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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
一章 クズ人間は聖女と呼ばれる
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昔は錬金術のレシピを料理レシピに隠していたらしい

 クシワク婆様にポーションを持っていくと腰を抜かされた。品質がハイポーションレベルで五十本も買い取れるか! と怒られたが持って帰っても仕方ないので婆様預金に売れたら金を入れてもらうと言うことで、置いてきた。

 こんな田舎村じゃポーション買う人少ないよな。ちなみに品質が高い原因はラウネーズが持ってきた素材が圧倒的に良かったかららしい。まああいつらは言ってみれば専門家だもんな。そこら辺の冒険者とは品質を見抜く目が違うんだろう。


 クシワクは代金の一部としてカラ魔石の指輪を四つもくれた。これは錬金術でマジックアイテムを作るための材料だ。ただの空魔石を台座に固定しただけだから割と簡単に作れるが、その分は手間なので出来上がったものが売られているようだ。これに良い効果を付けて身を守れと言う事だろう。


 クシワクの錬金術道具屋は本もたくさん置いてあり、気になったので一つ取ってみたら料理本だった。魔法ハーブ加工とか言う本で、内容は……なんだこりゃ、読めない。単純に言い回しがおかしかったり内容が難しかったりする。


「それも錬金術のレシピさ」

「ええ、でも完成品がスープとかばっかりだぞ」


 クシワクが言うにはそうやって昔の人は料理レシピに自分のレシピを隠していたのさ、だそうだ。秘密漏洩の防止のために手帳に料理レシピと錬金術レシピをランダムに書いていたら後世にも伝わらなくて、誰か解読してくれ、と、本になったらしい。所々成立するレシピと、原理が合ってるのに成立しないレシピが有って、恐らく解読が不完全なのだそうな。錬金術はややこしいな。今あるレシピにも無駄な手順が有る可能性が有るらしい。あるらうねー。

 クシワクに、あんたは料理が上手だから良い錬金術師になるよ、と、誉められた。


 昼飯の材料を買いに行くことにした。食料品店のヤシメ=ヤーカミさんは貝獣人の一家に御用聞きに行っててよく留守にしているが、今日は店番らしい。いるんだな貝獣人。

 ……貝の干物とか有ればスープ作れるな。一瞬兎のユサがグッジョブと親指を立てるイメージを幻視したが、流石に獣人は食わんぞ。


「ミカーヤさん、じゃなかったヤーカミさん、乾物置いてない?」

「……なんでシェルさんはいつも俺の名前を間違えるんだ? 最初は飯屋さんとか……」

「こまけえこと気にすんなってヤシメ=ヤーカミさん、で、乾物乾物~。昆布にワカメに鰹節~。スルメ~エイヒレ~干し鮑~」

「どれだけ乾物に飢えてんだよ……なんか南方から商人が来て乾物大量に置いていって困ってたんだよ。食い方教えてくれるならサービスするぜ」


 おお、ラッキー。つか鰹節とか塊で有るんだけど。干しエビとかもいただこう。昆布も有ったしワカメも……なんで今まで置いてなかったヤーカミ!


「こう言うのは食い方が伝わらんと売れないんだよ! シェルさんが実演販売とかしてくれよ!」

「よっしゃ、やってやる」


 錬金術の前に腹拵えだ。ラウネーズも陽気に踊り始めたぞ。

 さて、何を作るか。味噌も醤油も無いし貝の干物なんか戻すのにめちゃくちゃ時間がかかる。味付けは一番出汁に塩か……。香辛料は……、駄目だ、何が合うのか想像がつかねえ。和出汁に胡椒はよく使うがスープじゃ面白くないし……。おっ、これなら良いんじゃね?

 ラウネーズに鰹節を削らせ俺は大鍋にみりんがわりに果実酒と、水と昆布とを入れて放置する。見つけた生姜を切り、牛肉をサイコロカットする。鍋を沸騰させないように沸かして鰹節も袋に詰めて大量に投入する。ほんとは濾した方が良いんだけど今回は量が多すぎる。出汁が十分に出たら鰹節とか昆布は取り出す。これも佃煮にしたら美味いんだが白飯が無い。二番出汁に使ったら廃棄かな。もったいねえ。大根の千切りとサラダにでもするか。


 汁を煮詰めていき牛肉や玉ねぎ、生姜を軽く炒めてから入れて少し煮てから一旦冷ましたらまた温めてことこと煮込む。塩胡椒で調節。牛肉の和風出汁ワイン煮風だ。んー、鰹の香り。みりんが欲しかった。果実酒の香りは邪魔だ。生姜は有るの分かってたからな。ボーン草とは絶対混ぜないぞ。生姜を発見した日本人には感謝するけど。


 調理に時間が掛かったので良い具合に煮込めた頃には村人やら冒険者やらが大量にヤーカミ食料品店の前に行列を作っていた。一晩くらい置いた方が絶対美味いんだが……。ここで「また明日」とか言ったら絶対暴動が起こるな。味見をした感触なら行けそうではある。


 小さい皿で済まないが順番に配っていく。なんつーか海外で行列なんて出来ないと聞いたことが有るが、この村の人はお人好しばかりなので普通に並んでる。行儀良いな。なんか炊き出ししてる気分だわ。

 実際飯が食えてなさそうなボロを着た子供とかも並んでて、……こう言う子供見るとほんと駄目だ。俺は子供大好きなんだよ。そいつらにはパンも付けてやる。金なら有るんだから構わないよな。最悪村長に出させよう。


 鰹と昆布で簡単な一番出汁の取り方を奥様たちに教えると、乾物は大量に捌けた。ヤーカミさんもご機嫌で材料費はヤーカミさん持ちになった。

 ……炊き出しすっかな~。






 炊き出しのきっかけですね。

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