国内炊き出し旅、終了
もう勇気の炊き出しラストです。
辺境四ヶ所目はそんな感じで最悪だった。皇帝絶対倒す!
五ヶ所目は北。魔の森との境界だ。辺境は色々大変だな。アンセルもここで入団テストを受けたらしいし、土地勘有るかな?
ここもやっぱり子供より傷を負った兵士が多かった。炊き出し中に魔物の群れが出たけどチートな人たちがあっさり片付けてくれたよ。…………戦闘では本当に役に立たないよ私は。
ただ炊き出しではリカちゃんの叔父さんと言うめちゃ強い人の右腕の欠損を回復したのでリカちゃんに物凄く感謝された。その人、ゲハマナ=ノナニオさんは、一人で辺境の一軍に匹敵するとか。すげえ、めちゃヤバイ人だ。もちろん鬼人族。リカちゃんはその人が好きなんだろうな、本当に、抱き付いてきそうなくらい喜んでた。抱き付いても良かったのに。あはは。
辺境はこんな感じで終わった。他の地域には既にテレポーターを持って行ってもらったのでそれで楽に回れた。国内はこんな感じで終わって、次は国外を巡る。
んで、その前にだ。
「どーも! シェルさんの瞳に釘付け、ヤーカミです!」
「帰れ」
「今日はウィンナーとか薫製を幾つか持ってきましたよ!」
「スルーしやがったな。まあ良い、入れ」
今日は打ち上げの飲み会だ。ヨドミちゃんやシンクお父様、女王陛下までうちに来てる。この国のトップから三人来るってどんな家だよ。私んちだよ!
「シェルちゃん、今日はよろしくね」
「はい、陛下」
「え、ええー。じょじょじょじょ、女王陛下?!」
「ヤーカミ、庶民は帰った方が良くないか?」
「いえ、話の種に飲んで行きますよ!」
「案外タフだな!」
シンクお父様とヨドミちゃんも公爵だと言ったら腰を抜かした。だから帰れと。
ちなみにロコちゃんもリカちゃんも簀巻きも来てるけど恐縮して小さくなってる。この家に居る限り私が法律だから気にしなくて良いのに。実際女王陛下もお友達の家感覚だし、フレンドリーに三人に話しかけてる。
カナイやアンセルは慣れたようだしルートに至っては年の離れたお姉ちゃんだからな。むしろニコニコしてる。むう。
まあお姉ちゃんって呼んでたら嫌だけどね、それは無いようだ。ルーナ姉さんと呼んでる。人前だと流石に陛下か姉上かな。
あ、ありすちゃんも慣れた感じだな。ため息吐いてるくらいだ。女王陛下とも親戚筋らしいし、振り回されてるんだろうな。
今日は折角なので鉄板を出して、熟成の済んだドラゴン肉をステーキにしてみる。ドラゴン脂を引いてにんにくをカリっと焼いてから取り除き、あ、焦がしたら苦くなるから焦がさないでね。
どてっと音がしそうな厚切りの肉を乗せる。低温で時間をかけて何度かひっくり返して塩胡椒のみで味付けしたら切る。陛下から食べてもらおう。
「ん~っ! ドラゴン肉は久し振りです!」
「なかなか肉用ドラゴンは出回りませんからね」
「うむ、美味いですなあ。ジューシーで柔らかく甘い脂が堪りません。シェルちゃんも焼くの上手いねえ」
「有り難う御座います、お父様」
うんうん、誉められたよ。肉が良いんだけどね。一つ食べてみたら、うん、牛肉よりも更に濃厚な味がする。肉汁も多くて噛む度に口から溢れそうになるな。筋も切ってるけど別に硬くない。臭みも無いし、なんか芳醇な香りがするよ。美味い。
ドラゴンは魔力で体を維持してるから死ぬと柔らかくなるそうだ。あの巨体で空を飛ぶんだからな。
ついでに海老や烏賊も焼いていく。車海老みたいな海老だ。塩だけで良いよな。アワビもステーキにしよう。切って皿に殻を乗せてそこに盛る。わさび醤油で食べたいな。まあ無いから塩だ。
貝の戻し汁とか使ってソース作れないかな? トマトケチャップに足してみるかな?
イルレコユサに噛まれそうなのでみんなのも焼いてやる。肉の味に皆も大いに盛り上がった。
今日の酒は白ワイン炭酸割り、いわゆるスプリッツァーだ。これは好みで味を変えられるから好きだな。炭酸少な目で飲むのが好きだ。
陛下もお酒好きみたいだな。まあ夜会で飲んでるし、強くないとやれないのかも知れない。
私も座って飲むか。後は適当に海老とかウィンナーとかを各人で焼いてもらおう。私はドラゴン肉を何枚か焼いてサイコロカットして盛っておく。これレアでも寄生虫とか付いてないから食べられるらしい。ドラゴンに付く虫は居ないようだ。ブレス噴くから焼けるのかな?
女王陛下が何故かヤーカミの話にうんうん相槌を打って聞いている。どうやらヤーカミも調子を取り戻して例の行商の話をしているらしい。
今回は海に行って釣りをした魚を宿に卸した話らしい。ヤーカミはつまらない話を面白く語るんだよな。
私はロコちゃんとリカちゃんと簀巻きと飲むか。焼きウィンナー美味い。
「国内炊き出しお疲れさま~、シェル!」
「有り難うロコちゃん。また回らないとね~」
「うちも回ってもらって助かりましたわ。兵力が数倍に回復したとツセラお父様も喜んでいました」
「お手伝いできたなら良かったよ~。しかし疲れたな」
疲労はポーションで癒せるけど精神的なダメージはね、回復しても忘れる訳じゃないからまたすぐ疲れてしまう。
はあっ、とため息を吐いてしまった。二人に心配されてしまう。簀巻きも何故かすまき~とため息を吐いた。更に後ろから抱きつかれる。うおっ、大きいので頭が埋まる! 陛下! 割と有るな!
「ごめんね~、疲れさせちゃって。あの皇帝もちょっと何考えてるのか分かんない人だから疲れるよね~」
「そ、そうですね。陛下離してください!」
「え~、やだ」
うおお、更に埋まるぞ。なんたる柔らかさ! 反応する物が無くて良かったのか悪かったのか。しかしこれ酔ってるな陛下。普段はこんな風にならないから羽目を外してるんだろう。陛下も疲れてるんだな。
「姉さん、その辺にしときなよ」
「あ~ん、私のシェルちゃんが~」
「姉さんのじゃないよ」
「僕の~?」
「まだ違うよ!」
「まだなの~?」
なんかルートも色々失敗してるな。つか恥ずかしい。こっちが被弾する。
明日からは国外を回るからこの辺で終わりにしよう。そうしよう。
終わらなかった。その後も更に女王陛下がロコちゃんやリカちゃんまで弄りだした。簀巻きも何故か抱き締められたりして苦しんでいる。レコとロコちゃんが革命家の目をしている! それ以上は危険です! カナイとアンセルはヨドミちゃんとお父様とありすちゃんの席で飲んでてこっちを見ない。助けてね! ええい、やけ酒だー!
その後私もリカちゃんに抱き付いたりしたらしい。女の子の感覚になってるな。男の時に酔っても女の子には抱き付かなかったぞ。好きな子以外。
あー、明日お休みにしてください!
明日は閑話を三話更新、そして明後日からついに愛の炊き出しです。砂糖を吐く準備は出来ていますか?




