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私に学園に行けと言うのか

 事態を終息させてから貴族さんたちはお怒りで、各部署に駆けていった。あのドラゴンはドラゴン便に使われるもので、誰かが意図的にここを襲わせたのは間違いないらしい。

 想定としては近隣のキルレオン帝国が最近軍備を強化しているので女王陛下の求心力が十分で無いうちにテロのように攻撃を仕掛けて、あわよくば陛下や有力貴族を亡き者にし、侵攻の足掛かりにしようと考えていたらしい。

 とは言っても証拠を得られなければ抗議も出来ないと言うことで貴族さんたちも大忙しらしい。

 全部コーゲ伯爵が教えてくれた。オッサンがデレてもな。まあ敵は少ないに越したことは無い。


 それで私は今、女王陛下の執務室に来ている。彼女は若いからかやる事が大胆だな。平民だぞ私は。

 後ろには重臣らしいオッサンが二人。淀んだ眼鏡の神経質そうな爺様とフサフサな毛並みの少しポッチャリな爺様だ。元ハゲなら私の味方かな?


「シェル、女王国に力を貸してください」

「もちろんですよ、戦争になったら一番にガキが泣くんだから。私に出来ることなら何でもしましょう」


 戦争しろって言われたら全力で逃げるけど、後方支援はむしろ私向きだよな。


「大々的にあなたを聖女として各国に発表します。それで敵の手は止まるはず」

「まあ聖女に敵対は不味いでしょうね」


 聖女って言われる人間は女神様が後ろ楯についてると言うのが一般的な認識だ。私は実際、星の女神様がスキルをくれたんだから聖女を名乗っても問題ない。ただ、多分死にそうになっても助けてはくれないだろうな。運命は人の物だから。


「次に同盟国で炊き出しをお願いしたいですね」

「やる事は変わらないから良いですよ。それで各国も宣伝になるし味方につけられますね。更に私の場合兵力回復にも繋がる」

「……思ったより政治に通じてらっしゃいますね」


 中身はオッサンだからな。七十年くらい生きてるし。暇だからこの世界じゃ軍記物をよく読んでたしな。前々世でも戦国物が好きだったし。


「そして王都で錬金術師養成学園に通っていただきます」

「将来のための一手ですか……学園ねえ……」

「駄目ですか? 良い手だと思うのですが」


 正直、今から学校に行けと言われてるようで、今更感はある。

 いや、女王様の目的は分かる。未熟なガキ共に現実を見せろって事だよな。だけどプラムが居ないと精々Bランクのアイテムしか作れない気がする。

 プラムの凄まじい調整スキルを目の当たりにしてるから、お陰で私の調整のスキルもめきめき上がってるし、私の魔力も成長期なのか良く上がってる。今普通にポーション作ったら高級なハイポーションには出来る。

 そこに更に、学園で基礎を学んだり術式を学んだり出来ればそれは私の力にもなるけれど……。


「分かりました、行きましょう。ただ平民だからっていじめられたりしませんかね?」

「……そうですね……普通は学園は身分差別は禁止事項となっていますけど、バカな子はいっぱい居ますからね」


 これもテンプレ様だしな、気にしておかないと。だいたいこの年頃のガキは陰険だからな。表だって何かするのはまだ良い方で裏で手駒を使って貶めて表ではお友だちとか、良く有るネタだよな。

 そう言うのは面倒臭い。


「錬金術師養成学園は錬金術だけを学んでいますので結果を出せるならほぼ問題は無いでしょうが、そうですね、形だけ爵位を持てるようにしますか」

「形だけで良いなら」

「ではイセイス公、お願いできますか」

「畏まりました」


 おっと、フサフサ爺様が出てきたな。どうやらこの人の名前を借りられるらしい。イセイスねえ。シェル=イセイス。なんか面白い名前だな。でもかっこいいか?


「ではシェルちゃん、これからは儂がお父様じゃからな!」

「はい?」

「お・と・う・さ・ま!」


 目上の人にはい? って返すのは失礼だけど思わずやっちゃったよ。……。


 この人変な人だったーっ!

 し、仕方無いよな、協力してもらうんだから。

 パパって言わされるよりマシか。パパは怖すぎる。


「お、お父様」

「はーい、シンクお父様ですよー!」


 こ、これで公爵……。この国女王陛下からして人間が柔らかいと言うかぶっとんでるな。前女王も三十代ですっぱり辞めてるし……。

 隣でため息を吐いてる眼鏡の爺様がほんのり哀れだな。なんか友達になれそう。


「あ、私の予定の方、良いですか?」

「どうぞ、シェル=イセイス公爵令嬢」


 女王陛下割とドSだな。とにかくこれから王都の掃除や各都市での炊き出し、あと、キンノ森林ダンジョンと名前がついたキンノ村の西でスタンピードが起こったら何を放り出しても帰還する事は告げた。ルーナ女王様もそれはむしろ推奨すると約束してくれた。

 これでウルルたちの村は守れる。だけど兵器は増やしていかないとな。


 術式保存ボードを作れたのが本当に大きいな。これで海産物取りに行ったりも自在だ。夢が広がるな!


「では儂からも良いですかな。シェルちゃんは聖女認定してその場で儂の養子になり、その後学園へと言うことで宜しいですかな?」

「そのような予定になりますね」

「じゃあその前に掃除と炊き出しは一回やらないと駄目ですね」

「そうだね、シェルちゃん。それでね、順番としては掃除を後回しに出来ないかな?」

「ふむ……えーと、それは炊き出しに難癖つけさせてから叩き潰そうって話ですか」


 私がそう推測するとシンクお父様はニヤリと笑った。けっこう民衆とか危ない目に合いそうだし、その状況は私にもキツいことが予想されるけど逆に言えば……。


「アサシンギルドだかシーフギルドだかの闇ギルドを一本釣りしようと?」

「流石は我が娘」

「なるほど、それならば我輩も協力致しましょう」


 おお、眼鏡爺様が喋った。しかもスッゴい悪い顔で笑う。


「愚かな闇ギルドを一本釣りにして壊滅、外敵も粉砕、正しく聖女様は我が国に女神様が差し向けた最高の一手ですな」

「チーダ公、其方も悪よのう!」

「あー、シェルちゃん、細かいことはこの二人の悪魔公爵に任せておくと良いよ。私もそうしてる」

「この二人には逆らわない方針で行きます」


 公爵二人は古狸と古狐だった。超怖い。






 乙女ゲー物はお好きでしょうか。シェルは詐欺師なので敵役になりそうですね。

 ここからヒーローが何人か出てきます。

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