たので、休憩要らないかもと思ったがルートに休むように言われた。優しいよな。

 それに折角日本の物が大量に手に入ったんだから、良いお酒飲めそうじゃね? 飲むよね?


 まあ朝からは飲まないので、ロコちゃんたちと遊ぶか。そう思って二人を迎えに行く。ちなみに二人の家と一簀巻きの家にはテレポーター置いてある。贅沢だな。ルートはお城のテレポーターから来てる。前は学園のテレポーターに迎えに行ってたけど使用権は渡してるので勝手に学園に行って薬草たちの世話をしているらしい。かなり移動が楽になったと喜んでいた。

 テレポーターはチートだよな。


 今日は何して遊ぼうかな~とか考えてるとリカちゃんが本を差し出してくる。王都で流行り出した本らしい。なになに、カナイ村の奇跡?

 何それ。カナイ知ってる?


「ああ、それか……作者を見てみろ」

「ダツヤナ=キンノ……村長?!」


 村長、作家活動してたのか。なになに、カナイ村は騎士カナイが女王陛下から与えられた村である。

 カナイは戦いで腕を失ったが優秀な騎士であった。そして村長としてもその力を十分振るっていた。

 ある日カナイの村に西方から旅人が訪れた。それは美しい赤い髪の乙女で、小さな妖精を従えて訪れた彼女に村は騒然となり、…………ってこれ私とカナイのラブストーリーになってるんですが?


「なんじゃこりゃあああああああっ!!」

「抗議に行く?」


 まあカナイとか勝手に名前使われてるしな。だがしかし話は良くできてるな。実際カナイは女の子だし、村もキンノ村だけど……。うーん、他の作品も見てみたいが……。


「一応村長のところに行ってみるか」

「分かった」


 村長のところにどかどかとアンセルも入れて六人で入る。お、クシワク婆様もいるな。店が暇だとすぐに村長をからかいに来るらしい。


「村長、この本なんだけど」

「おや、見つかってしまいましたか。勝手に聖女様をお話に使って申し訳有りません」

「ああ、村長の小説かい。前から何冊か書いてたねえ」

「んー、分かっててやったのか。カナイはどうする?」

「出てしまったのは仕方ない」


 まあ引っ込めろと言っても今更だな。内容は悪くないし、このまま売れるようなら印税とかもらうのが筋だけど、金も要らないし。


「他の作品も見せて」

「それでよろしいので? 今お持ちします」


 正直村長と揉めて人嫌いを拗らすくらいならスルーした方が良い。もう本当、お金の揉め事が一番神経を削られる。

 他の本、と、これはカナイ村の奇跡だな。続きは……ウルルと呼ばれる少女が傷を負って倒れた事で聖女シェルは奇跡の力に目覚めた…………奇跡の力なんか使えんぞ。そしてウルルは聖導女と呼ばれ、聖女シェルを事有る毎に助けた……むしろどんどん聖女属性付けられた記憶しかないぞ。

 その奇跡の力でカナイを救い、二人は恋に落ち、村人から祝福され…………なんかこの話信じる人がいたら私は既に恋人がいる事になってしまうんじゃ……。

 不吉な予感がするので学園にテレポートしてみた。


「シェル~、どうしたの? 珍しいね」

「あ、うん」


 全員置いてきた…………ルートと二人っきりだよ…………。どどどど、どうする? 一旦帰る? ってそれじゃ怪しすぎる。何も無いのに。


「えーっと、ルートってこの本読んだこと有る?」

「あー、最近話題の奴だね。学園が始まったら弄られそうだね。シェルの近くにいる騎士だからアンセルがそうなのかもみたいに話題になったりして」

「それは困るな……」

「そんなに困ったらアンセルが可哀想だけど」


 そう言って大笑い始めるルート。あんまり動揺してないみたいでなんか悔しいな。やっぱり思い過ごしだったんだろうか……ルートに好かれてると思ったのに。


「シェルの事は僕もけっこう見てる気がするけど、やっぱりこう言うのはいや?」

「と言うか、間違った噂が流れるのが困る」

「正しい噂って?」

「え~と……」


 まさか私とルートが仲が良いとか噂を流すのもな。それも困る。うーんうーん。


「僕とシェルが、その、恋人同士とか噂を流しちゃう? 流しちゃおう」

「ままま、まて、またとんでもない事言い出したな!」

「そうだね、僕もシェルの動揺が移ったかも…………え~と。恋人はまだいない、で良いかな?」


 実際いないしな。まだ。そう言うのは来年で良いだろ。再来年になるとルートが卒業しちゃうからな…………。……ってそれだと本当に乙女ゲームの世界だな。

 だよな、ゲームじゃないんだから進むなら進むで良いよな……。ってどっちに進むんだよ。


「植物たちはどう思う?」

『ふたり、おにあい』

『きすしないの?』

「きききききき…………しない」

「何をしないの?」

「あ、いや、何でも…………無い!」

「あはは、変なの!」


 むう、ルートに笑われてしまったぞ。くそう、顔がめっちゃ熱い! ここは薬草ハウスだから日差しもキツいしな! つかここの薬草どもがキス知ってるって事はルートがいない時に忍び込んでやってる奴らがいるって事か。けしからん。


「それで、シェルって男が好きなの? 女の子が好きなの?」

「今は良く分からんけど、…………なんだよその質問」

「…………これは言って良いのかな~。……前にアンセルが、君は前に、男だった可能性があるとか言ってたよ。状況を整理するとそうなるって」

「あぐっ……!」


 自分で話しておきたかったのに……アンセル、そうか、気付いてたか。


「前が男で今がこれってな……、その、気持ち悪くないか?」

「今は普通に女の子だよね? それでいっつも自分の事を詐欺師とか言うんだね」

「う、うん……詐欺だろ?」

「今は可愛いよ。それに戻ったりもしないよね?」

「う、うん、死なない限り変わらない」


 だよね、女神様。『戻す予定なんか無いわ』

 だよね。


「えーと、女神様に聞いたら戻す予定なんか無いらしいよ」

「じゃあ女の子だね。良かった」

「う、うん」


 さっきからなんか凄い乙女な反応してしまってるな。き、気持ち悪く無いかな?

 つかルートに可愛いって言われたぁ……。だから乙女か! 乙女なのか……。







 この展開を待っていた人もいるのでしょうか? 御待遠様でした。

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