王都反乱
三話更新、一話目です。学園を書きたいのでちょっと展開早い感じですね。
数日間炊き出しを続けて王都中で話題になってきた。カナイや私はエルフだし、美形だからな。事実だから仕方ないな! いや、獣人娘たちも人気有るし、あと……ヨドミちゃんも見た目は可愛いドワーフだからな。
で、目立ってきたので変な目も増えてきた。ちなみにヨドミちゃんが闇ギルドに「聖女が女王陛下に願い出て闇ギルドの封殺に当たっている」と言う噂を流している。一気に揺さぶりを掛けた訳だ。
「シェル、怖いのがたくさんいます」
「強そうにゃ」
「良い肉をしている」
ユサ、それは筋肉的な意味でだよな? 流石に人肉は止めるぞ? オークとかは普通に食うけど。
まあここが仕掛けどころのようだ。ヨドミちゃんに視線で合図を送ると、彼女も一つ頷く。やるか。
温めていたスープに一振り、欠損回復ポーションを入れる。いつものようにスープが光を放ち、そこから蛍のような光が広場に満ち溢れていく。いつもより余分に魔力を込めております。
スープの効果もしっかりと出ている。コツが掴めて来たかも知れない。
当然大騒ぎになった。聖女様と言う声が上がり始める。いやあ、欠損回復ポーションを一から自分で作れるようにならないと今世も私は詐欺師と呼ばれそうだ。練習はしているが効果の低い物になってしまうんだよね。魔力の注ぎ方が難しい。プラムに教わりながらやってるんだけど。
さて、ここまで騒がしくなってきたら動くかな、と思ったがまだ様子見するつもりらしい。怪我を負っている兵士、ヨドミちゃんが用意した、欠損のせいで仕事が出来なくなった兵士たちにスープを振る舞う。怪我を負った冒険者も治していく。
この順番なのは闇ギルドが暴れた時に対処してもらうためだ。武器も術式保存ボードに大量に隠してある。獣人娘たちにこっそり配らせる。
怪我が治った兵士たちは仕込みのはずなのに感動して涙を流し、雄叫びを上げたりしている。いや、実際に嬉しいんだろうな。変な演技をするよりは敵を騙せそうだ。
詐欺のコツは自分の本心で喋る事だ。
役にたたない物は売れるはずがない。役にたつから買ってください。使う機会は人それぞれ、効果は人それぞれですが。つまりプラシーボ効果くらいでも効果有りますって言えるからな。私は使わないけどそんな事は言わない。聞かれたら私はもう十分です、って言うな。本当の事しか言わない。
だが、この現象は詐欺じゃない。もしこれが嘘なら私が泣く。これしか取り柄無いんだから、私は。まあ欠損回復ポーションは私の作ったしょっぱい効果のとは違うけどね。
騒ぎがどんどん大きくなり、人もだんだん集まってくる。奇跡のスープはもう一杯、もう一杯と一杯ずつ作る。演出を民衆に見せてもっと騒がせるためだ。
欠損を回復した市民たちも私に感謝して私を称え始めるが、ヨドミちゃんはどんどん警戒を増している。回復した兵士たちは再び仕事が出来るととても張り切って散開して行ったので市民の怪我人は抑えられそうだ。
念のためもう一杯欠損回復スープを準備しておく。動かせないが固定式結界発動装置もプラムが準備してくれてる。魔石には予めプラムに充填限界まで魔力を入れてもらった。
オン、オフの切り替えは私の意思で行えるが、なのでオフ時に攻撃されるとヤバイしオンすると味方も退避出来なかったりする。
だんだん騒がしくなる。叫び声が上がり始めた。
「怪我人をこちらに! レコ!」
「にゃあっ! 回復にゃあっ!」
レコに回復に走らせ、スピードで負けないアンセルに護衛を任せる。ここはカナイに守ってもらいイルとユサには治りきらない怪我人を運んでもらう。スープが飲めるなら大丈夫だし、飲めないなら私のしょっぱいポーションで回復してから飲んでもらう。この数日で数だけは揃えてある。
このローテーションがはまり、ゾンビアタック状態になった。年老いて退役した兵たちも蘇り鬼のような強さで戦っているらしい。制圧は早そうだ。私はスープ作って配ってるだけだが。
まあこれが私らしいかも知れないな。バックアップ要員だ。
「死ねええええっ! ウゲエッ!」
「うわわっ、こっちにも来た!」
なんか黒いのが突っ込んできたが近くにいた婆さんが一撃で仕留めた。すげえ、流石は修羅の国の王都だぜ。
「年寄りは集まって聖女様を守るんじゃ~ッ!」
「おうよッ!」
「わし、この戦いが終わったら聖女様に孫の嫁になってもらうんじゃ!」
変なフラグ立てるな! あと嫁には行かん! 知らない爺さんの知らない孫の嫁とか有り得ん!
まあなんかハッスルしてる爺さん婆さんのお陰で身の守りは磐石だ。傷付いた兵も帰ってくる人数が少なくなってきた。代わりに敵兵と思しき怪我人が連れてこられるようになってくる。まあ反乱に荷担したんだから治さなくても良いし、どうせ死刑だろ。
この国の法律も厳しい。まあ自己満足なんで助けてやるけど。痛そうなのを見るのが辛い。
ヨドミちゃんが指揮に立ち、前線では下調べしてあった闇ギルドが潰されて行く。
しかし、どうやらノルワ男爵と上から二人の息子は逃亡し、それを阻止しようとした三男のイワヨ、四男セマカさんは大怪我を負ったらしい。
男爵家は取り潰しだが、三男から五男まで健闘したと言う事で謹慎半年で済むらしい。怪我の回復は私がしてやった。随分感謝された。
こうして、反乱騒動は片付いたかに思えたのだが……。敵国の尻尾は掴めなかったようだ。




