森の聖女様、王都に行く
深夜テロ更新!
キンノ村の人々に王都に行くことを告げて、ガキ共にはまた泣かれたが毎日でも帰ってこれるようなアイテムを作ったと教えるととても喜んだ。テレポーターは収納しても対になる物しかまとめられなかったので、五つの片割れは家に置いていく。ナコイにもいつか一つ置いてこないとな。あの倉庫が良いかな?
一応私だけだが使用にはロックを掛けられるので侵入者が居ても困らないが、持っていかれないように地面に固定する道具も必要かも知れない。一応テレポート先の情報は分かるようにはなってるけど。
……これ本に書いてあったから誰か私以外にも作ってるよね。
それと、移動手段として錬金術師ギルドのマスター、イサクさんが乗ってたトロッコを改良して十人くらい乗れる大型の馬車みたいなのを作る事にした。これがまた作業量が多くて大変。
だが普通の板に浮遊術式を埋め込むとか、風量調整術式をあちこちに書き込むとか、コントロール術式を書くとか、基本的に術式書き込み用チョークが有れば出来るので……そもそもこの術式書き込み用チョークがチートアイテムで作るの難しいのだけど、簡単だった。
高度を高くし過ぎるとドラゴンとかに襲われかねないので馬車より少し高いくらいの低空飛行だ。全員乗り込んだがアイテムがほとんどボードだけなので楽勝だ。
「じゃあ行ってくるねラウネーズ!」
『まってるねー!』
『はやくかえってねー!』
『……』
『どうした、ヤクル』
『……あるらうねー!』
「おう、あるらうねー!」
わはは、ヤクルはいつも通り振る舞う事にしたらしい。可愛い奴だよね。いつでも草の指輪でこの四人は呼び出せるけど、しばらくは拠点も持てないだろうし帰っても来れないからな。
村の人々にも見送られながら北東へ。王都に向かう。ちなみに真北だと前世の町に戻るので北東方向に向かう。前の町は閉鎖的で良い思い出が無いからな。本当、キンノ村のみんなには救われたよ。
しばらく飛んでると足下で山賊に襲われている馬車を見つけた。早速役に立つな。ボードから眠り薬が入ったフラスコを十個呼び出し、上空からみんなで爆撃する。ちなみにカナイも来てくれている。……もちろんアンセルもな。
獣人娘たちは全員が眠ったのを確認後、口に浄化ポーションを含んでロープで降りて行く。空挺部隊だな。
商人らしい人に浄化ポーションを飲ませて起こし、仲間を教えてもらい起こしていく。山賊は縛ってその商人にあげた。
王都に商売に行くと言うその人は、ロッコ=チイグスと言うらしく、空飛ぶ馬車に目を丸くしながらも王都での協力を約束してくれた。王都の知り合いの大商人に紹介すると言ってくれた。まあ馬車で地道に移動してる商人さんなので私は話半分に聞いていたが。
有力な商人は竜に乗って飛んでいくからな。走竜も使われるけど。走竜は二足歩行の足がとても早い竜で、宝石商なんかの荷物の少ない商人には好んで使われる。
私たちほど凄い乗り物にはまず誰も乗れない。ただこれ、凄く魔力食うから蓄魔石を幾つかセットして予め魔力を込めてないとガス欠になるけどな。
私の魔力はエルフだから高いし、少しは成長しているんだけど、流石にこのトロッコは数時間も動かせないだろう。魔力充填はプラムやカナイにも手伝ってもらって数日かかった。王都までなら行ける計算だが、帰りはテレポートだな。
旅は色々と縁が出来るものだ。この先に魔物や山賊の類いが居るかも知れないので道々討伐しながら行くことにして高度を落とした。私たちもかなりチートになってきたのでドラゴンとか出てもギリギリなんとかなるかもね。
途中、川が氾濫して橋が流されたようで馬車がたくさん止まっていた。私たちはスルーしても良かったのだが、その辺りの木に頼んで橋を作ってもらう。石でね。流石に植物たちを橋にすると罪悪感有るわ。あと、商人さんが上にかける分の材木は出してくれた。……もう材木になってたら仕方無いよね。
作業は水に流されない重い木の皆さんのお陰で順調だったので、植物用ポーションから栄養剤までプレゼントしておいた。橋を渡れる人々にも植物たちにも凄く喜ばれたのでやって良かったな。
アンセルが調子に乗って私が聖女であると演説をぶちかましたので置いて飛んでいく事にしたがスキルで追い付かれた。畜生、いちいち私を売り込もうとするの何でだ?
やはり政治に利用する気かも知れない。不信感マシマシだ。
「純粋に自慢したかっただけですけどね」
「お前の口調が丁寧な時は信用出来ないと分かった」
「シェル……。本当に俺は君のためには命をかけられるからね?」
「引いては国のためにな」
「そこはまだ譲れないかな」
「素直な事で」
「裏切ったら牛裂き」
「頭蓋骨で玉遊びにゃあ」
「肉料理」
「三人とも俺に厳しすぎない?!」
「んー、私はじゃあ足の指を凍らせて霜焼けに」
「ショボッ! カナイの罰ショボッ!」
「カナイさんは裏切れないな……」
「寒いの苦手かっ!」
そんな事を言いながらふわふわと、もうイベント無いと良いなあ。そう思いながら飛んでいく。
あ、夜営どうしよう? 交代で起きて飛び続ければ良いか。二人一組で見張りをしながら飛んでいく事にした。
いやあ、このトロッコ便利だわ。ただSランクのアイテムを作りまくったけど、何か問題起こったりしないかな?
……いつも通りフラグを立てる自分の頭が信じられない。王都で色々と炸裂しそうで怖いな。
やがてトロッコは王都に着いた。聖女様、王都に着きましたー! とか言いながらアンセルが門番の方に駆けていった。流石に乗ってきた物が物なのですぐに信じてはもらえたのだが、手続きには馬鹿みたいに時間がかかる事になった。
流石にこれで暴れるとかはしないけど、王都の人たちにしたら怖いよね。実際に夜襲したら王都は大打撃間違い無いし。いや、けっこう凶悪な爆弾モドキを大量に作ってストックしてるからね。
……必死に説明してるアンセルに何となく悪いなと思いつつ、自分は何もしないで眺めていた。ちなみにトロッコはもう魔力切って停めてある。
古典映画好きなんですよね。




