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クズ人間の俺が聖女と呼ばれている  作者: いかや☆きいろ
二章 聖女は奇跡を起こす
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 聖夜だなんだと騒ぎだした村人、酒もどんどん回し始めた。私も何度か酌された。

 疲れてしまったので少し離れたところで休憩する。炊き出しはシーナさんたちが継続だ。


 そこにやって来たのはアンセルだった。何の用だろう?


「シェルは自分の価値が分かっているのか?」

「計り知れない価値があるだろうな。ここまで出来れば流石に思うよ、チートだって」

「チート?」

「ずるって事さ。私の力じゃなく、女神様のくれた力だ」

「スキルの話なら、君だけじゃないだろう?」


 む、スキル持ちって私以外にもいるのか。そりゃそうだ。他の人のスキルってどんなのだろう?


「アンセルはスキルを持っているのか?」

「疾風迅雷と言うスキルを授かっている。込めた魔力により自分の動きを神速と呼べるほど高められるんだ。物凄く疲れるが」

「チートだな。それで王国騎士になれたのか。確か凄い厳しいテストが有るんだよな?」

「魔の森で、持ち物は武器とナイフと水筒と衣服だけで一ヶ月生活した」

「うへぇ。飯は魔物の肉か」

「魔物の肉が美味かったのは救いだな。あ、先輩と言うか、兄からは塩と胡椒は忘れるなって言われたな」

「ばはっ、ユサなら余裕そうだなそのテスト」


 ユサならむしろ嬉々としてやりそうだが、自分がしんどい思いをしたテストを余裕と言われたのが癪に障ったのかアンセルは少し悔しげな顔をした。こいつは目が青いな~。光ってるみたいだ。


「シェルには無限の価値がある」

「そりゃどーも」

「軽いな」

「まあな。あんまり女と二人きりとかならない方が良くないか? 貴族なら許嫁とかいないの?」

「伯爵家でも三男となるとな。三女なら違うんだが」

「政略か。どこかに男の跡継ぎがいない貴族とかいないのか?」

「稀にはいる。多くはない」

「まあ家の数しかいないだろうし、取り合いか。後から男が生まれる可能性もあるし」


 お貴族様も色々大変そうだ。パッタシとかセマカさんも男爵家三男以下なら辛そうだな。


「俺は、シェルが好きだよ」

「やめろ、くすぐったい。私はお前は怖い」

「何故、俺を怖れてる? 最初から化け物を見るような目だった」

「あ、はは、それはな、私がお前に斬り殺されたからだよ」

「?」


 まあ分かんないよな。実際斬った山賊が美少女になってたら引くわ。私はまだ女っぽくはないからひょっとしたら納得してしまうかも知れないが……。


「だいたい王国騎士として私を国のために利用しようとしてる奴に好きって言われても私を引っかけて逃がさないようにしようとしてるようにしか思えん。違うか?」

「国のために、そうだな、俺の価値観なら有り得る。俺じゃない人間にそこまで分析されるとは思わなかった」

「分析じゃなくて推測だな。一般的な王国騎士の感覚だろ? 自分は国のための剣である、ってな? 司令官のための道具、大切なのは騎士道と国」

「その通りだな」

「要するに、信用が置けない。お前は私が国に不利益な存在になったら容赦なく斬り捨てる。そう言う奴だ。だから、怖いんだよ」

「シェルは女王国が嫌い? ……そう言う話ではないか。シェルは、俺が信用出来ないんだな」

「無理だな」


 しっかりと現実的な距離感を突き付けてやる。なんだよ、好きって……。なんで私の顔は熱くなる。

 そこでゆっくり近付いてきたアンセルは私の顎に手を添える。私はアンセルの胸に手を当て、押し返す。


「それをしたら、お前はクズ人間だ」


 自分の為に利用する為に、私の気持ちを無視して力業で来るなら、そりゃまごうことなきクズ人間だろ。キスなんかされてたまるか。


「良いのかよ、聖女様に無理矢理って」

「そうだな。騎士としては失格だろう」

「人間としてもクズ人間だっての」


 アンセルは苦笑する。イケメンはこう言う顔も似合うな。爆ぜろ。もげろ。砕け散れ。


「シェルはしっかりしているんだな」

「クズ人間だ。色々取り繕って生きてるのさ」

「自己評価は低い」

「自己評価って言うけど結局最後は他人の評価でしか自分の価値は計れない」

「俺は怯えてアワアワするシェルも、奇跡のスープに成功して拳を握ったシェルも、炊き出しの内容に頭を悩ませているシェルも好きだよ」

「役に立つからな」

「違う。必要だからだ。それにあの拳を握ったシェルが俺に肘を当てて慌てて振り返った時の顔も可愛らしかった。燃えるような赤い髪も、色々な事を見通そうとするような赤い瞳も、好きだよ」

「口説くなっつーの……。どうせ自分の為に必要なんだから」

「自分の為に必要だ。だから、シェルを苦しめるつもりなんか無い」

「国よりも?」

「それはない」

「そりゃそうだ」


 一人の人間が地球より重くなったりはしない。地球にも代わりは無い。国も同じだろう。そこに住む人は明日移すなんて出来ないんだ。物理的な問題じゃなく、思いの問題で。だから国は大切。一人の人間の愛よりも。


「理屈臭い。いつか、国を捨てても私が良いと思えたら、その時はガキの二人や三人産んでやるよ」

「が、ガキ、産む?」

「動揺しちゃって可愛いな」

「か、からかうな」


 今のアンセルに、私は心を動かされない。ただ寂しいからって抱き締められると、きっと後悔する。さっさと、逃げる。つかいつも飄々としてるヤツが動揺すると……面白いな。


 必要、か。でも私はアンセル、まだ君を必要だと思えない。利用し合うのも依存し合うのも一つの関係ではあるし、貴族なら思いより、きっとその方が大事なんだろうな。……でも私は、もう、そう言う関係に疲れた。






 シェルが不器用すぎて恋愛が出来なさそうですね。長い目で見てやって下さい。

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