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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
四章 勇気の炊き出し
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悪夢

 子供可愛い、は、この物語の副題な気がします。

 さて、今でも迷いは有るものの、私が奇跡のスープを振る舞う、炊き出しをするのは私の決めたルールだ。

 ドルーシ伯爵領の炊き出しは便宜上貴族を先にするしかない。こっそり平民に炊き出ししたって私を叱れる人間はもうわずかだけど、うーん、ヨドミちゃんが作戦として考えたんじゃないかと思うのだが、貴族のガキ共がいっぱい集まってた。くうう……生意気可愛い!


「ふふーん、聖女様は僕の奥さんになるのだ!」

「おーほほ! あたくしのおねえさまになるのですわ!」

「くくく、何を言っておるのかな? ボクだと相手にしてもらえないからおにいさまのおよめさんにきてもらうのだ!」


 貴族のガキ共はマセてんな。まあこいつらはもう婚約とかの話が出ていたりするからな。そう言う話に敏感なのかも知れない。

 ちなみに今の私は例の詐欺化粧をしたインチキ聖女様だ。自分の顔ながら可愛く仕上がっている。この化粧のためにわざわざチーダ公爵家にテレポーター置いたからな。チーダ家のメイドたちが大興奮して常に化粧をするからテレポーターの使用権を! とか言い出した。まあ見た目を整えるのは自分の性癖と言っても良いので任せる事にしたが、なんか、彼女らの働きも忍者じみてる。動きが速いと言うより気付いたらそこにいる感じだ。あいえええー!

 植物界も錬金術師ギルドも公爵家も、駅伝を教えたら食いつきそうな気がするわ。

 けっこうマラソンとか駅伝って見ちゃうよな。なんで走ってるだけなのに目が離せないんだろうな?


 貴族のガキ共が意外に素直だったのと帰ろうとした時の「いかないでおねえさま」コールにノックアウトされそうになりつつも、スラムの方に行く。


 癒しだな。ガキ共の可愛い笑顔。私の生き甲斐。今生きてる理由だな。

 スラムのガキ共も可愛い。


「お姉ちゃんかくれんぼしよ!」

「おれとおにごっこするんだもん!」

「すかーとめくり!」

「こりゃ! 女の子のスカートめくったらいかん!」


 貴族のガキより品がないタイプのエロガキだった。こう言うバカ共を叱るのもなんか楽しいんだよな。ロコちゃんたちも被害にあってるけど笑ってる。彼女たちは貴族なんでその場で打ち首とか言い出しかねないけど、子供の冗談なのは分かってるし、そんな理不尽なこと言う子たちでもないからな。


「きいいー! 打ち首ですわっ! えいえい!」

「わはは、貴族のお姉さん怒ったー!」


 リカちゃんは手刀で子供たちを打ち首にしている。鬼人族の彼女ならほんとに斬り落とせるのでビビったが冗談だった。まあさすがに……つかリカちゃん異常に子供になつかれてる。

 子供っていじりがいのある相手が分かってて群がるとこあるよな。リカちゃんも楽しそうにやるもんだからガキ共もハッスルしてしまうのだろう。ちなみにガキも犬も目線を合わせてやるとなつきやすいぞ。大きい相手は怖いからな。それは大人でも。


 スラムの炊き出しが終わりに差し掛かり、例によって修羅の爺さん婆さんの乱取り稽古が始まった辺りで異変が起こる。スラム街の通りに大きな声が響き渡った。


「聖女はどこだーっ!! 我がノルワ家を追いやった聖女ーっ! 殺すっ! 殺ーッッす!!」


 うげえ、なんだなんだ?!

 見ると、ゴーストをバスターする映画のマシュマロな巨人みたいな白くてモコモコしたなまめかしい感じの、いや、身長は三メートルくらいだけど、化け物が大量に押し寄せて来ていた。つかノルワ家? どう言う事、かはわかんねーけど迅速に対処しなくてはならない。こう言う時は詐欺師の冷静さとかのスキル役に立つな。


「皆さん、懲らしめてやりなさい!」

「え、良いの? 尋問とかしないの?」


 私も冷静では無かったわ。ルートに尋問を任せよう。ルート流石だな、落ち着いてるわ。


「何故聖女を狙う! 貴様らは何者だ!」


 私はレコとアンセルに被害者の救助を任せ、イルには伯爵家に走らせ、ユサは待機、ロコちゃんとリカちゃんには民たちの避難誘導を任せるなどの指示を与える。ヨドミちゃんとありすちゃんは状況を見て動いてもらう。この二人の知略はあてになるからな。


「我らは帝国に落ち延び戦を仕掛けるつもりであった! しかし聖女が現れては開戦は不利になる! その結果我らは帝国に切り捨てられた! 全ては聖女の責任である!」

「その怪物のような姿はなんだ! お前たちは本当に人間か!」


 おお、ルートかっこいい。なんか痺れる。こいつが王族の態度なんだろうな。そこに痺れる、憧れるぅっ!


「我らは邪悪な錬金術師の手によって悪魔と化した者! 破壊の神たらんとするホムンクルス、邪骸兵! 我が名はイヨツ! 貴様らを食らいつくしてくれる!」


 わお、典型的な悪役台詞だな。こいつら強いのか?

 見た目だけはグロテスクで、まさに悪夢って感じだが。

 ドーモ、邪骸兵イヨツ=サン、シェル・イセイスです。

 ユサの魔導弓が刺さるが悲鳴もあげやしねえ。どうやら痛覚とか無駄なもんとして切られてるらしい。バカのやりそうな事だ。痛覚は生命の防衛に大切な要素なのに。

 ユサの魔導弓はこんな時のために用意した、精密さと殺傷力に特化した魔導武器だ。小さな範囲でも凶悪な破壊力を発揮する。当たった後に時間を置いて爆発する。


「げぼあっ!?」

「ユサ、全部狩って良いよ。だいたい事情は掴めた」


 痛覚なくても音が聞こえたり目も見えてる。自分がバラバラになって行ったら痛みが無くても、いや、無いからこそ普通は気が狂うわ。


 帝国に切り捨てられた、ねえ。初めからお前らはオモチャだったんだろ。悪人って奴は自分だけは守られてると思ってるのかね。

 ……ガキ共とのハッピーな時間を邪魔したてめえらは、殺す! ユサとかが。







 例によってシェルは戦闘が出来ないので戦闘描写はあっさりです。

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