やっと錬金術
このお話は書けてる限り更新しようかと思います。
結局昨日は疲れて寝てしまった。朝飯に味噌汁作りたいが、味噌は流石に無え。簡単にスープ作るか。一汁三菜とは言うが朝からよくもまあそんなに料理が出来るよな。白菜を塩揉みしたのとかで数を稼いで、魚がねえから卵焼きだ。川魚でもマスの仲間は美味いんだが、釣れないだろうか。
……釣れば良いか、スローライフなんだからな。
魚釣りも良いよな。錬金術に……畑は面倒くせえなぁ。土いじり好きな奴は好きなんだろうけど、そもそも知識がねえわ。硫化物を緩和するのに玉ねぎやにんにくを育てるくらいしか知らん。あと大豆を育てて根粒菌だかを増やして空中窒素固定を促して窒素化合物を土に取り込むとか……。あんまり確かな知識じゃないが割と知ってるな。暇人恐ろしい。
スープの出汁をどうするか。昆布有れば早いんだけどこの国に海草を食う人間は少ない。ワカメすら見たことねえ。乾物とは言え昆布がわざわざ出回ってるか……食料品店のヤシメ=ヤーカミさんに聞いてみるか。
とりあえず今日は野菜の甘味と旨味でごまかす。豚肉、ジャガイモと白菜、玉ねぎ、ニンジンをバターで炒めて、塩と水とを足してじっくり煮込んで灰汁を取って、一旦火を止めて余熱を入れつつ味を染みさせる。その間に他の品を用意しよう。
なんか焼き物がもう一品欲しいよな。あんまり作ると昨晩より豪華になりそうだが……まさかまた誰か食べに来ないだろうな? 流石に材料がねえ。ラウネーズが少食ながら三体もいるし、プラムも増えたし、けっこう大変だぞ……。って俺いつの間にか主婦やってんだが。
鶏胸肉をざっと湯がいてお湯に浸けた布を乗せて余熱で更に火を入れる。ドレッシングは塩ベースになるのは仕方ないな。リンゴ酢に胡椒とクミンを足してみるか。ラップやアルミホイル有れば楽なのになぁ。醤油も欲しい。
スライスした茹で鶏肉を皿に並べてレタスとミニトマトを添える。野菜は充実してるよな~。トマトやジャガイモは確か近世に広まったんだよな? ここの文明レベルはいまいちよく分からん。黒龍ドラゴン便なんて配達屋があったりする。まあドラゴン使わないと流通が出来ないほど魔物が多いのも問題なんだ。馬とか魔物の餌だし、俺の死因にもなった山賊も多い。だいたい貧民が多いから山賊も増えるんだよな。
その割に食い物は割と出回ってるし。地域格差か? まあ俺が大金を得たせいで金銭感覚狂ってるだけでこの食材も実は高いのかも知れないが。トマト一個の値段の銀貨一枚って服を中古で買えるもんな。うん、俺の価値観がおかしい。
煮物とかも準備出来たら良かったんだが。ちょろっと野菜炒めてみるか? もうこれで良いな、野菜は十分だ。
妻も愛人も野菜をしっかり入れてくれてたんだなあ。料理が上手い人は野菜を食わせるのが上手い。シチューなんて好物だけどほぼ野菜だもんな。
ラウネーズと白目を剥いてるエルダードリアードを起こしたら飯にするか。
……振り返ったら全員起きてテーブルに着いてる。植物界はスピードが命らしい。いや、根っこ生えてるんだからむしろ何があっても動かないんじゃないのかね?
◇
今回はトラブルもなく飯をしっかり食えた。昼飯は簡単にしてやる。さて、いよいよ錬金術に挑戦だ。
ポーションのレシピを見るとやはり薬草が必要だ。リョクハポーション草と、ブルーリーフというのはスパイスに使える低木の青い葉っぱだな。
あとは赤精霊水? 四元素精霊水が赤、青、緑、黄色と有るらしい。あとそれらを混ぜ合わせた世界精霊水とか暗黒水とか銀河水とか特殊な水があって、ポーションの材料になるのか。まあ魔法効果のあるポーションがそんなに簡単に出来たら料理でもポーション効果が……有るのか? レシピになんか料理がいくつか有るし。有るのか。
さて、赤精霊水の作り方だが、レッドリーフ? ブルーリーフの仲間か。グリーンリーフってどうなんだ? 普通グリーンだろうに。
特別なグリーンリーフね、ハイハイ。錬金術系のアイテムのネーミングセンスは突っ込むだけ無駄な気がする。ボーン草を使ったレシピにボーンと生姜2とか有るし。絶対日本人がネタで作ったアイテムだろ。ワンはどこ行ったんだよ。効果は興奮剤らしい。絶対作らん。
赤精霊水用のレッドリーフとブルーリーフ、リョクハポーション草はラウネーズに頼むとすぐに取ってきてくれた。まずは精霊水の作り方だが、すりつぶして水に溶かし魔力を注ぎながら混ぜ、色が完全に水に移ったら濾して出来上がりだ。手間だがそんなに難しい作業じゃ無かったな。ポーション草とブルーリーフも混ぜて、……比率が大事か。
ポーション草の回復効果をブルーリーフで引き出して赤精霊水で人間の活力に作用させ血量を回復……。分かってたけどしっかり各素材に使う理由が有るんだな。薬草まとめて煮込んでポーンって出来ないもんか。
だけどなんか楽しくなってきた。ラウネーズが乳鉢をグリグリこねてるのも可愛いし。
……調子に乗って気がついたら抱えるくらいのカメに一杯のポーションを作ってた。ここからポーション瓶に移す。
ちなみに昨日村長が来たのはウルルを探しに来たのであって、婆様が来たのはこのポーション瓶を渡すためだった。そりゃ飯食いに来ないよな。食って帰りやがったけど。村の連中もダツヤナ村長が帰ってこないから慌てたらしい。やつらの分のシチューは残ってなかった。男は辛いもんだってクシワク婆様が言ってた。その婆様はシチュー三杯食いやがったが。
それでポーション瓶なんだが、ゲームのイメージでフラスコを想像していたんだが、八センチほどの高さの、香水を入れる四角い瓶みたいなけっこう頑丈な造りをしたものだった。まあ冒険に持っていく物があんな割れやすい薄いフラスコじゃ困るわな。
婆様がセットで持ってきた五十本のポーション瓶を全部一杯にして婆様に売りに行くことにした。余ったポーションだが、……スープの出汁にしよう。美味い。