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炊き出しに慈悲はない!

 そう言う訳で、王都のスラムで炊き出しです。助手はドワーフのロリ眼鏡っ娘、ヨドミちゃんです。ヨドミちゃんは元気な女の子ドワーフ十六才! 茶髪お下げにまあるい金の瞳が可愛らしい!


 …………インケン眼鏡、ムドヨ=チーダ公爵様の変装です。


 ……ムドヨ公爵うううううっ、歳考えろおおおおおっ!

 ヤバイだろこの爺様。何を思ってか炊き出しに女装して参加。しかもどんな化粧をしたのか身長も縮めてドワーフのロリっ娘に変身している。もちろん何かの錬金術アイテムを使ってるんだろう。ちなみに演技も完璧だ。……時々地声で喋るから正体が分かるが。

 ……完膚なきまでに変態である。めっちゃニコニコして走り回る……。子供は好きですけど……あー、ドワーフ年齢なら六十代も子供ってことなら納得……納得できるかぼけえっ!


 しかし、まあ、落ち着け。これはチーダ公の策の一つなんだから。逆にこの、ひ弱な亜人貴族の娘たちが炊き出しをしているシチュエーションで普通人種(コモンヒューマン)の最強貴族が現れたらどうなるのかって話だよ。ちりめん問屋のご隠居どころの話じゃないからな。


 一網打尽にするったって情報収集は必要だ。もちろん前以て二人の悪魔公爵に色々教わってはいるぞ。罠をじっくり、深く仕掛けるんだ。


 ……でもその明らかに錬金術を使った変装までする必要性を感じないんですがあっ!


 今回炊き出しに参加してる獣人娘たちは目が死んでるし、アンセルは終始あの嘘臭い笑みを張り付け損ねて頬がピクピクしてるし、カナイに至っては三メートル以内に近付こうとしないからね?


「これも作戦の為ですわ。皆さんそんなに引いていては作戦の遂行が困難になります」

「やめろ、変態に正論を言う権利はねえっ!」


 思わず公爵様に突っ込んだよ。突っ込むよな、誰でも。だが、それよりも炊き出しだ。今回はいきなり奇跡のスープは出さない事になっている。あくまで貴族の令嬢が思い付きで炊き出しを始めたていだ。


 作る物も美味しいけど誰でも作れそうな料理で行く。この料理の内容もムドヨ公と研究した。料理に詳しいムドヨ公。私たちの目が全員チベットスナギツネのような遠い遠い目になっていても仕方は無い。どこで学んだんだよ。


 炊き出しは保存用ではない塩味の少ないベーコンと玉ねぎ、ジャガイモを塩胡椒で炒めたものにした。これなら誰でも作れるけれど食材のバランスや味の取り方で美味さが変わる。塩度を見極める為に何度か味見する。ん、ご馳走だ。

 ベーコンは元々保存食で塩気が強いんだけど、現代で食べられてるようなベーコンは塩気を減らし薫製香を味わう食材になってるんだよな。今回使うのはそれだ。

 ベーコンの薫製の香りが、ジャガイモの旨味が、玉ねぎの甘味が炸裂する!


 餌は撒いたし後は狙った魚を待つだけだな。当然このレシピ、ベーコンの持つ薫製の香りとジャガイモの焼けた香りのコンボで広範囲に寄せ餌の効果をもたらす。フフン、釣りなら私に任せろー。


「来ましたわ」


 ヨドミちゃんの発言に全員気が引き、しまらない。いや、警戒しろ、気持ち分かるけど。

 やんちゃそうな兄ちゃんたちが行列に並ぶ人たちを蹴散らしつつやって来る。ここで殺したいが、ゴキブリを一網打尽にするために耐える。

 ヨドミちゃんのせいで殺伐とした気持ちになってるな、私も。だが奇跡のスープをここで披露するためにはこう言う不穏分子を蹴散らす必要が有るんだ。


 王都まで暴れ竜が出たと言うのは異常事態だ。こいつらが何か絡んでいる可能性が有る以上、今までは必要悪とされていた義賊のような存在も駆逐しなくてはならない。どこがこの国の敵かを明らかにしなければ、落ち着いて美味い飯を振る舞えないからな。

 これまで放置された闇ギルドをここで攻めるのは明らかにあの竜の襲撃が理由だ。悪魔公爵たちはそこまで考えているんだろう。

 この件の黒幕への足掛かりを見つけるんだ。


「あんたらぁ、誰の許可を得てここで炊き出しなんかしてるンだ?」


 いやー、釣れるね~。魚でもこんな簡単に釣れないぞ。


「あなたは誰の許可を得て文句つけてるんです?」


 私が逆にチンピラに食ってかかる。そりゃそうだよな。ここで文句つけられる、その許可を与えられる人がバックにいるのかって話だ。……どうも小物っぽいな。

 チンピラは強気で返されると……冷静には考えられない。ここで根本まで釣り上がれば本当は良いんだけどね。


「ムドヨ=チーダ公爵様に決まってるだろ!」


 ぶふうっ! その人ここにいるよ! 駄目だ、こいつら頭悪すぎる。これは間違いなく小物のチンピラだ。多分他の奴にそそのかされたな。あー、見込み無さそう。


「公爵様の名を騙れば死刑なのは分かっているのでしょうね?」

「へっ、えっ?」

「あなたは誰に唆されたのですか? この炊き出しはシンク=イセイス公爵様、ムドヨ=チーダ公爵様の連名で行っているのですが」


 さて、これで引いてくれても私は有り難い。普通に炊き出ししても絡まれないからな。だけど公爵様方はそれでは満足しないよな。

 ちらりとヨドミちゃんの方を見る。ここからはヨドミちゃんの仕事だろ?


「まあまあ、誤解が解けたなら宜しいじゃないですか、皆さんも是非食べていって下さいな!」


 ここで終わらせないって事ね。もう何回か根本まで手繰り寄せる策を打つと。茶番じみたこのやり取りでも向こうは手を打てなくなっていくし、こちらの罠も深く差し込める訳だ。

 実際分からないようにではあるが、衛兵が少しずつ周りを取り囲み始めてる。

 チンピラさん、早く逃げてー。






 私の作品史上一二を争う濃い目キャラ、ヨドミちゃんが登場です!(白目)

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