クズ人間、また生まれ変わる
「クズだクズだと思ってたけど、更に間抜けだったのね」
若い時の妻にそっくりな顔立ちの美少女にまた会うことになって、第一声がそれである。
「だいたい何、山賊の残したアジトでスローライフって。馬鹿なの? 死ぬの? あ、死んだわね」
「ほんとスミマセン、馬鹿で」
土下座謝罪である。相手は元妻とは言え、この世界では女神様だ。しかしゴスロリのドレスに眼帯とか、その眼帯取ると右目と左目で色が違うとか……。
「お前、中二病まだ治らないのかよ」
「不治の病よ。放っておいて」
病って認めんのかよ。治せよ神様なんだから。
「さて、どうする? あの三人は大丈夫だけれど、蘇る?」
「へっ? 蘇る?」
「また最初から赤ちゃんプレイしたいの? 知ってるけど変態ね」
「そんな性癖無いわっ!」
全くこいつのこう言うところは神になっても変わらないらしい。とにかく人をおちょくるのが好きなのだ。弱味を見せたら玩具にされる。なんでこんな厄介な人物を神様にしたのか、こいつの上司の神様に抗議したい…………似たような性格の気がするからやめておこう。それより……。
「蘇れるのならそうして欲しいかな」
「まあ……、代わりに今よりしんどい事になるけど良いかしら?」
うーん、やっぱりただ生き返るなんて話は無かったか。そんな美味しい話、いくら女神の元旦那でも俺自身は一般人だしな。有るわけないか。
「条件は?」
「それは……となって……代わりに……そして……」
顔が真っ青になるのが分かる。死んでるのにな。しかし、そうか、それはキツいわ。子供は諦めるしか無いか……。
俺は女神様に条件を飲むことを伝えた。代わりに今度は一つだけ便利なスキルをくれるらしいし、上手くすれば今回よりずっと楽に生きられるみたいだ。とりあえず人見知りを治せと言われたが、俺が人嫌いなのはそうそう治らないだろうな。交渉ごとばかりやってたから人の腹が透けて見えて嫌になっちまうんだ。まあでも、せっかくのスキルだ、また人と向き合ってみるさ。
「今度は彼に斬られないようにね。突かれるか」
「突かれるってどう言う意味でだ……。いや、言わんでいいっ!」
とにかく話は終わったのか、女神は俺を突き放した。同時に意識が再び遠くなる。
◇
目が覚めると、草原のようだった。手足を見るとスラッとしていて、真っ白だ。お約束のように胸を揉み、股間に触れる。
「ほんとに……女になってやがる……」
ハローおっぱい、息子グッバイ。復活の条件は、女になることだった。クズ人間の俺はTSって奴をすることになってしまった。
この体は十六才のエルフらしい。魔力は高いがやはり普通には魔法を使えないらしく、救済のためにただ一つもらったスキルは……。
「えー、っと、頼む。町か村の場所を教えてくれ」
俺が話しかけたのは、その辺の草だ。草たちは一頻りざわめくと『あっち』と言って海が割れるように道を開いて見せた。とうとうチート主人公の冒険談が始まるのか? まあ期待しすぎたら痛い目を見そうだから気を付けよう。
俺のスキルは植物会話。植物と会話が成立する能力である。
さて、俺が生まれ変わったのは時は一年ほどしか変わらないと言う話だ。場所は元いた町と違うが、同じ国、サンテドール女王国である。この国は女王制の国なんだよな。まあ神様が女神様しかいないから仕方ない。女神様は確か今四人だったか。昔は二人だったが増えたらしい。俺を生き返らせたのはその三番目の神様、星の女神様だ。
あいつ中二病だからそう言うキラキラしたのが強そうとか思ったんじゃ無いだろうか?
とにかくこの近くの村はそのサンテドール内の村らしい。制度とか変わらないなら楽だな。税金も安いし戦争ももう何十年もしていないらしいし、いい国だ。
さて、村に行く前にいくつか仕入れておこう。この体の事も知っておかないとな。自分の体に触るなってのが無理だし、触る度に意識していたらおかしくなるだろうし。……ある程度覚悟は決めないとな。流石に男に戻りたいとか言ったら更なる天罰が有りそうだし。
……これがクズ人間の俺には良い罰になるのが分かっててやったんだろうな。子供が欲しかったら自分で産めと。……まあ、あいつも子供産むとき大変そうだったもんな。一回くらいは俺も産んどかないと駄目か……。ってなんで産む発想になってるんだ俺は。
髪は……赤か。つか長ぇな。腰くらいまで有りやがる。切ったら……駄目だろうな。また叱られるだろうし。記憶が残ってるだけでも有り難いよな。胸は、エルフの割にでかいな。まあCくらいだけど。前世日本の時の妻と愛人はどっちも小さかったからな……。ってまた叱られそうなこと考えてた。あかん。
つか腰回りも男と違いすぎて違和感が凄い。実際に変わってみないとこれは分からんだろ。骨盤が……これは安産型だったりするんだろうか? 男の時よりでかいかも知れないな。九十……は無いか? 分からん。
肌は真っ白だな。肌荒れに気を付けよう。
耳は尖ってるな。うん、エルフだ。顔は見れないが手触りだけだとつり目っぽい。性格悪そうな顔になってるんじゃなかろうか。
そして年は今年で十六才相当だそうだ。前は二十三で斬り捨てられたからな。今回はもっと長生きしろって事なんだろう。泣けてくるぜ。……女として長生きしろって事なんだろう。何人も産めと。……いかん、落ち込んできた。さっさとスキルの実験して村に行くか。
TS聖女シリーズは四本くらいネタが有るのでいつか書きたいものです。
ルビー・イーターと美味しいダンジョンとこれのローテーション更新がしばらく続く予定です。